不登校の増加にこたえ、多様な学びと魅力ある学校づくりを

※2024年3月15日、文教委員会

目次

はじめに

〇斉藤委員 次に、不登校について伺います。

 東京都の不登校児童生徒数は、今日の資料にも九ページに示されておりますけれども、この十年間で連続増加となり、令和四年度、二〇二二年度は、小中学校を合わせて二万六千九百十二人となっています。

 今では、学校以外にも多様な居場所や学びの場を確保していくことが求められているということと同時に、学校に通えなくなる児童生徒が増え続けている状況を改善していくことが、現在の教育の中心的な課題だというふうに考えますが、都教委の見解を伺います。

◯小寺指導部長 都教育委員会は、不登校の子供一人一人の状況に応じ、多様な学びの場を確保することができますよう、学校、家庭、その他の教育機関における支援の充実を図っております。

 また、子供が充実感を持って安心して学べる魅力ある学校づくりを推進することにより登校意欲を高められますよう、児童生徒を支援するためのガイドブックを作成し、その活用を促すなど、学校の取組を後押ししております。

◯斉藤委員 子供一人一人の状況に応じた多様な学びの場の確保と、子供が安心して学べる魅力ある学校づくりの推進を図っているというご答弁でした。どちらも大事な視点、大事な取組だというふうに思います。この二つの側面から伺いたいと思います。

多様な学びの場や居場所をつくるために

学校内の別室への登校について

〇斉藤委員 まず、多様な学び、また居場所の確保についての施策について伺っていきます。

 不登校の子供への対応として、校内の別室に登校する児童生徒に対して指導や相談対応を行う支援員の配置に係る費用について、都は、新年度の予算を前年よりも引き上げていますけれども、昨年度の実績と来年度の見込み、また、実施校からの評価について伺います。

◯小寺指導部長 今年度、都教育委員会は、不登校の子供の多い学校を対象として、小学校三十七校、中学校百七十二校に支援員を配置しておりまして、来年度は、今年度の学校に加え、新たに小学校百十九校、中学校六十校に配置いたします。

 学校からは、別室の学習で自信をつけ、支援員の付添いで教室での授業に参加できるようになったなどの報告を受けております。

◯斉藤委員 学校からの声として、別室の学習で自信をつけて、支援員の付添いで授業に参加できるようになったケースもあるということです。

 新年度は、新たに小学校百十九校と中学校六十校に支援員をつける見込みということで、別室だったら学校に行けるという子供に少しでも支援の手が届くように取組を拡充することは重要だというふうに思います。

 私は、以前に、別室登校を実施している都内の小学校を視察させていただいたことがありますが、通常の教室とは違って、ゆったりとスペースを取って、一つか二つの椅子と机のほかにソファーやマットが配置されて、何をしていてもいい、本を読んだり、寝転んだりしてもいいというスペースになっていて、子供が思いのままに過ごしている様子が印象的でした。ストレスや悩みを抱えたり、疲れてしまった子供に安心して休める場所があるということは重要だというふうに思います。

 一方で、息子さんが不登校を経験したという保護者の方からは、別室登校していた息子さんのところにクラスのお友達が給食を持ってきてくれようとしたときに、その部屋には行ってはいけないというふうに先生にお友達がいわれて戻されてしまったという場面を保護者の方が見て、とても悲しい気持ちになったというお話も伺いました。

 別室登校の活用が子供にとって温かいものになるように、充実に向けた取組を行っていただきたいというふうに思います。

不登校特例校の設置について

〇斉藤委員 新年度から新規で行われる、中学校への校内分教室としての東京型不登校特例校の設置について伺います。

 この東京型不登校特例校に対して、都は、教員の配置への支援を行うということになっていますが、学習のカリキュラムは柔軟な対応を認めるものになっているのか、伺います。

◯小寺指導部長 東京型のいわゆる不登校特例校、チャレンジクラスは、従来の特例校と同様、ゆとりある時間割の中で体験的な学習を多く設定するなど、柔軟な教育活動を行うこととしております。

