家屋の耐震化への支援とともに、液状化リスクの高い地域への面的支援を

首都直下型地震での被害想定にもとづき、能登半島地震の教訓をふまえた対策をとるよう求めました。とくに足立区など液状化リスクの高い地域では、東京都が地域住民の合意をえながら面的な支援、地盤対策にふみだすよう提起。質疑のあと、東京都もその対策に踏み出しました。(2024年2月29日、都議会本会議)

目次

はじめに

◯斉藤まりこ都議 初めに、能登半島地震でお亡くなりになられた方々に哀悼の意を表するとともに、被災された方々に心からのお見舞いを申し上げます。

 家屋の倒壊などで家族や大切な人を失ってしまう被災地での現実を見ると、胸が張り裂けるような思いです。こうした事態を少しでもなくしていくことが、私たちの使命だと痛感しています。

 都が一昨年に発表した首都直下地震等による新たな被害想定の中で、私の地元足立区では、全壊棟数、死者数、負傷者数の被害が最多となりました。家屋の全壊棟数は、都心南部直下地震で最多の一万一千九百五十二件という想定です。能登半島での震災を受けて、地元の方々からは、首都直下型地震のときはどうなってしまうのか、不安の声が届いています。

木造密集地域などの住居への耐震化対策へ、東京都からも支援を

〇斉藤まりこ都議 足立区を含めた東部地域では木造密集地域が多くありますが、家屋の倒壊は、命に直結するだけでなく、通路を塞いだり、火災の延焼につながる甚大な影響を及ぼします。

 住宅の耐震化対策は、住宅の所有者の命を守るだけでなく、地域全体の安全性を高める上でも重要だと考えますが、知事の見解を伺います。

 地震に強いまちづくりのためには、耐震対策を自己責任とせず、行政の責任で進めていく視点が重要です。足立区では、都の新しい被害想定を受けて、今年度から、戸建ての耐震改修や解体の工事費の補助割合を二分の一から十分の九まで引き上げ、上限額も引き上げて対策を強化しています。

 木造密集地域など、区が定める特定地域では、対策工事の上限額が二百万円ですが、それでも、補修箇所が多くて、総額三百万円かかるようなケースでは、百万円の負担が生じます。耐震診断を行って、耐震性が不足していると診断された場合でも、工事に至らないケースがありますが、その理由について、区の担当者からは、高齢者の世帯で、経済的理由によって諦めるケースが多いとのことです。

 個人の負担を軽減し、自治体の取組を後押しするためにも、都からの支援を拡充するべきですが、いかがですか。

液状化のリスクが高い地域には、面的な支援を

〇斉藤まりこ都議 知事が施政方針で、建物の液状化対策を強化すると表明したことは重要です。都が示している液状化マップでは、足立区を含む東部地域や湾岸部、大田区などに液状化が起こるエリアが広がっています。液状化対策の重要性について、知事の認識を伺います。

 特に液状化の可能性が高い東部地域などに積極的に取組を促進していくことが重要と考えますが、見解を伺います。

 能登半島地震では、石川県、富山県、新潟県の三県で、液状化による建物の被害が一万件を超えています。富山県氷見市の市長は、市民との意見交換の場で、個人での液状化対策はできないと思うので、まち全体で対策するような大胆なことをやっていかなければならない、県や国に制度をつくってもらう要望をしていると述べています。

 葛飾区では、東日本大震災での液状化被害をきっかけに、戸建て住宅の液状化対策に補助を行っていますが、なかなか進まないとのことです。液状化対策は、個人任せや自己責任ではなく、まさに都の責任で面的に取り組む視点が重要です。区市町村と連携して、住民合意を得ながら、重点エリアを定めて、液状化対策を計画的に推進していくことが必要だと考えますが、いかがですか。

上下水道の耐震化を急ぎ、水道もトイレも使えない事態の防止を

〇斉藤まりこ都議 上下水道の耐震化の強化も待ったなしです。都の被害想定では、都心南部直下地震の場合に、足立区を含む東部地域と大田区で、断水率が四〇%を超え、下水道管の被害率も、東部地域や城南地域で最も大きい想定になっています。発災後に水がなく、トイレも使えない状況が長期間にわたれば、人口の多い東京都では、能登半島よりも深刻な事態になることは明らかです。

 水道局では、現在は断水率が五〇%を超える地域の耐震化に取り組み、下水道局では、避難所や災害拠点病院などの重要施設へつながる下水道管の耐震化を進めているところですが、上下水道とも、都の新しい想定に基づいて、断水率が四〇%以上の地域や下水道管の被害率の高い地域への取組を強化し、二〇二六年度からの次期経営計画にも位置づけていくことを求めますが、いかがですか。

答弁

家屋の耐震化、液状化対策について

◯都市整備局長(谷崎馨一君) 五点のご質問にお答えいたします。

 まず、住宅の耐震化についてでございます。

 能登半島地震では、戸建て住宅が多数倒壊するなどの被害が発生いたしました。東京を安全・安心な都市とし、都民の生命と財産を守るためには、住宅の耐震化を進めることが重要でございます。

 次に、耐震化に関わる支援の拡充についてでございます。

 今年度からは、旧耐震に加え、新耐震基準の木造住宅への耐震化助成を開始しており、令和六年度からは、耐震改修等の都費の補助限度額を原則五十万円から六十万円に引き上げることとしております。

 次に、液状化対策の重要性についてでございます。

 能登半島地震では、液状化により戸建て住宅が大きく傾くなどの被害が多数発生いたしました。被害を軽減し、都民の生活再建が早期に図られるよう、戸建て住宅の液状化対策を進めていくことが重要でございます。

 次に、液状化対策の取組についてでございます。

 首都直下地震等における被害想定では、都内の広範囲において液状化による被害が示されており、都内全域で対策を推進してまいります。

 最後に、液状化対策の推進についてでございます。

 令和六年度から、所有者等が行う液状化対策のための地盤調査や対策工事に助成を開始することとしており、地域の状況を把握している区市町村と連携し、取り組んでまいります。

水道管の耐震化対策について

◯水道局長(西山智之君) 水道管の耐震化についてでございますが、水道局ではこれまでも、施設整備計画及び経営計画において、取替え優先地域の解消を掲げており、今年度からはこれまでの区市町村単位から、よりきめ細かく取替え優先地域を設定し、耐震継ぎ手化を進めています。

 引き続き、断水率を効果的に軽減させてまいります。

下水道管の耐震化対策について

◯下水道局長(佐々木健君) 下水道管の耐震化についてでございますが、下水道局では、区部全域において、震災時に人が集まる重要な施設である避難所や災害拠点病院などを優先して下水道管の耐震化に取り組んでおります。

 引き続き、地元区と連携を図りながら、対象施設を拡大し、被害率の減少に取り組んでまいります。

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