「暮らしを支えるバス路線をなくさないで」――切実な声がよせられています。バス路線を公共交通として重視し、東京都が支援にふみだすよう迫りました。(2023年3月14日、公営企業委員会)
〇斉藤委員 次に、四つ目のテーマですけれども、公共交通の在り方についてです。
交通局では、新型コロナの感染拡大以降、乗客の減少によって料金収入が減収するなど、厳しい状況が続いております。
先ほど来からも質疑がありますけれども、その一方で、都民の暮らしや経済活動を支えるためにも、公共交通を維持していくということは必須の課題です。特に、公営の交通機関として、交通局は、都民の移動の権利の保障、これを守る視点が一番に求められているというふうに思います。
その点から幾つか伺いたいと思います。
貴重な移動手段が、次々に失われている
〇斉藤委員 まず、バスの減便についてです。
コロナ禍の二〇二一年度以降に減便になっている都バスの路線の数と本数について伺います。
◯佐藤バス事業経営改善担当部長 令和三年度以降のダイヤ改正におきまして、減便となりましたのは、平日、土曜、休日のいずれかで一便だけ減少した路線も含めると、六十二路線、平日一日当たり三百二十一便でございまして、これは、平日全体の便数の約三%に当たります。
◯斉藤委員 二〇二一年以降、減便しているのは、六十二路線、三百二十一便、平日全体の約三%が減便をされているということです。
これに関連して伺いますけれども、新年度予算では、交通局の定数が三十一人の減になっています。理由は、バスの減便によるものなのか伺います。
◯豊田総務部長 交通局の令和五年度職員定数は、安全管理体制の強化等に伴い増員する一方、バス路線やダイヤの見直しなどに伴う減員もあり、差引き三十一人の減員となってございます。
◯斉藤委員 差引きで三十一人の減ということです。実際には、バスの運転手の退職者不補充という形で、三十八人の減員だというふうに伺っていますので、定数削減の大きな理由が、このバスの減便によるものだということだと思います。
私の地元でも、足立区梅田から浅草までの路線と、それから、北千住駅から駒込病院前までの路線、そして、王子駅前から新田一丁目、王41ですけれども、これらの路線が二月から減便をされているという状況です。これらのバスは、駅から遠いエリアを回って運行しているので、交通不便地域の方々にとって、まさに貴重な移動手段になっています。減便されたら外出しにくくなるという声も届いています。
減便をしても影響が少ないところを選んでいるということで伺っておりますけれども、こうした減便が続けば、ますますバスに乗りにくくなり、バス事業も先細りになってしまうのではないでしょうか。バスの運転手も成り手不足で、一度減らしてしまえば、回復していくのは本当に大変なことになります。公の公共機関として、都バスはなるべく維持していく努力をしていただきたいというふうに思います。
高齢化や CO2 削減など、公共交通への新たなニーズにこたえて
〇斉藤委員 また、それと同時に、どう維持していくのか、都バスの今後の需要変化も併せて、改めて考え方も転換していくということも必要ではないかというふうに思っています。
そこで伺いますけれども、都営交通の在り方、経営について、交通局は、有識者会議を設置しています。
この都営交通の経営に関する有識者会議の第一回目の会議が十二月に開かれたところですけれども、この会議が設置された経緯について、改めて伺います。
◯神永企画担当部長 コロナ禍後の乗客数の回復が想定よりも鈍いことや、電気料金等の物価高騰など、都営交通を取り巻く事業環境が厳しさを増す中、持続可能な経営基盤の確立に向けて、幅広い見地から意見、助言を得ながら方策を検討するため、外部の委員で構成する会議を設置いたしました。
◯斉藤委員 厳しい中でも、持続可能な事業を目指していくということは重要です。幅広い見地から意見と助言を得ながら方策を検討するための会議だということですが、先ほどのご答弁では、令和七年、二〇二五年以降ですかね、この計画にも反映していくということですので、大事な転換点にもなってくるのかなというふうに感じています。
同会議の十二月の第一回目では、主にどのような議論が出たのか伺います。
◯神永企画担当部長 第一回目の会議では、将来の収益につながる投資の必要性、運賃設定や負担の在り方、バリアフリーの推進など、多岐にわたるご意見をいただいたところです。
◯斉藤委員 まず、運賃、料金の引上げということも出ているというところもありましたけど、これは安易にやるべきではないということは、まず、指摘しておきたいというふうに思いますが、この会議の議事録を私も拝見させていただきましたが、そのとおりだなと思う意見もたくさんありました。
例えば、高齢化が進む中で、公共交通の需要が少なくなる、そういうことではなくて、公共交通にとっては、高齢者の需要開拓のターゲットにもなり得るという発言もありました。高齢で自動車利用が困難になる人が増えていく状況があると、そういう視点を持っていただきたいという意見がありました。また、カーボンニュートラルという視点も挙げられて、バスも地下鉄も含めた公共交通は、自動車の移動よりもCO2排出の削減という点からも利点があるという大事な考え方だというふうに思います。
都が財政支援にふみだし、公的責任でバス路線の維持を
〇斉藤委員 さらに伺いますけれども、都市整備局において、二〇二〇年十月から、東京都における地域公共交通の在り方検討会が開催され、地域公共交通の目指すべき姿や都が講じるべき施策の方向性の検討が行われてきました。その内容が、東京都における地域公共交通に関する基本方針として、昨年度末に発表されております。
交通局は、一交通事業者としてこの検討会に参加をしてきたと伺っていますけれども、どのようなことを都に求めてきたのか伺います。
◯佐藤バス事業経営改善担当部長 お話の検討会には、交通局もバス事業者としての立場から委員として参画しております。
新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、各事業者とも乗車人員が大きく落ち込む中、検討会におきまして、東京バス協会からは、これまでのような路線網の維持は困難となっているため、都としての財政的な支援が必要といった意見が出ており、交通局といたしましても、事業運営上抱えている課題などについて情報提供を行うとともに、行政の支援の在り方等について意見を述べてきたところでございます。
◯斉藤委員 東京バス協会からは、これまでのような路線網の維持は困難であり、都としての財政的な支援が必要だといった意見が出たということ。また、交通局としても、行政の支援の在り方等について意見を述べてきたということです。
以前にも取り上げさせていただいていますが、私はこの検討会の議事概要を興味深く拝見させていただきました。昨年取りまとめられたこの東京都における地域公共交通に関する基本方針の中身よりも、ある意味、中身の濃い生の意見交換がされていたように感じています。ご答弁のとおり、民間のバス事業者さんも、都民の貴重な移動手段を支える事業として、独立採算だけでは維持ができない、こういう状況に直面しています。都営交通としても同じ思いがあるのではないでしょうか。
世界に目を転じれば、今、欧州を中心に、鉄道事業者も公営に転換しているという事例が多くあります。ヨーロッパでは、地域公共交通を民間の商業ベースでは供給できない社会に必要な公共サービスとして位置づけて、公的責任を明確にしています。厳しい状況だからといって、市場原理で縮小していくということではなくて、公共交通を守る、公的責任で、分かりやすくいえば、一般会計の支援を行って、支えて、都民の公共交通を守る、こういう視点にシフトしていくということが、今、本当に東京にも必要だということ、このことを申し上げて、最後のテーマに移ります。