◯斉藤委員 ゆとりある時間の中で、柔軟な教育活動を行うということです。登下校の時間なども縛られず、従来の特例校同様ということで、クラスも十人程度のところが多いというふうに伺っています。

 不登校特例校については高尾山学園を視察させていただいたことがありますが、少人数で、教員の手も行き届く環境が、子供の伸び伸びとした学びや居場所として重要なんだということを実感しました。

 都として新たな取組だと思いますが、先進例や好事例について区市町村教育委員会と情報共有を行って、よい施策にしていただきたいというふうに思います。

バーチャル・ラーニング・プラットフォームの導入について

〇斉藤委員 都教委は、昨年度から、不登校等の理由により、学校や教育支援センター等につながることができない児童生徒などを対象に、バーチャルラーニングプラットフォームの導入を始めていますが、現在導入している自治体数と生徒数、また、来年度からの実施自治体の見込みについて伺います。

◯篠企画調整担当部長DX推進担当部長兼務 令和五年度は、八自治体で実施してまいりました。児童生徒等には、合計千五百八十アカウントを配布し、運用を進めてございます。

 令和六年度につきましては、二十八自治体での実施を見込んでございます。

◯斉藤委員 現在は、新宿区や墨田区、八王子市など八つの自治体で導入しているということがホームページ上でも紹介されていますけれども、来年度は二十八の自治体に広げていくということです。

 このバーチャルラーニングプラットフォームは、仮想空間の中で、自分の分身であるアバターを使って学習などの活動に参加していくというものですが、子供たちのつながりが仮想空間の中だけでよいのかという懸念もあります。

 例えば、ひきこもりで外に出ることができないお子さんが、このバーチャルラーニングプラットフォームなら参加できるという場合などは、一つの居場所やつながりをつくる場になると思いますけれども、その場合でも、仮想空間の中だけでしかつながりをつくれなくなってしまうのは、よくないのではないかと思います。

 都教委は、子供たちがつながりをつくる場が仮想空間だけで完結してよいと考えているのか、また、現実でのつながりの機会を設けているのか、伺います。

◯小寺指導部長 バーチャルラーニングプラットフォームに参加している子供に対しましても、一人一人の状況に応じ、教員や支援員等が学習指導や相談対応を行うとともに、体験的な活動を設定するなどいたしております。

◯斉藤委員 一人一人の状況に応じてということで、無理に現実の世界に引っ張り出すということはできないというふうには思いますが、しかし、いつでもリアルにつながりを持ちたいときには、その機会を保障するということが大事だというふうに思います。ご答弁では、バーチャルラーニングプラットフォームに参加している子供に対しても体験的な活動を設定するなどしているということなので、望むときには、リアルにつながることができる機会を提供できるようにしていただきたいというふうに思います。

 一方で、セキュリティの問題も、丁寧な対応や検証が必要だというふうにも思います。

 バーチャルラーニングプラットフォームには、見守りの大人や異年齢の児童生徒が混在する上、児童生徒の年齢などは分からない状況だと聞いていますが、仮想空間の中で、子供に関わる大人はどんな人なのか、また、個別に約束して会うようなケースなどを防ぐようなセキュリティの確保はどのようになっているのか、伺います。

◯篠企画調整担当部長DX推進担当部長兼務 各自治体の教育支援センター職員等が子供たちに声かけするなど支援を行っているほか、都が配置したオンライン支援員が子供たちの見守りに努めております。

 仮想空間の中では、個人を特定できる情報発信は行わないよう自治体に求めており、各自治体において利用ルールを定め、運用してございます。

◯斉藤委員 オンライン支援員が仮想空間の中で見守りを実施するということですが、子供たちの安全が守られるように万全を尽くしていただきたいというふうに思います。

フリースクールについて

〇斉藤委員 不登校のお子さんたちから、学校とは違う居場所や学びの場として利用されているのがフリースクールです。

 都教委は、二〇二二年度から、フリースクールに通う児童生徒の保護者を対象にアンケート調査を行い、調査の途中経過としての報告が先月に発表されました。

 この調査の中で、児童生徒がフリースクール等で楽しさや興味を感じる活動、これには、やりたいことを考え、計画して行う活動、これがトップになり、保護者の意見としても、得意、不得意の分野がある子供たちが興味、関心を持てるよう、柔軟なサポートを求めるという声が紹介されています。

