東京都は、品川・田町地域の再開発事業のなかで、再開発ビルの建設をすすめています。もともとは泉岳寺駅のバリアフリー化から始まった事業ですが、途中で一変。都営住宅はまったく増やさず、海外富裕層むけのマンション建設に都民の税金が注ぎ込むのは許されないと、厳しくただしました。(2023年10月27日、公営企業会計決算特別委員会)
バリアフリー化などに端を発した事業が、国家戦略特区に位置づけられて一変
◯斉藤委員 泉岳寺駅地区第二種市街地再開発事業についてお聞きいたします。
まず、改めて、この事業の意義、目的を伺います。
◯三木市街地整備部長 本事業は、羽田空港や都心部とのアクセスを担う泉岳寺駅の機能増強に合わせまして、都市計画道路の整備や権利者の生活再建を目的として開始した事業でございまして、平成三十年度末に事業計画決定を行っております。
◯斉藤委員 ご答弁からも伺えるように、もともとこの地域における都の事業としては、泉岳寺駅のバリアフリー化などの機能強化に端を発するものでした。議事録を振り返っても、二〇〇〇年代の初めの頃は、エレベーターの設置や階段の蹴上げ高さの改善など、割と素朴な議論がされていたということが分かります。
ところが、この地域一帯が、二〇一一年に都市再生緊急整備地域及びアジアヘッドクオーター特区、そして、二〇一四年に国家戦略特区に位置づけられたことから様相が一変しました。
都は、品川駅・田町駅周辺まちづくりガイドライン二〇一四を策定し、JR東日本の品川車両基地跡地の巨大再開発、高輪ゲートウェイ駅の整備などと一体に、この泉岳寺駅地区の第二種市街地再開発事業に乗り出しています。
国際交流拠点の名の下に、既に住民に大きな被害や不安を与えている羽田新ルートやリニア中央新幹線の整備も前提に事業が進められようとしています。都営交通の地下鉄駅の機能強化、再整備や、それに伴う若干の地上整備、また、それに伴う権利保障の範囲の話であれば、さほど矛盾はなかったというふうに思います。
ところが、都は、そこにとどまらずに、経過としては港区から話が持ちかけられたとのことですけれども、特定建築者制度を活用し、自ら進んで再開発に乗り出していったわけです。
それが果たして本当に適切だったのか。再開発事業の立ち上げからもうすぐ十年になろうとしていますが、今日の時点で振り返る必要があるのではないでしょうか。
建設予定のマンションには、外国人むけのコンシェルジュも
〇斉藤委員 そこで、本事業において特定建築者制度を活用して建設される再開発ビルについて幾つかお聞きします。
建築面積は約四千九百平方メートル、延べ面積十一万平方メートル、容積対象面積は約八万五千平方メートル、そして、高さ百六十メートルの超高層で、住宅、業務、商業などから成る複合ビルになります。
このビルについて、令和四年度に特定建築者と敷地譲渡契約を締結したということでありますが、契約における土地の譲渡価格と共有持分割合について伺います。
また、特定建築者、東京都、それぞれが取得する予定の保留床と権利床の面積、想定される保留床の処分価格を伺います。
◯三木市街地整備部長 令和五年二月に特定建築者と締結いたしました敷地譲渡契約では、譲渡価格は二百九億円でございます。また、敷地の共有持分割合は約四二%であります。
保留床や権利床の面積につきましては、取得者の財産に関わる情報であることから、公表いたしておりません。また、保留床の価格は未定でございます。
◯斉藤委員 特定建築者への敷地譲渡価格は二百九億円で、敷地の共有持分割合は約四二%とのことでした。すなわち、特定建築者は、この土地に何の権利も持たないところから、二百九億円で約四割の共有持分を得ることになります。
一方で、保留床や権利床の面積は非公表、保留床の価格は未定とのことでした。
確認のためにお聞きしますけれども、保留床は、都や特定建築者にどのように区分されるのか伺います。
◯三木市街地整備部長 本事業では、都は、公益上必要な施設や権利者が必要とする住宅や業務区画について、保留床を取得することといたしております。
その他は公募で決定いたしました特定建築者が取得する計画となっております。
◯斉藤委員 事前にお聞きした話では、都は、都営交通が必要とする機械室やオフィスのための床、また、従前の権利者が権利床以外に買い増しするための分を保留床として取得する予定とのことでした。
そして、それ以外の保留床は、先ほどの約四割の共有持分の多くを占めることになると思いますが、特定建築者が取得をするということです。そして、そこから分譲や賃貸の事業が発生することになります。
それでは、この分譲や賃貸の事業において、特に住宅には約三百五十戸が整備されるとのことですが、どのようなものが整備されるのか。令和四年度に行った実施設計において、住宅はどのような利用者を想定し、どういったタイプの住戸が計画されているかお伺いします。
◯三木市街地整備部長 権利者の要望も踏まえまして、DINKSやシニア、ファミリーなどの一般世帯向けのほか、小規模な事務所兼用住宅、外国人の居住など国際交流拠点にふさわしい多様なライフスタイルにも対応した住戸の整備を図ります。
