先日(9月27日)、この春から立ち上がったママたちと一緒に都庁を訪れて、東京都のこども・子育て施策推進担当部長と保育支援課長さんと懇談を行いました。ママたちもと保育士さんたちは14人。そして日本共産党、都議会民進党(旧民主)、民進党都議団(旧維新)、かがやけTokyo、生活者ネットワークの5会派から都議さんたちが参加してくださいました!
陳情や要望を都議会の各会派にお願いするときはそれぞれの控室を回っていくのが通例なのですが、今回は都議会初!(かな?)、5会派の都議さんが集まって親や保育士さんの声を聴いてくださいました!
要望書の柱は以下の4つです。
*安心、安全で、こどもの健やかな成長を保障する認可保育園をたくさんつくってください
*保育士さんの待遇改善を行なってください(すべての保育士さんの待遇改善につながるよう、賃金アップのための支援を要望)
*基準の切り下げによる待機児童対策は行わないでください
*保育事故をふせぐため、保育園にたいして抜き打ち調査を行い、その結果を公表してください
<ママたちの声>
ママたちからは切実な声が次々と。大田区でコミュニティサイトをつくって1,000人とのつながりがあるというママさんは、200人から集めた保活と現状の課題についてのアンケート調査を報告。半数近くの人が妊娠中か産後直後に保活を始めていて「身体的負担が大きかった」という声や、預け先が見つからず退職をせざるを得ない方がいる実態についてお話されました。
江東区で今年の春に区に対して異議申し立てを行なったママは、認可保育園の入れる最大のチャンスが0歳の4月になっているために、せっかくとれる育児休暇も切り上げて復帰しなくてはならない実態や、認可保育園と認可外施設の差が大きく、同じ働く者同士でも受けられるサービスに差があることに不公平感があることなどお話されました。
足立区から参加したママは、「いま認証保育所でよい保育をしてもらっているが、1歳半にもなるとやっぱり狭い。認可保育園をちゃんとつくってほしい」と。父母会で行なったアンケートでは、何十軒も回らなくてはいけない保活のストレスや、決まらなかったら退職しなければならないという不安を抱えている親の声が寄せられたと、紹介されました。
<元保育士さんの声>
また保育士の仕事がきつくてやめざるを得なかったという元保育士さんからは、ブラックな労働環境についてのお話・・・。監査の前に出勤記録を改ざんする園の実態や、過労で亡くなった同僚の方のお話がありました。基準の切り下げ、詰め込みされた園ではこどもの情緒が不安定になり、かみつきや積み木などのおもちゃが飛んでくるような状況になること、また園庭がない保育園で近所の公園を使う場合はこどもたちに「静かに遊びましょう」と言わなくてはいけない状況など・・・。「でもこういう話は、私が保育士を辞めたからできるんです。現役だったら園長や同僚の目が気になって、声を上げることなんてできません」という言葉が印象的でした。
<保育園でお子さんを亡くしたママの声>
中央区の事業所内保育所でお子さんを亡くされたママさんのお話は本当に胸に詰まりました。午睡中に泣いていたお子さんは別室でひとりうつぶせ寝にされて、窒息によりなくなってしまったこと、
6年間に一度も監査がなく、親でもしない「うつぶせ寝」が常態化しているような園が野放しにされていることなどについて、「せめてこどもが死なない保育にしてほしい」と涙ながらの訴えがありました。
朝に預けた元気なこどもがまさか数時間後に動かなくなって帰ってくることなど、だれも想像はしないと思います。だけど、いまはこどもが保育園で亡くなってしまうことがあり得てしまう現実。最低限の環境さえ守れていない保育が存在していることをあらためて痛感しました。
<元保育士さんの声>
体調を崩して早めに公立園の保育士から退職したという方が、なぜうつぶせ寝が起こるか、重要なお話をされました。22名の5歳児を1人担任でみることもあったという元保育士さん、業務日誌や事務的作業は時間内にできない状態だったといいます。そんな中で、お昼寝の時間は唯一、事務作業ができるゴールデンタイム。このときに赤ちゃんに泣かれると困るんです、と。でもあかちゃんが眠れなくて泣いてしまうのは当たり前のこと。そういうときは保育士が赤ちゃんに向き合って抱っこして時間をかけて眠らせてあげるのが当たり前。だけど十分な保育士の配置がないような園では赤ちゃんに向き合うことができず、泣けなくするためにうつぶせ寝にしてしまうんです、と。
参加者からは、だからこそ基準の切り下げはしないでほしいという声、そして、悪質な園を野放しにしないように抜き打ちの検査をしてほしいという要望が強く語られました。
<東京都>
課長さん方は「都としては保育の質を無視しているわけではない」ということをお話されましたが、小池知事が保育の基準緩和を国家戦略会議で求めたことに対しては「実際に基準を緩めるかを判断するのは自治体」と、自治体に責任を投げるような発言がありました。しかし、東京都がタガを外せば、安易な対策に流れる自治体が出てくることが予想されます。東京都こそが、自治体が基準を守るための砦になってほしいのに、とても残念な発言でした。それでも「安全は担保されるように考えています」という言葉に、「いまでも死亡事故があるのに、さらに基準緩和をして、なぜ安全だと言えるんですか?この状況の中で基準緩和なんてありえないではないですか」と、命を守る母親の強い訴え。「どの子もみんなかけがえのない命で、そのわが子を思う親がいるんです。2、3件の死亡事故ならおきても仕方ない、とかではなく、1件だって、こどもが死ぬことがあってはいけないんです」というママの言葉は胸に突き刺さりました。今年に入ってからも公表されているだけで、中央区、大田区、板橋区、大阪市、川口市の保育園で赤ちゃんの死亡事故が起きている状況は重大です・・・。
<議員さん方>
今回の懇談では5会派の都議さんが同席してくださったことが本当に画期的でした。保育園に入れずに苦しむ親の実態やお子さんを亡くしたとてもつらい状況について、目の前で聞いてくださった都議さんからは、基準緩和をしてはいけない、抜き打ち検査も実現していかなくてはいけないなど、親や元保育士さんと思いをともにして、力を合わせてくれる前向きな話し合いになり、とても有意義な時間になりました。
<予算の問題!!>
議員さん方からも資料の提供がありましたが、とくに日本共産党が9月8日に都知事宛てに提出した待機児童解消と保育の提言は、これまでの保育行政の歴史、なぜいま待機児童の問題が深刻化しているのかがわかる内容になっています。
そして、最終的によくわかるのが保育に対する予算についての国際比較です。保育所等への支出の対GDP比の国際比較では、フランスが1.24%、OECDの平均が0.71%であるのに対し、日本はわずか0.45%。国会でも紹介されている数字ですが、日本で待機児童があふれ、保育園で赤ちゃんが亡くなることもあるくらい劣悪な状況になっている背景には、この少なすぎる予算配分の問題があります。これを国際水準に引き上げるだけで保育の量と質を充実させた待機児童対策は可能になります。「贅沢」ということではけっしてなく、各国は実現していることで、こどもの環境を安心安全なものにしていかなくてはいけないのは当たり前のことです。
日本や東京都が子育てにやさしい国、都へと変わるためには予算配分を抜本的に見直す必要がある。そのために、私自身も力を尽くしていきたいとあらためて思いを強くしました。