※ 2024年3月19日、文教委員会
空襲体験者の証言ビデオが、収録から四半世紀をへて初めて公開
〇斉藤委員 平和の取組について伺います。
ウクライナや中東での戦争が続く中、平和を求めて行動する市民の活動がいかに大切なものか、また、そうした市民の活動を封じ込めることがいかに危険なものか、世界中の人々が痛感しているところだと思います。
ロシアやイスラエルでも、反戦の声を上げる国民が政府からの弾圧を受ける深刻な状況を見ると、日頃から平和な社会をつくるための国民の努力と、それを大切にする政治、行政の在り方が今問われているというふうに思います。平和な社会を望む願いは、党派を超えた普遍的なものです。
都は、平和について考え、平和な社会をつなげていこうと発信し、行動する都民の活動の重要性について、どのように認識していますか。
◯蜂谷文化振興部長 戦争の記憶を風化させることなく、次の世代に語り継ぎ、平和の大切さを伝えていくことは重要であると認識しております。
◯斉藤委員 重要な認識を示していただきました。
今年は終戦から七十九年になりますが、三月十日の東京都平和の日にこの記念式典が行われ、私も参加をさせていただきました。
そして、その前後の期間に毎年開かれている東京空襲資料展では、今回初めて空襲体験者の証言ビデオが公開されました。
証言ビデオは、今から四半世紀も前、東京都平和祈念館の建設の機運の高まりの中で、平和祈念館での資料にするために一九九〇年代に収録された映像です。しかし、平和祈念館の建設が都議会で凍結されて以降は、ずっとこの証言ビデオも都の倉庫に眠ったままだったもので、この公開を求めて長年の活動をしてきた方々にとって、悲願の公開となりました。
来場者からは、証言へのつよい反響が
〇斉藤委員 証言ビデオの公開は、都庁も含めて都内四か所の東京空襲資料展で行われましたが、今回の来場者数と、前年との比較について伺います。
◯蜂谷文化振興部長 今年度の東京空襲資料展等の来場者数は五千五人であり、前年度の二倍近くとなっております。
◯斉藤委員 来場者は、前年度の二倍近い五千五人ということで、証言ビデオへの注目や関心が大きかったのではないかというふうに思います。
証言ビデオに協力された方々は、戦争の惨禍を二度と繰り返さないためにも広く伝えていきたいという思いで協力されてきたということを、私も空襲体験者の方々から伺ってきました。その意味でも、来場者が増えたことは本当によかったというふうに思います。
私も東京芸術劇場での資料展に伺い、とや英津子理事と一緒に伺いましたけれども、証言ビデオも拝見してきました。二十五年以上も前のビデオですので、空襲体験者の方々もまだ若く、時代を感じる映像でしたけれども、東京での状況だけでなく、神戸での空襲に遭った方のお話もあり、改めて知ることの多い内容でした。
来場者の中にはご高齢の方もいて、当時のことに思いをしのばせているような様子で、ずっと見ている方もいて、待ち望んでいた方々が多くいたのではないかと感じました。
会場では感想用紙も配られていましたが、来場者からはどのような声が寄せられているのか、伺います。
◯蜂谷文化振興部長 来場者の皆様からは、実際に体験者が語る言葉が胸に迫った、当時の様子が生で聞けたことはよかったなどの声が寄せられております。
◯斉藤委員 ちょうど昨日、生文局で東京空襲資料展の来場者数等についてのプレスリリースがありましたが、この中で、来場者の声が紹介されていました。体験者のお話は想像を絶する状況で、胸が潰れる思いだ、また、戦争を知らない世代に広く伝えていくことが大切だという評価する声が多数あります。
私自身、実は、東京都が二十五年以上も前に空襲体験者の証言ビデオを撮っていて、それがお蔵入りになっていたということは、都議会に来るまで知りませんでした。知れば、そんなことがあったのかと関心を持つ人が多いのではないかというふうに思います。その意味で、証言ビデオを活用した資料展のお知らせは広く行うことが重要だと思います。
