不正やパワハラ横行の保育園をただし、安心・安全の保育を

都内各地で、保育所配置の虚偽報告で補助金を不正受給したり、パワハラで保育士が大量退職したり、と保育をめぐるトラブルが相次いでいます。子どもたちの保育が脅かされる事態をくり返さないために、東京都が検査体制をつよめることなどを訴えました。(2022年10月19日、各会計年度決算特別委員会)

目次

株式会社・グローバルキッズが運営する保育所で、不正が明らかに

〇斉藤委員 次に、グローバルキッズの問題です。

 多くの認可保育所や認証保育所を運営する株式会社グローバルキッズの不正が明らかになり、幅広く報道されました。まずはこの不正の概要について確認をしたいと思います。

保育士配置の虚偽報告で、実際は最低基準を下回っていた

〇斉藤委員 昨年度の二〇二一年一月に都が豊島区と一緒に行った特別指導検査の結果から、保育大手のグローバルキッズが多数の園で保育士を実際より多く報告し、施設運営費を不正に受給していたことが分かりました。この件の概要について伺います。

◯坂本指導監査部長 昨年度、豊島区から、区内の認可保育所での保育士の在籍状況に疑義がある等の情報提供がございまして、本年一月から、当該保育所を運営する事業者の都内認可保育所等百四か所を対象といたしまして特別指導検査等を実施したところでございます。

 その結果、千代田区、新宿区、江東区、目黒区、大田区、豊島区、世田谷区及び中野区の八区にございます認可保育所十一か所、認証保育所五か所、計十六か所が、区に対して施設での勤務実態のない保育士を在籍していたかのように虚偽の報告を行っていた事実を私ども確認したため、都は事業者に対しまして速やかに是正するよう指導したところでございます。

◯斉藤委員 勤務実態のない保育士を在籍していたかのように虚偽の報告を行っていたということで、これ自体が大きな問題です。

 同時に、これは報告よりも保育士が少なかったということですから、それで職員の配置基準を下回っていたのかが問題になります。認可保育園の最低基準は、保育の質を守るための文字どおり最低限の基準です。この基準に違反することは、保育の質に深刻な影響を与えることになります。ましてや認証保育所の基準を下回るということはあってはなりません。

 グローバルキッズが運営する園のうち、保育士の配置基準を満たしていなかった園は幾つあったのか、名簿の不正を行った全ての園で基準を満たしていなかったのか伺います。

◯坂本指導監査部長 保育士の配置基準でございますが、各区市町村におきまして増配置等の措置を実施しておりますので、今回の職員配置偽装に係ります特別指導検査等の結果を受けまして、該当する保育園におきます配置基準を満たしているかどうかの確認につきましては、都の検査結果に基づき、各区市町村において実施しているところでございます。

 現在のところ、八区から、給付費等の職員配置基準を満たさず、所要の返還等の対応を行っているとの報告を受けているところでございます。

◯斉藤委員 区市町村が確認をしていると。八区から、給付費等の職員配置基準を満たしていないということなんですけれども、これ、国の最低基準のことなのか、それとも加算している基準のことなのかということは、ちょっと答弁でははっきりしていないんですけれども、私たちが聞いているだけでも、少なくとも世田谷区と中野区で、認証保育所の基準さえも下回っていたという施設がありました。本当に深刻な問題だといわざるを得ません。

東京都のこれまでの検査で、なぜ不正を見抜けなかったのか

〇斉藤委員 こうした不正を行わせないための仕組みの一つとして指導検査がありますが、グローバルキッズが多数の施設で組織的に不正を行ってきたことは、これまで指摘されてきませんでした。

 特別指導検査に入るきっかけとなったのが、豊島区が二〇二一年七月に行った一般指導検査だったというふうに聞いています。勤務実態のない保育士の名前が名簿にあったということから都に連絡をしたと、豊島区の担当の方からも伺いました。

