東京都は23区内の工場排水などについて、すでに有害物質の測定をおこなっています(多摩地域は各市町村で測定)。PFASについても測定をおこない、対策にふみだすよう迫りました。(2023年3月15日、公営企業委員会)
〇斉藤委員 次に、有機フッ素化合物、PFASについて伺います。
有機フッ素化合物、PFASについて、国際的に規制が強まる中、日本でも特に米軍基地がある沖縄や神奈川、そして、東京都でも、多摩地域を中心に高い濃度が井戸水から検出されて、健康被害への不安が広がっています。
このことで、水道局では、多摩地域の十一の浄水場、そして配水所で、三十四の井戸を停止しているということは、皆さんも報道等でご存じのとおりかと思います。
今回、下水道局は、工場や事業者からの排水を検査しているという立場として、水質の保全や、環境や人体への影響の低減、汚染の発生を食い止める、こういうことに貢献できるのではないかという視点から質問をいたします。
下水道局では、下水道法に基づいて、都内二十三区の工場や事業者から下水道施設へ排出される排水について有害物質の測定を行っています。
多摩地域とともに23区でも、PFAS汚染があると認識しているか
〇斉藤委員 PFASの問題では、特に、多摩地域で水道局が管理している井戸から高濃度の値が検出されているということと、それから、区部では、井戸を水源として使わず、川の水を主な水源としているということから、多摩地域の問題に焦点が当たっていますけれども、区部では汚染がないのかどうかと思って、環境局が行っている地下水におけるPFOS及びPFOAの調査の結果について確認をしてみました。
二〇二〇年に環境局が行った調査では、区部の八か所の測定ポイントのうち、五つのポイントで、現在の国の暫定基準の一リットル当たり五十ナノグラムを超えている箇所があることが分かります。その中でも、渋谷区のポイントでは百五十ナノグラム、練馬区のポイントで百二十ナノグラムと、多摩地域の測定箇所よりも高い値が地下水から出ているという状況もあります。
下水道局は、区部でのこうした状況について環境局との情報共有は行われているのか伺います。
◯袰岩施設管理部長 PFOS及びPFOAを含む地下水の測定結果につきましては、環境局から情報提供されております。
◯斉藤委員 区部の地下水でも検出されているということは、近くに汚染源がある可能性もあるということだというふうに思います。今後は、環境局、関係各局とも連携を行って、こうした状況の把握に今後も努めていただくことを求めます。
対策すべき有害物質として認識しているか
〇斉藤委員 皆さんご存じのことと思いますけれども、このPFASとは、PFOS、PFOAを含む四千七百種類以上の人工的に合成された有機フッ素化合物の総称ですけれども、水や油をはじき、熱に強いという特性から、泡消火剤や撥水加工品に使われてきました。しかし、自然界では、ほぼ分解されず、人体や環境中に長く残る蓄積性と、発がん性や胎児の低体重など人体への影響が指摘され、PFOS、PFOAは、二〇一九年、ストックホルム条約で製造、使用が禁止されました。欧米では規制の強化が進んでいます。
一方で、日本での動きは遅いというふうにいわなければなりませんが、ようやく環境省は、PFOSとPFOAの水質環境基準体系における要検査項目から、二〇二〇年五月に要監視項目に位置づけを引き上げて、暫定指針値をPFOSとPFOAの合算で一リットル当たり五十ナノグラムということを示しました。
こうした動きについて、下水道局の認識について伺います。
◯袰岩施設管理部長 国が本年一月に設置した専門家会議では、PFASに対する総合的な戦略を検討するとしております。
下水道局といたしましては、こうした国の動向などを引き続き注視してまいります。
◯斉藤委員 ご答弁のとおり、国は、今年一月に、PFASに対する総合戦略検討専門家会議とPFOS・PFOAに係る水質の目標値等の専門家会議、この二つの専門家会議を立ち上げて、今後、水質の基準値の検討などを進めることとしています。
環境省は、水質汚濁防止法によって測定する有害物質を定めていますが、ここにPFASを加えるということも、基準が決まればここに加えられるというようなことになってくると思います。この点は、工場や事業者からの排水の調査を行っている下水道局としても、重要な課題になってくると思います。