そこで伺いますが、今回の資料展では、一九九〇年代に収録した証言ビデオが初めて公開されることについて、都民にどのようにお知らせしてきたのでしょうか。
◯蜂谷文化振興部長 東京空襲資料展における証言映像の公開につきましては、本年二月二十二日に報道発表を行いました。
◯斉藤委員 ちょっとこれ、驚いたのですけれども、都としては、二月二十二日にプレスリリースしただけだということなんですね。あとは新聞報道などがあったおかげなのかもしれませんが、空襲体験者の方々が長年公開することを求めてきて、ようやく四半世紀を経て公開されたものなので、もっと都からの広報を積極的に行っていただきたいというふうに思います。
今回の資料展のチラシには、証言ビデオについての掲載が間に合わなかったということですけれども、次回からはチラシに掲載し、多くの人の目に触れるよう、学校などにも配布をして、SNS等での発信なども積極的に行って、若い世代にもお知らせが届くようにすることを求めます。
空襲体験者の願いをふまえ、すべての証言ビデオの公開を
〇斉藤委員 証言ビデオについてですけれども、当時収録された証言ビデオは三百三十名分ということですが、今回は、公開の同意が取れた百二十二名分のビデオが一人十分程度にまとめられて各会場で公開されました。
残りの二百八名分については、現在、どのような状況でしょうか。
◯蜂谷文化振興部長 証言映像の当事者の意向確認につきましては、引き続き行っております。
◯斉藤委員 意向確認について、引き続き行っていくということなんですけれども、私は、証言ビデオの公開や東京都平和祈念館の建設を求めて長年活動してこられた方々、空襲体験者の方々とお話をしてきましたけれども、証言ビデオに協力した方々は、戦争の惨禍を語り継ぎ、多くの人に知ってもらいたいという思いで話してくれたのだから、特別な理由がない限り、全て公開するべきだと求めて、二〇二二年九月に都知事宛てにも要望を出されております。そうした切実な願いに寄り添って対応するべきではないでしょうか。
証言ビデオの残りの分について、本人が亡くなっていて、親族も見つからない場合は、公表についての公示を行うなどして全ての証言ビデオを公開するべきですが、いかがですか。
◯蜂谷文化振興部長 回答が得られていない方々につきましては、引き続き、電話等によりまして意向確認を行ってまいります。
◯斉藤委員 引き続き意向確認を行っていくということなんですけれども、二回、三回と繰り返し当たっていくということは、もちろん否定はしませんけれども、しかし、ずっと行っていて、駄目なら公開しないということは、私は、本当に伝えたいという思いで話してくれた方々の思いを鑑みると、その対応はどうなのかなというふうに思います。
ご本人が亡くなっていて、親族も見つからない場合は、公表についての公示を行って、何もなければ全ての証言ビデオを公開するという方法もあるのではないでしょうか。
ぜひ、話してくれた空襲経験者の思いに寄り添って、その声を風化させない取組を行うことを求めます。
展示の内容や機会のさらなる充実を
〇斉藤委員 今回の資料展では、証言ビデオだけでなく、デジタル化された資料についても、幾つか初めて公開をされています。
その展示物の内容について伺います。
◯蜂谷文化振興部長 空襲による被害情報についての文書や、都民の戦時中の服装に関する要綱などでございます。
◯斉藤委員 展示物の充実を図っていくことも大切です。デジタル化された空襲の被害情報の文書や都民の戦時中の服装に関する要綱などが初めて公開されたということです。
今回は、百二十二の証言ビデオの編集も大変な作業だったというふうに思いますけれども、ぜひこの展示物の充実を進めていくということも要望いたします。
また、空襲体験者で今回の資料展に足を運んだという方から感想を伺いましたけれども、三月十日に下町を中心に起きた大空襲の当時の写真については、パネルが一枚しかなく、当時の惨禍を伝えるものとしては不十分だということでした。