 以前の都の検査ではなぜ見つからなかったのか伺います。

◯坂本指導監査部長 通常、都が実施しております一般指導検査でございますが、指導検査基準に基づきまして、検査時点におけます設備運営基準等の遵守状況を確認しているところでございます。

 また、今回、区市町村では、子ども・子育て支援法に基づきまして検査を実施しておりますが、毎月の給付費の請求内容などにつきまして検査しておりまして、こちらの方は、過去に遡って月ごとに職員配置状況などを確認しているところでございます。

 本事案につきましては、今お話ございましたが、豊島区からの当該保育所につきましての情報提供がございまして、職員配置を偽装し、給付費が請求されているという疑いがあるとの情報提供を私ども受けました。この結果、特別指導検査の内容の事項を絞り込みまして、都と区で合同で集中的に指導検査を行った結果、偽装の事実が判明したものでございます。

◯斉藤委員 今のご答弁ですと、東京都の一般検査においては、設備運営基準等の遵守状況だけ見ていると。区市町村では毎月の給付の請求内容、これが正しいものかということを検査している、だから分かったというようなことなんだと思うんですけど、東京都としてもこういうことをきちんと見抜けるようにしていく必要があると思うんです。何しろこのグローバルキッズも、今、都内百二十以上の保育施設、広く展開しているという状況で、東京都が広範にわたって一番その情報を持っている、そういう立場になるというふうに思います。

 今後、別の法人も含めて同じような不正が行われる可能性もあるわけです。その際に、指導検査で発見できるようにするためには、今回の事例についてよく振り返ることで、よりよい検査のやり方を考えることが重要だと思います。よく検証し、必要な対応を取ることを求めておきます。

検査が圧倒的に少ない現状を打開するため、体制の強化を

〇斉藤委員 そして、少なくとも明らかなことは、そもそも検査を行わないことには不正の指摘をしようがないということです。

 グローバルキッズが運営する園は、二〇一五年以降、全部で何園が都の指導検査の権限がある地域にあり、そのうち何園に都が指導検査に入ったのか、また、そのうち今回不正が明らかになったのは何園か伺います。

◯坂本指導監査部長 グローバルキッズでございますが、都内で運営する認可保育所及び認証保育所のうち、都の指導検査等対象施設でございますが、平成二十七年度四十六か所でございましたが、令和三年度には百四か所となっております。

 また、都の指導検査につきましては、今回の特別指導検査等を除きまして、平成二十七年度から令和三年度にかけまして、実数といたしましては三十五か所、延べ実施数としては三十六か所の保育所等に対し検査を実施したところでございます。このうち、今回の特別指導検査等での偽装の事実が明らかになったのは八か所となっております。

◯斉藤委員 つまり、今回の特別検査を除くと、不正が発覚した十六か所の施設のうちの半数の八か所は、二〇一五年度から昨年度まで指導検査に行っていなかったということになります。

 また、同じ時期に指導検査に入っていたのは、今回の特別検査を除くと、グローバルキッズ全体で実数三十五か所、延べ三十六か所で検査に入っていた場合も、この大半は七年に一回というふうなことだということです。これは明らかに改善すべき点だと思います。

 児童福祉法施行令は、検査は一年に一回以上行わなければならないと定めています。また、認証保育所やそれ以外の認可外保育施設については、それぞれの要綱で、原則として毎年度一回以上立入調査をするというふうにされています。

 コロナの前の二〇一九年度、全国の保育所の実地監査実施率は約六割、これも低過ぎるんですけれども、東京ではたったの約八%です。

 東京都の指導検査の実施率が新型コロナの感染拡大の前でも、認可保育園で一割、認証、認可外保育施設で二割程度と、児童福祉法施行令や都の要綱に違反し、全国的に見ても圧倒的に少ない状況について、どう認識しているのか伺います。

◯坂本指導監査部長 都はこれまで、認可保育所、認証保育所につきましては、新規開設施設や課題のある施設等を中心に指導検査を実施してきておりまして、区市町村も子ども・子育て支援法等に基づきまして指導検査を実施しているところでございます。

