私立小中学校の子どもをもつ世帯へ、負担軽減の促進を

コロナ禍のなか、私立小中学校に通う世帯でも家計急変がおき、子どもたちの学びが脅かされています。義務教育は無償(憲法26条)という立場にたち、東京都として負担軽減の充実をはかるよう求めました。(2022年10月21日、各会計決算特別委員会第2分科会)

◯斉藤委員 私からはまず、私立小中学校への支援について伺います。コロナ禍の影響から、また現在の物価高騰の中で、都民の暮らしは厳しさを増しています。働く人の実質賃金は下がり続け、子育て世代からは学費の負担が重く、これから先のことが心配だという声が寄せられています。

 そもそも私立の小中学校に子供が通う世帯では、義務教育でありながら、私立高校のように授業料の減免などがない状況で、その負担軽減が強く求められてきました。

目次

国による就学支援事業の実績をふまえ、その継続・拡充を

〇斉藤委員 国は二〇一七年から五年間、私立の小中学校に通う世帯収入が四百万円未満の世帯に対して、年間十万円の補助をする私立小中学校等就学支援実証事業を行いました。負担軽減策への第一歩として貴重な取組だったと思いますが、昨年度までのこの五年間の国の私立小中学校等就学支援実証事業の東京都での実績について伺います。

◯戸谷私学部長 本事業におけます受給者数でございますが、受給者数の実績は、平成二十九年度が三千七百八十三人、三十年度が一千八十二人、令和元年度が八百十四人、二年度が七百九十三人、三年度は七百八人となってございます。

 あわせて、補助実績額でございますが、平成二十九年度は三億七千六百九十八万二千円、三十年度は一億五百六十九万八千円、令和元年度は八千八十八万円、二年度が七千九百二十六万円、三年度は六千九百九十三万円でございました。

◯斉藤委員 初年度に全体で三千七百八十三名と、四千人近い児童生徒の世帯が補助を受けたということで、影響の大きい望まれた施策だったということではないでしょうか。

 初年度には、この小中を合わせて四千人近い児童生徒がこの制度を利用して、多くの世帯の支援につながったものと考えますが、二年目に利用者が大きく減っています。要因としてどんなことがあると考えられるか伺います。

◯戸谷私学部長 本事業は国が実施したものでございますけれども、事業二年目の平成三十年度の募集時に、国の方で、真に支援が必要な世帯を支援するというこの実証事業の趣旨から、所得要件の見直しや資産要件の追加等を行っているところでございます。

◯斉藤委員 ご答弁のとおり、二年目以降は資産保有額六百万円以下の世帯という、こういう条件も追加されて、真に必要なという言葉を使いながら、実質縮小するということで、補助を受けられる世帯が減少してしまったということです。

 世帯収入四百万円未満という条件も本当に厳しいものですが、それさえもさらに厳しくする要件で、効果も減少してしまうというのは当然のことだと思います。当事者の声を聞いていくということが大事ですが、国はこの補助と同時に、アンケート調査を実施していました。受給した世帯が私学を選択した理由や世帯の家計状況など、その調査結果について伺います。

◯戸谷私学部長 令和二年度の国によるアンケート調査結果では、私学を選択した理由といたしまして、特色のある教育を行っている、学習、進学面のサポートが充実している、校風や伝統に魅力を感じているなどの様々な理由により、私立学校が選択されているということが挙げられておりました。

 また、入学後に家計が急変した世帯の割合が半数を超えているということも挙げられてございます。

◯斉藤委員 入学後に家計が急変した世帯の割合が半数を超えると。正確には五五・一%に上ったというふうに伺っています。国から調査結果が都に通知されたのはこの二〇二〇年度の調査結果ということなので、コロナの影響によって家計が急変したという実態が数字として分かるものだと思います。

 私学を選択した理由としては、特色のある教育を行っているなど様々だということですけれども、まさにそれだけではない、本当に様々な理由があるものだと思います。特にこのアンケートでは、世帯年収が四百万円未満の世帯、つまり必ずしも家計にゆとりがあるわけではない世帯が私立学校を選んでいるという理由を聞いているというものなので、そこは丁寧に見ていく必要があると思います。