 子供の興味、関心、子供の声や意見を大切にした取組は、学校の在り方を考える上でも重要なことだと考えます。

 都教委は、こうした結果をどのように教育施策に反映させるのですか。

◯小寺指導部長 都教育委員会は、フリースクール等に通う不登校児童・生徒支援調査研究事業における令和四年度、五年度の調査結果を踏まえまして、不登校の子供に対する効果的な支援の在り方について検討することとしております。

◯斉藤委員 結果を踏まえて、不登校の子供に対する支援の在り方について検討するということで、それも大事なことなんですけれども、私が聞いたのは、学校の在り方を考える上でも、とても参考になる内容なのではないかということです。

 お子さんが小学校三年生のときから不登校になったという保護者の方からお話を伺いましたけれども、学校では、いつもやることが決められていて、お子さんはつまらなかったということです。学校ではとても緊張していたようで、小学校三年生のときにエネルギーが切れてしまったのではないかと保護者の方は話していました。

 今の学校の在り方の中で、学習の詰め込みや課題をこなすことに子供たちが追われてしまって、子供の思いから出発する自由な学びの機会が奪われているのではないかと感じています。

 フリースクールでの調査結果で示された、やりたいことを考え、計画して行う活動が楽しい活動のトップだったということは、今の学校にない、あるいは奪われているものなのではないかという示唆を与えてくれているものだと思います。ぜひ学校の在り方の参考としても受け止めていただきたいというふうに思います。

 この調査では、調査への協力金として月額二万円が支給されていましたけれども、利用していた方からは、とても助かったという声が届いています。調査でも、その効果について、家計にとって大変助かるという声が九割を超えています。

 都は、来年度から、調査への協力とは関わりなく、フリースクールの利用者に月二万円の補助を行いますけれども、重要な支援だというふうに思います。しかし、フリースクールの授業料の平均額は、月四万三千円ということも明らかになっています。今後、この支援額についても拡充していくように求めるものです。

通学できなくなる子どもを増やさない、魅力ある学校づくりへ

不登校の増加は、教員の多忙化と一体のもの

〇斉藤委員 この間、不登校に関する非常に重要なアンケート調査が幾つか行われています。その一つは、NPO法人多様な学びプロジェクトが、不登校の子供や保護者などの当事者を対象に、当事者実態ニーズ全国調査を行ったものです。一月に結果を発表しています。

 その中で、学校に行きづらいと思い始めたきっかけについて、子供と保護者の回答でどちらも一番多い回答が、先生との関係、先生と合わなかった、先生が怖い、そして二番目、三番目が、勉強は分かるけれども、授業が合わない、そして、学校システムの問題、価値観が古い、時代に合わない、風土に合わないという回答でした。

 どれも学校に起因するものですが、このことをどう受け止めますか。

◯小寺指導部長 不登校の要因や背景は、複雑化、多様化していると捉えております。

◯斉藤委員 要因や背景は複雑化、多様化しているというのは、これまでの質疑の中のご答弁の繰り返しなんですね。

 これまでの都の児童生徒の問題行動、不登校等に関するこの調査では、不登校当事者ではなくて、学校を通じて調査を行ってきたため、不登校の理由は、家庭の状況や、今のような様々な要因というふうにまとめられてきました。しかし、実態は違うのではないかという声が当事者の方々からもよく届けられていました。

 日本財団も、二〇一八年に不登校傾向にある子どもの実態調査を行っていますが、中学生が中学校に行きたくない理由として、疲れる、朝起きられないなどの身体的症状以外の要因では、学業に関する理由が多くあります。テストを受けたくないや、授業がよく分からない、ついていけない、また、学校は居心地が悪いなどです。