 また、認可外保育施設につきましては、都において巡回指導チームを設置いたしまして、毎年巡回指導を行っており、保護者等の関係者からの通報や巡回指導により、職員配置や保育の内容などに重大な課題が認められた施設に対しては、速やかに立入調査を実施しております。

 引き続き、区市町村や巡回指導チームとの連携などによりまして、都内保育施設の運営状況等の実態把握に努めますとともに、デジタル技術も活用いたしまして、効率的、効果的な指導検査の実施に努めてまいります。

◯斉藤委員 効果的、効率的に実施といっても、その結果が先ほどお話ししたような実施率です。東京都は区市町村とは別に権限を持っているのですから、都自身で年間一回実施できるようにするべきです。

 そして、それを行おうとしたら職員数を増やす必要があるのは明らかです。本日の資料にもありますけれども、監査の実施のための人員体制は毎年二十人前後で推移しています。抜本的な人員の体制強化が必要だと思いますが、いかがですか。

◯坂本指導監査部長 緊急対応が必要な事案等が発生した場合につきましては、指導監査部内の応援体制を組むなど、事業の実施体制の確保に努めておりまして、今年度につきましては一名の増員を図ったところでございます。

 引き続き、区市町村や巡回指導チームとの連携などによりまして、都内保育施設の運営状況等の実態把握に努め、効率的、効果的な指導検査を実施してまいります。

◯斉藤委員 人員体制の強化については、私も前期の二〇一八年の十二月の一般質問でも取り上げましたけれども、年一回の指導検査を行うためには、今の五倍以上の人員の確保が必要です。昨年度は一名増えたということですけれども、圧倒的に低い実施率から見れば不十分なのは明らかです。よりペースを上げて抜本的な人員増を進めることを求めます。

不正をくり返させないために、事業者には厳しい対応を

〇斉藤委員 さらに、今回のグローバルキッズの件の調査についてですが、このグローバルキッズの発表文書によると、調査は東京都からの依頼に基づいて自分たちで行っているということです。これでは全て正直に報告しているのかどうか疑問が生じますが、いかがですか。

◯坂本指導監査部長 今回不正を行いました事業者に対しましては、同社の責任者を都庁に呼びまして、検査結果とその事実に基づきまして厳しく是正を指導いたしますとともに、検査対象となりました関係区市町村にも検査結果につきまして情報提供いたしまして、同社に対し、給付費等の精査や返還など適切な対応を行うよう依頼したところでございます。

 引き続き、関係区市町村と連携し、対応してまいります。

◯斉藤委員 いろいろお話しいただきましたけれども、疑問が生じるということ自体は否定されませんでした。少なくとも関連する資料を都の職員自身が直接見るということは必要だと思います。

 また、この間、一つの法人で多数の園を運営しているというケースが増えています。そのような法人への対応の仕方は、さらに研究をしていく必要があると思います。

 そして、グローバルキッズの運営する施設は、先ほどの答弁にもあったように、都の指導対象だけで、昨年度、約百か所以上に上っています。今回は本社に調査に行ったわけですが、もし一つ一つの園に調査に行く必要があったとしたら、今の職員数では非常に困難だと思います。繰り返しになりますけれども、職員の増員を強く求めておきます。

 次に、この補助金の返還についてですけれども、世田谷区が公表している文書によると、キャリアアップ補助金の返金に当たっては、都の対応方針に基づき、違約加算金は課されないものとされているとありますが、この対応方針はどのようなもので、どのような考えに基づくものなのか教えてください。

◯奈良部少子社会対策部長 保育士等キャリアアップ補助金につきましては、交付対象に勤務実態のない職員が含まれていた場合は、当該部分について交付額の返還を求めることとしております。

 また、交付対象であることを証明する証拠書類を相当な理由なく提示できない場合には、違約加算金を徴収することとしております。

 本事例につきましては、違約加算金を徴収すべきであったところ、交付額の返還のみでよいと説明していたため、現在、世田谷区に追加の対応を依頼しているところでございます。