 国に対して、五年間を通した調査の結果を公表するように求めることを要望いたします。

 また、要件の厳しさはあるものの、この実証事業が終わってしまって残念、続けてほしかったという声がたくさん届けられています。国に対して、こうした支援の内容を拡充しながら、再開、継続をするよう求めることも強く要望いたします。

家計急変や家計状況のきびしい世帯へ、東京都からの支援の充実を

〇斉藤委員 一方、都でも家計急変に対して、私立小中学校が保護者の授業料の負担軽減を行った場合に、補助を行う取組を行ってきました。その過去五年間の実績について伺います。

◯戸谷私学部長 家計急変に係る授業料減免制度を整備している私立の小中学校は、平成二十九年度が百三十五校、三十年度が百三十九校、令和元年度は百三十五校、二年度も百三十五校、三年度は百五十六校でございました。

 また、そのうちこの制度を活用した実績につきましては、平成二十九年度は二十六校で三十四人、三十年度は二十八校で四十一人、令和元年度は二十三校で三十四人、二年度は十七校で十九人、三年度は四十六校で百十一人でございました。

◯斉藤委員 家計急変に係る授業料減免制度を整備している学校は、トータルで少しずつ増えているということが分かります。

 実際に補助を実施した私立小中学校は、二〇二一年度で四十六校と、前年度からは二・七倍に増えています。都から学校への補助は、前年に学校から保護者へ補助されていたものに対して行われるということなので、二〇二一年度の都からの補助は二〇二〇年度、つまりコロナの緊急事態宣言や自粛が行われた年の保護者への補助の分だということになり、その影響の大きさが分かります。

 大切な取組だと思いますが、しかし現在は、さらに物価高騰も追い打ちをかけ、子育て世帯の家計を圧迫し、物価高騰が長期化することも予想されています。

 九月三十日に発表された東京都生計分析調査報告では、働く世帯の実収入は、前年同月比で一世帯当たり一八%も減少しているということが分かっています。子育て世代にとって学費の負担が重くのしかかり、私の周りの子育て世代の方からも、毎日何を節約したらいいのかと、学費が重くて大変だという声が届けられています。

 コロナ禍の影響や現在の物価高騰による子育て世代の影響を都は、どう認識しているか、改めて伺います。

◯戸谷私学部長 東京都では、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う経済状況の悪化等の社会情勢を勘案して、家計急変に係る授業料減免制度を拡充したところでございます。

◯斉藤委員 家計急変に対する補助のお話ありましたけれども、これ二〇二〇年度から十分の十に引き上げ、さらに今年度からは、この補助率引上げを当分の間実施するということになったことは重要なことだと思います。

 一方で、家計急変ではなく家計状況による補助については、これは三分の二の補助のままになっています。家計状況によって支援を受けていた世帯は、もともと厳しい状況があった世帯だと考えられます。

 家計の急変ではなくても、もともと厳しい状況にあった世帯への支援が充実するように、家計状況による補助も学校の負担をなるべくなくしていくことが必要だと考えますが、いかがですか。

◯戸谷私学部長 生徒の家計状況または家計急変に対応した減免制度を設けている学校に対して、東京都は、その取組を支援しているところでございます。

◯斉藤委員 取組の支援をやっているというのはずっと分かっていることなんですけれども、もともと家計状況によって行う補助も、より多くの学校の負担での心配なく、多くの世帯に支援が届けられるように補助率の引上げなど、支援の拡充を求めるものです。

ICT機器の整備でも、義務教育段階での格差を生じさせない対応を

〇斉藤委員 次に、私立小中学校での一人一台の端末の整備について伺います。

 公立の小中学校では、コロナによる一斉休校を契機に、オンライン授業による学びの継続のために、一人一台のタブレット端末の整備が急速に進められました。

 一方で、私立学校ではなかなか大変だという声も聞いてきました。私立小中学校の児童生徒への一人一台の端末の整備状況について伺います。

◯戸谷私学部長 令和四年四月に実施した調査では、小学校では一・五人に一台、中学校では一・三人に一台というふうになってございます。

◯斉藤委員 配布していただきました要求資料にも、この私立学校におけるICT機器等の整備状況について示していただいていますが、まだ小学校でも中学校でも、一人一台までの整備にはなっていないということです。