 そして、皆さんもよくご存じだと思いますけれども、文科省が不登校経験者の小学生、中学生を対象に二〇二一年度に行った不登校児童生徒の実態調査では、学校に行きづらいと感じ始めたきっかけ、この回答には、やはり先生のこと。先ほどと同様に、先生と合わなかった、先生が怖かったというもの、これが小学生で三〇%、中学生で二八%と高い割合になっています。

 この状況をどう見るのかということ、この検証が求められているというふうに思います。

 私は、もちろんですけれども、ここで個々の先生たちのことを問題にしているのではありません。先生たちがどういう状況に置かれているのか、ここを見ていくことが肝腎です。

 不登校について当事者の声を聞いていくと、子供が学校に通えなくなった背景には、教員の多忙化や教員が足りないことで、子供たちに手が行き届かない学校の実態があることが見えてきます。

 不登校になり、今はフリースクールにお子さんが通っているという保護者の方は、学校では、とにかく人手が足りていなくて忙しそうな先生に、子供たちも話したいことがあっても声をかけられない、手のかかる子がいれば、ほかはもう手が回らない状況で、先生も子供たちも大変だということでした。

 子供たちが学校に通えなくなる不登校の増加は、教員の多忙化や不足の問題と一体のものだという認識はありますか。

◯小寺指導部長 都教育委員会は、学校にスクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー、その他の支援員を配置するなど、教員が外部人材と共同して、一人一人の子供の状況に応じた支援を行う体制を構築いたしております。

◯斉藤委員 今、いろいろやっている施策のことについて述べられましたけれども、しかし、スクールカウンセラーは、週一回の配置がほとんどで、予約もいっぱいで、相談するのに数週間待つこともあります。一人一人の子供の状況に応じた支援を行う体制を構築しているというふうにいいますけれども、実際には、学校に行けなくなる不登校の児童生徒が増えているという現状です。こうしたアンケート調査の結果や当事者の声に向き合っていくべきではないでしょうか。

 私は、この不登校が増え続けている背景には、先生たちが子供たちとじっくり向き合えない、学校が抱えるもう一つの課題である教員不足、教員の多忙化があるというふうに考えています。

 都教委は、この三月に学校における働き方改革の推進に向けた実行プログラムを発表しましたけれども、その中で、依然として長時間労働が多い状況や、メンタルヘルスの不調等で休職する先生たちも、この五年間で増え続けていることが分かります。つまり、今の学校は、子供も先生も通えない状況を生み出しているということではないでしょうか。

 その意味でも、教員の多忙化の改善、教員不足の解消は待ったなしです。

教員不足の解消はまったなし——不足分の実態のすみやかな掌握を

〇斉藤委員 まず、その教員不足に関わって伺いたいと思います。

 都教委はこれまで、今年度の教員不足の数について、四月に八十人程度、九月に百四十人程度と答弁してきましたけれども、実際には、四月の時点で二百三十八人が不足であったことが、我が党のアオヤギ有希子都議の一般質問で明らかになりました。

 都教委は、なぜ産休、育休代替教員の不足分を教員不足の数に入れなかったのか、伺います。

◯吉村人事部長 都教育委員会では、区市町村からの申請に基づき、前年度の退職や学級数の増加等、正規教員による補充対象を不足数として把握しています。

 産休、育業代替教員は、法律に基づき臨時的任用教員で補充することとしており、都教育委員会が把握する不足数に含めておりません。

◯斉藤委員 要するに、どこが不足の補充を行っているかの問題で、都教委に申請が来るものについては把握ができるけれども、学校で探すことになっている産休、育休代替については、都では実数を把握していないということだというふうに思います。

 しかし、現場での教員不足は、産休、育休代替を含めた不足が大きな負担になっているのが実態です。現場の実態を正確につかむ必要があると思います。

 今後、教員不足の数を公表する際は、産休、育休代替の不足分も含めることを求めますが、いかがですか。

◯吉村人事部長 繰り返しになり、恐縮ですが、産休、育業代替教員は、法律に基づき臨時的任用教員で補充することとしており、都教育委員会が把握する不足数に含めておりません。