大空襲の様子が分かるような展示物のさらなる充実を図っていく必要があると思いますが、いかがですか。
また、資料展の開催場所を拡充していくことを求めますが、いかがですか。
◯蜂谷文化振興部長 資料展につきましては、実施箇所を増やすなど、企画検討委員会の意見もお聞きしながら、資料のより広い活用方法の検討を進め、充実を図ってまいります。
◯斉藤委員 資料展の実施場所を増やして、より広い活用方法の検討を進めるということで、貴重な前進です。
同時に、この展示は、デジタル化も重要ですけれども、やはり実物を当時の状況等も分かるように展示していただくことも重要です。こうした展示物の拡充を進めることを重ねて求めます。
証言ビデオの学校での活用など、より広くとどける工夫を
〇斉藤委員 今回の東京空襲資料展の来場者からの声として、会場で取られていたアンケート、感想用紙には、大切な取組だと思うからこその要望もあることが、プレスリリースからも分かります。
時期を限らず、年間を通して証言ビデオを見られる機会を設けていただくよう要望する、また、もう少し広い部屋を使うべき、ビデオの前の椅子が少な過ぎる、こういう声があります。こうした来場者の声を踏まえて、資料展での証言ビデオのコーナーをもっと拡充すること、また、期限を限らず、活用できる機会をつくっていくことが必要です。
今回、公開された証言ビデオは、数日間の期間限定の資料展だけでなく広く活用していくこと、また、都のホームページで公表することを求めますが、いかがですか。
◯蜂谷文化振興部長 証言映像につきましては、企画検討委員会のご意見もお聞きしながら、より広い活用方法の検討を進めてまいります。
◯斉藤委員 企画検討委員会の意見も聞きながら、より広い活用方法を検討するということです。
企画検討委員会では、日の出町の田村みさ子町長さんが委員になっておられますが、ビデオをお借りできるようなことがあるといい、三月十日や終戦記念日の頃に流せば、とても皆さんの心に響くと思うという発言をされています。そのほかにも広く活用できるようにすることを求める声が上がっています。
ぜひご答弁のとおりに広く活用できる方法の検討を進めていただきたいというふうに思います。
証言ビデオの活用方法について、例えば広島市や長崎市でも、原爆の被爆経験者の証言ビデオを学校に貸出しを行って、平和教育にも役立てています。市外の学校にも貸出しをして、修学旅行等の事前学習にも活用できるようにしています。
子供たちが戦争の惨禍や平和の大切さについて身近に学べるように、都としても、学校などの教育現場で証言ビデオの活用ができるよう検討していただきたいと思いますが、いかがですか。
◯蜂谷文化振興部長 証言映像につきましては、企画検討委員会のご意見もお聞きしながら、より広い活用方法の検討を進めてまいります。
◯斉藤委員 またご答弁は同じご答弁をいただいたのですけれども、お話を伺ったこの空襲体験者の方々も、学校で活用できるようにしてほしいとおっしゃっていました。子供たちの世代にも平和な社会をつないでいくためにも大切な取組だと思います。ぜひ検討していただきたいと思います。
東京大空襲の経験者の方々は、戦争の惨禍を語り継ぎ、平和な社会をつなげていくためにと、自分たちで、語り継ぐ東京空襲という……(資料を示す)このような雑誌ですね。ちょっと小っちゃいので、今、見づらいと思いますが、証言者の当時の様子を記載しています。
検討委員会の中でも、委員の海老名香葉子さんも委員の皆さんにご紹介していたというふうに思いますが、こうした民間で作成している証言集なども重要だと思いますが、見解を伺います。
◯蜂谷文化振興部長 戦争の記憶を風化させることなく、次の世代に語り継ぎ、平和の大切さを伝えていくということは重要であると認識しております。