 私立の学校については、オンライン授業をどのくらいやるのか、どのように活用するのかなどは、学校独自の取組が尊重されるものだというふうに思いますが、条件整備については、公立と同様に行政が役割を果たしていかなければならないと思います。

 私立高校への生徒の一人一台の端末については、生徒に対して、一台当たり六万円の補助が行われていますが、私立の小中学校の児童生徒への整備、こちらは学校に備えて、児童生徒に貸出しをするという形になりますけれども、都は、これにどのように関与しているのか伺います。

◯戸谷私学部長 私立学校デジタル教育環境整備費補助におきまして、端末や大型掲示装置などの整備に関する補助を実施してございまして、補助率は二分の一、補助上限額は令和三年度から一校一千万円に引き上げているところでございます。

◯斉藤委員 私立学校デジタル教育環境整備費補助、これを活用することが可能だと。そして、その補助上限額が七百五十万円だったのを昨年度から一千万円に引き上げたということです。

 しかし、活用可能な補助があるといっても、端末の購入を自治体が行う公立学校に比べて補助率が二分の一ということで、学校に残りの二分の一の負担が発生するため、なかなか手が出せないという状況があるということも聞いています。端末への国の補助は終了してしまいましたし、デジタル教育環境整備費補助、これは通信環境などの整備も含めてのものです。

 私立とはいえ、義務教育の児童生徒たちに教育環境の差が生じないように、都が役割を果たしていくことが求められていると思います。公立の小中学校との格差にならないように、端末の整備そのものに財政支援を行っていくことが必要だと思いますが、見解を伺います。

◯戸谷私学部長 私立学校デジタル教育環境整備費補助におきまして、必要な補助を行っているところでございます。

◯斉藤委員 今の補助で十分なんだと、そういう認識だということかと思いますけれども、学校現場や保護者の声をよく聞いて、補助率の引上げや上限額の拡大など、支援の拡充を検討していくように求めます。

 また、中高一貫校では、中学生のときから端末を個人で持てるような補助方式にしてほしいという要望も伺っています。検討課題としていただきたいと思います。

憲法26条にもとづく義務教育の無償化を、私立小中学校でも

〇斉藤委員 このテーマの最後に伺います。

 ここまで私立小中学校への支援について質問してきましたが、支援の拡充への根本的な理念として忘れてならないのは、憲法第二十六条で義務教育の無償化が掲げられていることです。私立は自己負担があって当たり前という意識が日本ではもう植え付けられているという現状があると思いますが、義務教育のはずの私立小中学校には、授業料の減免という支援もありません。

 憲法第二十六条がうたっている義務教育の無償化は、私立の小中学校に通う児童生徒たちにも当然当てはまる教育の在り方だと考えますが、都の見解を伺います。

◯戸谷私学部長 私立学校は、その建学の精神に基づきまして、個性的で特色ある教育を展開して、東京の公教育におきまして大変重要な役割を担っております。都としては、その重要性に鑑み、関係法令等にのっとりまして、私立学校の健全な発達に資する様々な支援を現在も行っているところでございます。

◯斉藤委員 先ほど我が党の里吉都議からも、この高等教育の無償化について取り上げましたけれども、国際的なこの位置づけについての話もされました。日本では学費が本当に異常に高くて、義務教育さえ大きく立ち遅れているという状況です。憲法に掲げられた教育の無償化は、決して法外なものではなく、世界的な流れと合致するものです。

 先ほど、今のご答弁で、この私立学校は重要な役割を果たしている、東京の公教育における私立学校の重要性に鑑みるという重要な認識を示していただきました。その認識にふさわしく、私立学校や保護者への負担軽減の拡充を進めていくことを強く求めます。

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