◯斉藤委員 今回のグローバルキッズの件は、事務上のミスなどではなくて、分かっていてやっていたということで非常に悪質であり、まさに違約加算金を徴収すべきケースだというふうに思います。世田谷区に追加で依頼しているということですので、しっかり対応していくよう求めておきます。

 指導検査の在り方についてですが、現在、国で懸念すべき規制緩和の動きがあります。検査を実地で行わなくてもよいとするものですけれども、今、現状でも保育園での不正や事故も後を絶たない中で、実地の検査の強化こそ求められています。逆に緩めていくようなことは許されません。

 保育園の指導検査について、実地検査を行わなくても、書面のみでもよいとする規制緩和を行わないように国に求めるべきですが、いかがですか。

◯坂本指導監査部長 保育所の保育内容や建物設備の安全等の把握には実地検査が重要でございまして、都は区市町村とも連携し、指導検査の際、実際に施設に赴きまして、運営管理や保育内容、会計経理につきまして検査を実施しております。

 引き続き、現在、国において検討しております動向などを注視してまいります。

◯斉藤委員 現地に行くからこそ分かる情報は様々にあります。今のご答弁で、実地検査が重要という認識は大事だというふうに思います。しかし、国に求めるというふうにならないということは残念です。国に規制緩和の中止を求めるとともに、都として体制の強化を進め、年一回の検査を行っていくよう改めて求めるものです。

パワハラ横行で休園に追い込まれた保育園に、なぜ検査に入らなかったのか

〇斉藤委員 最後に、足立区で昨年度末に休園となった認可保育園の件から伺います。

 こちらも、突然の休園で園児たちが突然転園を余儀なくされ、継続した保育が中断された重大な事案です。

 私の地元の足立区のある認可保育園では、昨年度に保育士の一斉退職により四月から突然の休園になっています。なぜ保育士が一斉に退職することになったのか、都はその理由について把握しているのか伺います。

◯奈良部少子社会対策部長 足立区議会の子ども・子育て支援対策調査特別委員会報告資料によりますと、職員ヒアリングにおいて、複数の職員が、業務の過多、園長との不和、主任の不在等を退職理由に挙げたとされております。

◯斉藤委員 足立区の区議会での報告資料からお答えいただきましたけれども、足立区は都に対応についての相談を昨年度からずっとやってきています。どんなことがあったのか区とも共有してきたと思います。私も直接、保護者や保育士に相談いただき、区にも都にも伝えていきました。

 ちょっと答弁が人ごとのような感じで、無責任だなといわざるを得ませんが、昨年の八月に十一人の保育士が年度末で退職するということを園長に伝え、そのままでは新年度から保育が継続できないということが明らかになりました。

 区は、昨年度に保育士たちになぜ一斉に辞めることになったのか聞き取り調査を行いましたが、その中で、今、保育士が減ったり主任が不在になっても、園長がまともに対応しないことや、職員に対するパワハラの言動が行われていたことが伝えられています。

 保育園側から、八月に区に対して保育士の一斉退職の意向があることが報告され、十月には保護者に対して、保育が継続できないこと、三歳、四歳、五歳児クラスは転園しなければならないことが突然伝えられました。

 それまで一緒に成長してきて、これからの保育園生活もみんなで行事など楽しみにしながら卒園するはずだった子供たちが、急にばらばらにされて新しい園に行かなくてはならないこと、また、転園手続に突然振り回されることになった保護者にとっても大きな負担と怒りになりました。

 突然にこの転園を余儀なくされ、せっかくお友達関係をつくって、一緒に成長しながら卒園するはずだった園児たちがばらばらにされて、保育の継続が断絶されるというようなことが起きたことについて、認可を行っている都としてどう認識しているのか伺います。

◯奈良部少子社会対策部長 在園児に不利益を生じさせないことが必要でございまして、都は区と連携し、保育サービスを利用できるよう対応しております。

◯斉藤委員 在園児に不利益を生じさせないことが必要だとはいいましたけれども、都は区と連携している、必要なサービスが利用できるように対応しているという、これはつまり転園先などの確保のことをいっているということなんですかね。転園できればそれでいいということでは全くないんです。