◯斉藤委員 平和の大切さを伝えていくことの認識、重要だということをまたご答弁いただきましたけれども、民間で収集されているものや、こうした証言集も、ご答弁のとおり、戦争の記憶を風化させることなく、平和の大切さを伝えていく上で重要なものだというふうに思います。こうした民間での取組も、広く伝えていきたいという思いで行われています。こうした記録が散逸して風化していくことがないように、公的に継承していくことも必要だと思います。
こうした冊子や、民間で掘り起こされ、継承されている資料なども、都として収集、閲覧できるようにしていくこと、さらに、図書館への配置や都としての活用、また、これらの民間の活動の支援も含めて検討していただきたいというふうに思います。
3月10日の式典を、平和への願いをこめ、都民にひらかれた場に
〇斉藤委員 東京都平和の日の記念式典について一言触れたいと思います。
式典の内容の充実と、もっと都民に開かれたものにしてほしいという要望が繰り返し届けられ、我が党もこの場でも繰り返し求めてきましたけれども、今回は私も参加させていただいた中で、やはり東京空襲に思いをはせる者としては物足りなさを感じました。
これまで空襲体験者の方々にも求められているように、もっと体験の証言を柱にするような式典に変えていくなど、工夫が必要ではないでしょうか。あるいは、式典で証言ビデオを幾つか流すということも今後はできるのではないでしょうか。
式典については、企画検討委員会での海老名香葉子さんの発言が本当に、議事録を見ますと切実なものでした。多くの方はご存じかもしれませんが、海老名香葉子さんは、幼いときに、三月十日の大空襲で家族全員を亡くされました。その家族を探し求めて焼け野原を一人で歩き回ったという、本当につらい経験をされ、これまでも戦争被災者やご遺族の方々に寄り添う地道な活動をされてきました。
その海老名さんが、平和の日の式典について、誠におざなりの会、心が籠もっていないということを発言されています。音楽を聞いて、バッハやモーツァルトの生い立ちを聞いても、どうなるのかと。もう少し、もう最後、もう限界です、ここでもう一度、平和の日を見詰め直していただきたい、このように発言されており、部長さんも、じかに聞いていることと思います。
この平和の日の式典の充実についても、何度も要望を受けてきたと思います。式典の内容の見直しと充実、そして、都民に開かれた式典とすることを改めて求めておきます。
終戦80年へ、平和祈念館をつくり、東京から平和のメッセージを
〇斉藤委員 来年は、終戦から八十年になります。ウクライナやガザでの悲惨な戦争が続き、世界中の市民、社会が平和を求めている今こそ、平和憲法を持つ日本の首都東京から平和へのメッセージを大きく発信していくことが国際社会に大きく貢献することになるのではないでしょうか。
ぜひこの機を捉えて、四半世紀の時を経て公開された証言ビデオを広く活用していくと同時に、空襲体験者や多くの都民が平和な社会を未来につなげていくために願ってきた平和祈念館の建設に向け、踏み出していくことを求めますが、いかがですか。
◯蜂谷文化振興部長 証言映像につきましては、企画検討委員会のご意見もお聞きしながら、より広い活用方法の検討を進めてまいります。
なお、東京都平和祈念館(仮称)の建設につきましては、平成十一年の予算審議におきまして、都議会の合意を得た上で実施することとの付帯決議がなされた経緯があり、都議会での一定の審議と合意が必要であると考えております。
◯斉藤委員 都議会での一定の審議と合意が必要と、いつものご答弁なんですけれども、議会では、この間、平和に向けての行動を一致して私たちは行ってきました。ウクライナからのロシア軍の即時撤退と速やかな平和の実現に関する決議、それから、パレスチナ自治区ガザ地区における人道目的の停戦等の実現に関する決議、これを全会派一致で採択しました。
今を、そして、これからを生きる私たちにとって、平和への願いは、党派を超えて一致できる普遍的な願いではないでしょうか。戦争体験者の方々が長年願ってきた取組を前に進めるために行動を起こすことを議員の皆さんにも呼びかけて、質問を終わります。