◯斉藤委員 ご答弁は、権利者の方向けの住戸の話も一緒でしたので、どれが分譲や賃貸用の住戸のタイプか分かりづらいですけれども、要するに、国際交流拠点にふさわしいということで、外国人の方でも住めるようなコンシェルジュつきの住戸も用意されると。
ここまで来ると、都民の税金を使って都が前面に乗り出して進めてきたこの再開発が一体何のために進められてきたのか、よく分からなくなってきます。
今回の事業で、超富裕層の投資やヒートアイランド現象を悪化させるのでは
〇斉藤委員 日経新聞の十月十九日付に、東京、マンション一億円超え、こういう記事が載りました。それによれば、不動産経済研究所が発表した今年四月から九月の二十三区の新築マンションの平均価格は前年同期より三六・一%高い一億五百七十二万円で、四月から九月としては一九九〇年以降、初めて一億円を突破したということです。
記事をもう少し紹介しますと、ある不動産会社の渋谷センターでは、一月から九月の不動産売買の仲介収入で、企業や投資家が投資目的で購入する事業、投資用が前年同期比で約二割増加した、センター長は、超都心に限ると物件購入の四割程度が投資目的だという印象だと話していると。
総資産が数十億円にもなる企業経営者や創業者といったスーパー富裕層が高立地のマンションをこぞって買っているという内容です。さらに、海外富裕層も日本への投資を増やしている、不動産サービス大手のジョーンズラングラサールによると、一月から六月の海外投資家による日本の不動産の購入額は、前年同期に比べて一・四倍の五千百三十億円に膨らんだと。このうち賃貸マンションは一割強を占めた、またさらに、実需目的で、住むことを目的で購入できるのは、富裕層や共働きで世帯収入が高いパワーカップルなど一部にとどまる、賃貸マンションの賃料も上昇するならばと購入を決心した都内の専門商社に勤める男性は今年五月、婚約者の女性と、東京都品川区のタワーマンションを一億一千万円で購入した、二人は世帯収入が二千万円を超えるパワーカップルだ、こういう内容なんです。
ちなみに、今ご紹介しました不動産会社というのは、泉岳寺駅地区第二種市街地再開発事業の特定建築者である東急不動産です。
果たして、都が国際交流拠点の名の下に、自ら主導した泉岳寺第二種市街地再開発は、結局、こうした超富裕層や海外投資家の投資目的や、ごく一握りの高収入世帯の需要と、そして、大手ディベロッパーの利益を満たすだけのものになる、そういう危険があるのではないでしょうか。
また、先ほど述べたとおり、この一帯はJR東日本による巨大再開発により超高層ビルが建ち並び、東京湾からの風を遮断し、都市のヒートアイランド現象をひどくする危険が既に指摘されています。
私たちも繰り返し指摘してきました。この泉岳寺の百六十メートルの再開発ビルもこの列に加わることになります。
さらに、例えば、都のキャップ・アンド・トレード制度をめぐる専門家の議論などを見ても、新築一辺倒のビジネスモデルでは通用しない社会がすぐ間近に到来しているというふうに思います。
東京都が税金で行う事業は、決して都民の暮らしの格差を拡大するものにつながってはならないと思いますし、環境の悪化や、近年、一層厳しさを増している気候危機に拍車をかけるようなものではあってはならないということはいうまでもありません。むしろ、その逆をリードする役割こそ、都には求められています。
まだ見直すチャンスは残されている
〇斉藤委員 昨年度までの執行額、進捗率、主な支出内容と残りの事業内容について伺います。
◯三木市街地整備部長 令和四年度までの執行額は、事務費等を除き約百二十七億円であります。進捗率は二一%です。
主な支出内容は、従前の権利者への用地補償、再開発ビルの実施設計、埋蔵文化財調査などであります。
残事業の主な内容は、従前の権利者への用地補償や施設建築物の工事などでございます。
◯斉藤委員 残事業の主要な部分を占めるのは、これから本格化する施設建築物の工事です。つまり、まだ事業を見直す僅かなチャンスは残されているというふうに思います。都に真摯な検討を求めるものです。
最後の質問です。
本地区における埋蔵文化財の状況、令和四年度における埋蔵文化財調査の状況について伺います。
◯三木市街地整備部長 本地区内には周知の埋蔵文化財包蔵地が存在していたことから、令和三年度より、教育庁の指導助言の下、埋蔵文化財調査を実施いたしております。
令和四年度は、明治時代の海岸線の護岸や水路の一部、新たな出土品などの調査を行いました。
◯斉藤委員 ご案内のとおり、本事業の南隣の一帯からは高輪築堤の遺跡が発見され、一部が保存されるとともに、まだ開発に未着手のところにさらに築堤が残っている可能性があります。
調査で見つかった明治時代の海岸線の護岸などは、高輪築堤の周囲の景観を形づくったものである可能性があります。十分に慎重な調査を行うことを求めるものです。
以上のことを指摘し、質問を終わります。