 なお、教職員が産休、育業に入る日や復帰する日は個々様々であり、区市町村教育委員会や都立学校からの産休、育業代替の補充申請とその後の代替教員の任用は随時行われていることから、都教育委員会において個々の補充状況を確認することはしておりません。

◯斉藤委員 産休、育業に入る日や復帰する日というのは様々でというふうにおっしゃいましたけれども、四月当初の時点ですとか、九月一日の時点でとか、時点を区切って出してもらうことはできるのではないですか。私たちは、実際にそのようにして調査を行いました。現状の改善のためには、まず、実態を正確に把握していくことが必要だということを指摘いたします。

小学校低学年を対象にしたエデュケーション・アシスタントをすべての学校に

〇斉藤委員 都教委は、学校における働き方改革の推進に向けた実行プログラムの中で、教員の安定的確保の面でも長時間勤務の解消は喫緊の課題だと示し、働き方改革の推進が重要だとしていますけれども、その目的について伺います。

◯矢野人事企画担当部長 次代を担う子供たちの豊かな学びと健やかな成長に向けて、教員の心身の健康保持の実現と、教員が誇りとやりがいを持って職務に従事できる環境を整備することにより、学校教育の質の維持向上を図ることを目的としております。

◯斉藤委員 子供たちの豊かな学びと健やかな成長と、教員の健康、誇りとやりがいを持って仕事ができる環境を整備すること、そして教育の維持向上を図るということが目的だということです。このプログラムの中にも、まさに記載されておりますけれども、大切なことだというふうに思います。

 教員の負担軽減に向けては、今、様々な取組を行っているところだというふうに思いますが、都は、二〇二二年度から、小学校の低学年を対象にエデュケーションアシスタントの配置を始め、新年度からは全校を対象に配置するとしています。

 これまでどのような効果があったのか、この質問、さきにご答弁がありました。アシスタントを配置している学校の児童は、授業の理解度が高いなどの効果が確認できたほか、教員のストレスチェックの結果が改善しているというご答弁でした。大切なことだというふうに思います。

 今の小学校低学年というのは三十五人学級の編制になったところですけれども、やっぱりそれでも、もう一人、大人の手が必要だという認識だということでしょうか。

◯矢野人事企画担当部長 教育の質の向上と教員の負担軽減を図るため、きめ細かな対応が求められる小学校低学年でエデュケーションアシスタントを配置することとしております。

◯斉藤委員 きめ細かな対応が求められる小学校の低学年では、大人の手がもっと厚い方が子供たちに行き届く体制になるということだというふうに思います。新年度からは、全ての小学校を対象に配置するということなので、先ほどのご答弁のような効果が広がることを期待します。

スクールカウンセラーの大量の雇い止めを撤回し、配置をふやせ

〇斉藤委員 悩みを抱える子供たちに寄り添う存在として重要な役割を果たしているのがスクールカウンセラーです。専門的な立場から子供たちの相談に乗ることで、教員や管理職にも頼られる存在になっています。

 浜教育長は、スクールカウンセラーの役割について、不登校やいじめ、児童虐待等の未然防止、早期発見等、子供の悩みや抱えている問題の解決に向けて、心理の専門家として、子供や保護者への支援及び教員への助言を行う重要な役割を果たしておりますと、これも我が党のアオヤギ有希子都議の一般質問に答弁をされました。

 悩みを抱える子供たちと信頼関係を築きながら寄り添うスクールカウンセラーの活動の専門性と、そして継続性については、どのように認識していますか。

◯小寺指導部長 都教育委員会は、子供の悩みや抱えている問題の解決に向けまして、心理の専門家としてのスクールカウンセラーを都内公立小中高等学校に配置いたしております。