下水道局では、国交省の管轄の下、下水道法に基づいて、その基準で検査をしているわけですが、その基準の基になるのが、環境省の水質汚濁防止法と。これが横引きにされて、下水道法でもそれが定められるということですから、重要な課題になってくるというふうに思います。
実際に、米軍の横須賀基地の排水処理施設からPFASが流出した問題では、米軍は、昨年十一月と十二月に、排水のサンプリング調査を行ったと報じられていますが、その結果、有機フッ素化合物、このPFOSとPFOAの合算で、フィルター通過前は最大で三百三十五ナノグラム、暫定目標値を大きく上回ったことが明らかになっています。
下水道局としても、今後はPFASの実態について把握していく必要があるというふうに考えます。
排水に有害物質が含まれる場合、どう対応するか
〇斉藤委員 そこで、基本的なことですけれども、下水道局は、工場や事業所の排水に含まれる有害物質が環境に与える影響についてどのように認識しているか伺います。
◯福島施設管理担当部長 公共用水域の水質保全及び下水道施設を保護するために、国が有害物質について下水排除基準を定めております。
下水道局としては、この基準を遵守するよう、工場や事業場に立入検査を行うなどの指導を行っております。
◯斉藤委員 公共用水域の水質を守り、下水道施設を有害物質から保護するためにも、工場や事業場に立入調査を実施しているということです。
下水道法に基づく都内の二十三区内の工場や事業場の排水についての調査ですけれども、調査対象の事業場の総数と年間どのくらいの事業場の検査を行っているのか伺います。
◯福島施設管理担当部長 令和三年度末時点で、当局に事業場排水に関する届出がある事業場は、二十三区内で六千百五十九件です。
立入検査は延べ二千七百二件実施しております。
◯斉藤委員 二〇二一年度は、総数六千百五十九件の中、二千七百二件の検査を行っているということです。
排水からのPFAS測定は、技術的には可能ではないのか
〇斉藤委員 現在は、PFASは、下水道法に基づく排水における水質検査の対象項目にはなっていないという状況ですけれども、物理的、技術的には、これらを測定するということは可能なのかどうか伺います。
◯福島施設管理担当部長 事業場排水中のPFASについては、下水道関係法令で規制基準が定められておらず、測定方法についても示されていないため、測定することは適切ではございません。
◯斉藤委員 規制基準が定められておらず、測定方法も示されていないということで、測定することは適切ではないというご答弁でした。物理的に測定できるかどうかということの質問だったんですけど、それに対するお答えはないと。要するに、技術的に測定できるかどうかということ、できるということを否定されないご答弁だというふうに思います。
民間では、実際に排水中のPFASを測定、分析することができるという企業もあります。アメリカでも、米軍はもとより、国内でも、排水中の測定を、当然ですけれども、行っています。
また、水道局では、国が基準値を定める前、二〇〇四年から水源となる井戸水についての測定を行ってきています。自前の井戸水を測定することと、工場や事業場の排水を測定するということで、ハードルの違いはあるかもしれないんですけれども、ぜひ、下水道局としても知見を集めて、環境局とも連携しながら、早期に測定ができるように準備を進めていただきたいというふうに思います。
そして、多摩地域の工場や事業場の排水の調査を行っているのは、公共下水道を所管している各自治体だというふうに伺っています。
今後は、市町村との連携も強めて、オール東京でPFASについての排水のチェック体制を整えていくということが必要だと思いますが、見解を伺います。
◯佐々木技術部長 国が本年一月に設置した専門家会議では、PFASに対する総合的な戦略を検討するとしております。
引き続き、市町村と共に国の動向などを注視してまいります。
◯斉藤委員 市町村と共に国の動向を注視していくというご答弁でした。
ぜひ、この問題について、市町村と積極的に連携を行って、PFASへの対応を進めていただくことを求めて、質問を終わります。