 小さな子供たちの成長の場である保育には、安定性と継続性が大切なことは基本ではありませんか。子供たちは、毎日一緒に過ごす保育士たちやお友達関係の中で愛着関係を結んで、共に成長し合っていきます。転園できて保育サービスが利用できていればいいというものではありません。突然、お友達とも保育士さんたちともお別れになって、知らない保育園に途中から行かされることになった園児たちの立場に立って、行政は保育のことを考えていかなければいけないと思います。

 一斉退職による突然の休園など繰り返してはいけないことです。現在休園しているこの園では、保育を再開する意向が経営者である園長から示されていますが、少なくとも、保育士の一斉退職に至ってしまった原因究明と再発防止策を法人が示すことができなければ、同じことが繰り返される可能性があり、このまま何もないままで再開することは許されないということを私は繰り返し求めてきました。都はどう対応するのですか。

◯奈良部少子社会対策部長 都は、当該保育所の休止承認申請を受けまして、休止を承認する条件として、保育所の再開に当たっては、休止に至った原因究明及び労働環境の改善等の再発防止策を講じることを示しております。

◯斉藤委員 再開しようとしている法人に対して、原因究明と労働環境の改善等の再発防止とを講じることを求めているということで、当然の対応だというふうに思います。

 また、都は実際に保育所設置認可等事務取扱要綱、これを今年の六月に改定しています。何らかの問題で一度休園となった保育園が再開するに当たっての定めがなかったことから、改めて要綱の中に再開という項目をつくり、ケースによって、原因究明や再発防止策を講じたことを書類で提出させるということにしたと伺いました。

 今回のような問題で休園した保育園がまた再開を目指すということは、これまでに前例がなかったということも伺いましたが、私は、私が保育士や保護者の方々から切実な声を直接伺ってきた中で、改善策もなしに、ただそのまま再開されるということは許されないということを何度も都にも伝えてきましたが、そういう中でそうした対応がされたということは重要だったと思います。必要な対策が取れないまま再開されるということがないよう、改めて強く求めておきます。

 ただ、ここまで至ってしまった中では、これまでの対応が不十分だったのではないかといわなければなりません。

 この保育園では、保育士が一斉に辞めるということは今回が初めてではなくて、七人、八人と一斉に辞めるという大量退職が二〇一七年以降に繰り返されていました。そのことを当時から区は把握しています。保護者や保育士から区に対して、園長の対応に問題があることがずっと伝えられてきました。職員に対するパワハラの言動のほか、給与などの処遇を一方的に切り下げることが伝えられたり、保護者からも、真夏にクーラーが壊れて、子供たちが一つのフロアに集められて保育を余儀なくされるなど、通常の保育に支障を来していても、まともに説明もないことなども伝えられていました。

 このような状況があれば、ほかにも運営上の問題がある可能性もあり、都として監査に入るべきでしたが、この間ずっと入らないままでした。

 さらに、昨年度には、区は一斉退職に至った理由について保育士に聞き取り調査を行っており、その中で、経営者である園長からのパワハラの言動や、妊娠中の保育士に対するハラスメント、いわゆるマタハラの言動が行われていたことも区に伝えられています。

 都も、足立区と連携を取ってきた下で、こうした訴えが寄せられていることを把握していたのであれば、指導検査に入るべきだったんではないですか。

◯坂本指導監査部長 特別指導検査の実施でございますが、区市町村などからの不適切な保育や先ほどの事例での不正請求など、情報提供に基づきまして、事案の緊急度、重大性、事実関係の蓋然性などを慎重に検討の上、実施しているところでございます。

 本事案につきましては、都は区からの情報提供により把握しておりまして、既に区において、当該保育所への指導等の対応をしていたことから、昨年度、特別検査を実施しておりませんが、引き続き区と連携して対応してまいります。