 各学校では、スクールカウンセラーを含む全教職員による教育相談体制を構築しておりまして、スクールカウンセラーが交代しても子供たちが不安を感じることがないよう、前年度までに行ってきた相談対応や支援等が確実に継続される仕組みとなっております。

◯斉藤委員 今のは、スクールカウンセラーが交代しても問題ないというようなご答弁なんですね。しかし、実際には、子供たちは時間をかけながら心を開いて、スクールカウンセラーの方と信頼関係をつくっていく、そういう下で相談ができるようになるわけで、スクールカウンセラーの仕事は、その専門性と継続性が本当に重要な仕事です。

 ところが、都教委は、そのスクールカウンセラー二百五十名を三月末で雇い止めしようとしていること、これは本当に許されません。

 会計年度任用職員制度が導入されてから、スクールカウンセラーの方々は四回の更新を経て、来年度の任用は公募による選考が行われましたが、選考に当たって、都教委は面接と書類選考をしただけで、実績のあるスクールカウンセラーに大量に雇い止めを通知しました。

 この問題について、我が党は国会でも質疑をしましたが、文科副大臣は、スクールカウンセラー等活用事業に関するQ&Aにおいて、スクールカウンセラーの選考に当たって、学校現場での活動実績等についても十分踏まえた上で選考していただきたいと示している、このように答弁しています。

 都教委の今回のスクールカウンセラーの雇い止めは、国が示しているこうしたQ&Aの内容を踏まえないやり方だということを、どう認識していますか。

◯小寺指導部長 都教育委員会は、文部科学省のスクールカウンセラー等活用事業実施要領を踏まえまして策定しました東京都公立学校スクールカウンセラー選考実施要項に基づき、選考を行っております。

 具体的には、四回までは公募によらない再度任用とし、校長の勤務評価等により選考いたしております。

 また、五回目は公募による任用とし、新規申込者と同様に面接を実施し、適切に選考しておりまして、雇い止めという言葉の定義がよく分からない部分はございますが、雇い止めということはないというふうに考えております。

◯斉藤委員 あのね、雇い止めじゃないというんですけれども、これ、民間でいったら重大な雇い止めの事案なんです。

 私が聞いたのは、文科副大臣が国会で示したQ&Aのことなんです。都教委の今回の選考は、ここに示されている、学校現場での活動実績等についても十分に踏まえた上で選考していただきたいという、こういう内容に反するやり方ではないですか。

 もう一回、聞きます。

◯小寺指導部長 繰り返しになりますが、都教育委員会は、選考実施要項に基づき適正に選考を行っておりまして、雇い止めということはございません。

◯斉藤委員 結局、副大臣が示したQ&Aについては答弁されないんですね。

 専門性、継続性が重要なスクールカウンセラーについて、機械的な対応をするのではなくて、会計年度任用職員とする対応を見直して、継続して安定的に働けるようにしていくこと、そして、今回の雇い止めを撤回し、学校へのスクールカウンセラーの配置を増やして充実することを改めて求めます。

教員の働き方改革で、子どもたちに向き合う時間を

〇斉藤委員 この学校における働き方改革の推進に向けた実行プログラムですが、ここには、いじめや不登校、そのほかの様々な困難を抱える児童生徒に対するきめ細やかな対応ができるよう、授業準備や子供たちと向き合うための時間を十分に確保するため、働き方改革の推進が重要だというふうに示されています。

 さらに、都教委が保護者や地域へ配布している、この働き方改革への理解をお願いする文書にも、子供たちと向き合うための時間や授業準備の時間を十分に確保できるよう、教員の長時間勤務を早急に改善することが必要だと記載されていて、子供たちと向き合うための時間、それから、授業準備の時間が必要なんだということが強調されています。

 つまり、現状では、先生たちが子供たちと向き合う時間や授業準備の時間を十分に確保できていないという認識を持っているということでよろしいですか。

◯矢野人事企画担当部長 これまでの働き方改革により、長時間勤務の状況は改善傾向にはありますものの、依然として長時間勤務の教員が多い状況でございます。

 こうしたことから、学校における働き方改革の推進に向けた実行プログラムでは、新たな教育課題への対応や、様々な困難を抱える児童生徒に対するきめ細かな対応を行うことができるよう、授業準備や子供たちと向き合うための時間を十分に確保するため、働き方改革を推進することとしております。