◯斉藤委員 要するに優先順位があって、事案の緊急度や重大性がこの件は低いと判断されたということだと思いますが、結果として保育の断絶、突然の休園という重大な結果を招いてしまいました。

 区がこの保育園に指導していたといっても、口頭によるもので、検査に基づく改善指導などの行政措置は一度も行われていないんです。大量退職が繰り返され、保育士や保護者からの訴えが続いていた園に対して、一度も検査に入らないのであれば、何のための権限を行政は持っているのかというふうに思います。

 この保育園に検査に入るためのタイミングや根拠は幾つもあったはずです。大量退職があった時点で、労働環境に問題のある可能性があるということで検査に入ることができたはずです。また、さらに二〇二〇年度にはパワハラ防止法の施行もあり、都は、保育所の指導検査基準にパワハラやセクハラの防止策を講じることなどを盛り込んでいます。こうした対策を園が行っているのか、実態がどうなっているのか、指導検査基準に照らして検査を行うことは可能だったはずです。当事者からの訴えがあり、問題が繰り返されていても、検査に入らないのであれば、本当に何のための行政なのかといわざるを得ません。

 さらに、先ほども述べたように、少なくとも通常の検査は、何もなくても年に一回は入らなければならないんです。先ほどは指導検査のための人員体制が不十分だということも指摘をしました。

 先ほどご答弁の中でも、課題のある施設を中心に指導検査を実施するとご答弁されているんですね。しかし、課題があって訴えがずっと続いているような園に対しても入ることができない、そういう弱い体制なんだということじゃないですかね。こうした事態になっている園にさえ入れない、そういう状況を改善していかなければいけないと思います。深刻に受け止めて、人員体制の強化を行うことを重ねて求めます。

ハラスメント防止のための措置を、保育園などで具体化を

〇斉藤委員 さらに、ハラスメントの防止のための指導検査の位置づけを高めていくことも必要だと思います。高齢者福祉や障害者福祉の事業については、事業者がパワハラ、セクハラ防止のための措置を講ずることが国の基準に盛り込まれ、都条例の基準に反映されています。

 保育園で、ハラスメントについて児童福祉法に基づく最低基準による指導検査が行えるように、保育園の最低基準にパワハラ、セクハラを定めることを国に求めることが必要だと考えますが、見解を伺います。

◯奈良部少子社会対策部長 労働施策総合推進法等におきまして、事業主には、パワーハラスメント等の防止のため必要な措置を講じることは義務づけられております。

 都はこれらを踏まえ、指導検査基準にパワーハラスメント等に関する項目を設定し、対応しているところでございます。

◯斉藤委員 都の指導検査基準に設定したということ自体は前進ですけれども、労働関係の法律が根拠のままでは、都として権限を持って対応するということには限界があります。児童福祉法に基づく最低基準として定めてこそ、この児童福祉法の権限に基づく強い対応ができるんではないでしょうか。

 実際、都の指導検査の基準を見ても、認可保育園やその他の多くの福祉施設で、福祉関係の法令や通達等に違反する場合は、原則としてより重い文書指導、福祉関係でない法令やその他の通達等に違反する場合は、より軽い口頭指導となります。高齢者福祉や障害者福祉の事業と同様に、児童福祉法に基づく最低基準にパワハラ等の防止のための措置を講ずることをきちんと定めるように国に求めるとともに、都として独自に条例で定めることも検討することを要望いたします。

 労働施策総合推進法などに基づき、指導検査基準を定めているからよいというのではなくて、都条例で基準として定めることの意義を正しく理解して行っていただきたいというふうに思います。

 これまで、現在起きている保育の質に関わる問題を取り上げながら、保育の質の維持向上に必要な条件整備、指導検査の現状について取り上げてきました。とりわけ子供たちの保育の安全性と豊かな保育を保障していくために、保育士の配置基準の引上げは待ったなしだということ、また、株式会社立などの民間保育施設が増えていく中で、東京都の保育施設に対する指導検査体制の強化が必須であるということを改めて求めて、質問を終わります。

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