◯斉藤委員 認識についての直接のお答えはありませんでしたけれども、授業準備や子供たちと向き合うための時間を十分に確保するため、働き方改革を推進するんだということですね。このことは、本当に重要な視点だというふうに思います。

 つまり、教員の多忙化を解消することが、子供たちと向き合える時間、それから授業準備の時間をつくり出して、教員のやりがいにもつながり、教員の健康維持にもつながっていくということではないでしょうか。そして、そのことで子供たち一人一人に行き届く環境に変われば、子供たちの不登校も減るということになっていくのではないでしょうか。

 だからこそ、教員不足や多忙化の改善は、子供たちの不登校を減らして、安心して通える魅力ある学校づくりのためにも重要だというふうに考えます。

教員の持ち時数をへらし、教員定数をふやす、抜本的な改善を

〇斉藤委員 教員の負担軽減のための施策の拡充に様々取り組んでいるところだというふうに思いますけれども、そうした努力は、私たちも、もちろん重要なものだというふうに認識していますが、しかし、依然として続いている長時間勤務や多忙化の解消のためには、もっと根本的な改善が必要ではないでしょうか。

 教員の多忙化は、これまで、持ち時数が増やされても定数が改善されてこなかったこと、さらに、先ほどもお話が出ました、国で定めた給特法、ここで残業代は頭打ちにされ、いわゆる定額働かせ放題の状況を生み出してきたこと、こうした状況が、教員が子供たちに向き合う時間を奪い、授業の準備時間さえ、ままならない状況を生み出してきたということは、もう明らかなことなんです。

 教員の多忙化を根本的に解決して、教員がやりがいを持って働ける環境ができてこそ、教員不足も解消され、子供たちも安心して通える魅力ある学校をつくることができます。

 教員への指導業務の改善ということがプログラムの中で掲げられていますけれども、例えば小学校での英語の教科化やプログラミングなど、時数やこの業務が増やされてきた一方で、それに見合った教員の定数の改善など根本的な改善を行ってこなかった都教委こそが、今こそ、教員が置かれている状況に向き合って、学校の在り方を考える必要があると思いますが、いかがですか。

◯吉村人事部長 教員の定数は、いわゆる標準法に基づく都の配置基準により適切に配置しており、都教育委員会は、教職員定数の一層の充実を国に対して要望しております。

◯斉藤委員 国に要望しているということで、それ自体は大切なことなんですけれども、しかし、都としてやれることをもっとやる必要があるんじゃないかというふうに思うんです。

 昨年の事務事業質疑でも取り上げましたけれども、都教委では、都立中学校の教員の持ち時数について、週十八時間を標準としているということでした。これと比べても、週二十四時間や二十六時間が上限とされている区市町村立の小中学校の教員は、もう多忙になるのは明らかではないでしょうか。

 都として、教員の時数の改善、定数の改善、これを行って、抜本的な対策を行うことを求めます。

 最後に、今回報告された第五次東京都教育ビジョンの案について、一言触れたいというふうに思います。

 第四次からの引き続きのところも多いですけれども、特に、グローバル人材の育成やイノベーション人材の育成などが強調されていて、公教育が、まるで財界が求める人材育成の場のようになっているんじゃないかと思います。こうした目指すべき人間像のようなものを大人が決めつけて、そこを目指していくということを、子供たち、教育現場に押しつけていくというようなこの在り方は、本当に疑問です。

 こうした中で、子供も教員も多くの課題が求められて、学校が窮屈なものになっているのではないでしょうか。本来の教育の目的である人格の形成、そして、とりわけ子供の権利や子供たちの自由で自発的な学びの保障をしていくような教育環境を実現していくことを求めて、質問を終わります。

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