都営地下鉄での偽装請負疑惑、すみやかな是正を

都営地下鉄では、日常的に、偽装請負が起きていたのではないか。都交通局が厚労省から指導されたことをうけ、きちんと反省して改善するようただしました。そして根本的には、専門性の高い駅業務は直営化し、乗客のみなさんの安全を守れるようにする必要があると求めました(2023年3月14日、公営企業委員会)

目次

都交通局はどのような行政指導を受けたのか

〇斉藤委員 駅業務の委託についてです。

 都営地下鉄の駅業務の委託の契約内容が、労働者派遣法の違反のおそれがあるとして、厚労省の東京労働局から交通局が指導を受けた、指導票を受けたということが、昨日の夕方、メディア各社で一斉に報じられました。

 報道によれば、委託を受けている東京都営交通協力会のスタッフが、交通局の職員から日常的に指示があったとされ、実態は労働者派遣なのに、委託の形にして厳格な規制を免れる偽装請負だと訴えているというそういう記事になっておりました。

 この問題は、私が十一月の質疑で取り上げて、法を遵守した駅業務の在り方になっているのかと問題提起をしたものです。

 その後に労働局の調査が入り、指導を受けたということですが、駅業務の交通協力会への委託について、労働局から労働者派遣法の違反の疑いで指導票を受けたことについて、その指導の内容について伺います。

◯築田鉄軌道事業戦略担当部長 指導票は、調査の結果、法令違反の事実は確認されなかったが改善の必要があると判断された場合などに交付されるものでございます。

 一般財団法人東京都営交通協力会と締結しております駅業務の委託契約の共通仕様書の一部記載につきまして、発注者である交通局が、受託者である協力会に指揮命令できる余地が認められ、法令違反の事実は確認されませんでしたが、労働者派遣における派遣先とみなされるおそれがあることから、点検、確認を実施し、改善措置を講ずるよう指導を受けたところでございます。

◯斉藤委員 共通仕様書の一部について、交通局が交通協力会に指揮命令できる余地が認められたということです。

 報道でも、契約書の不備で、広範囲の指示が可能だったと労働局が判断したというふうにされています。

 私のところにも直接声が届いていますが、駅業務の中で、実際に交通局職員から、構内放送や車椅子利用の方の送迎など直接指示を受けているという話を伺っています。これでどうして委託といえるのかという疑問の声です。

 公の機関がこうした法律違反の疑い、これを指導されるようなことは許されることではないと思いますが、交通局は、今回の指導をどのように受け止めていますか。

◯築田鉄軌道事業戦略担当部長 交通局では、安全性やサービス水準を維持しつつ、経営の効率化を図るため、駅業務の委託を実施しているところでございます。

 今回の指導を受けたことから、疑念を持たれることのないよう適切に対応してまいります。

◯斉藤委員 疑念を持たれることのないように適切に対応するということは当然ですけれども、それがどのように実践できるのか、都民や労働者の方々に明らかにしていくということが求められているというふうに思います。そのためにも、今回どのような指導を受けたのか、公の立場として、都民に明らかにする必要があると思います。

 労働局から受けた指導に関する文書を自ら開示して明らかにしていただきたいと思いますが、いかがですか。

◯築田鉄軌道事業戦略担当部長 本件につきましては、積極的に公表するものではございませんが、指導票の内容は、先ほど答弁したとおりでございます。

 なお、仕様書の一部記載につきまして改善の必要があると判断されたものであり、法令違反の事実は確認されておりません。

◯斉藤委員 今ご答弁で、指導票の内容は答弁したとおりということなんですが、それで全てなのかどうかというのは分からないんですね。

 それから、法令違反ではなく、あくまでも疑いなんだということをご主張されたいのだと思いますが、そうした疑いから、指導を受けるということ自体、重大なことで、まともな反省がなければ、本当に改善できるのか、その姿勢が問われているというふうに思います。

緊急時だけでなく通常業務でも、問題が起こりうる

〇斉藤委員 この指導票をここで公表する考えはないということでしたので、こちらから聞くしかないのですけれども、先ほどのご答弁で、駅業務の委託契約の仕様書の一部について、交通局が協力会に指揮命令ができる余地が認められたということでした。

 その仕様書について、私たちは、昨年、開示請求をしていまして、この手元に持っている、これ仕様書なんですけれども、これを私も中身を拝見いたしました。(資料を示す)交通局が駅業務の委託先の東京都営交通協力会に出している駅業務の委託共通仕様書、特記仕様書というものもありますが、これがあります。

 その中で、異常時、そして緊急時の取扱いというのが定められていて、事故、災害が発生した場合または発生が予想される場合には、旅客の安全を最優先とし、受託者は委託者と協力して対処することとあります。つまり、こうしたケースの場合は、直接的なやり取りが委託者と受託者で発生しても構わないと、こういうものだと思うんですけれども、具体的な事例が並んでいる中で、その中で、その他事故が発生したときという記載があります。

 具体的には、どのようなケースが当てはまるのか伺います。

◯築田鉄軌道事業戦略担当部長 例えば、数年前、他社で発生しました鉄道内における刺傷や放火事件のような通常起こり得ない人命に関わる緊急の事態を想定しております。

◯斉藤委員 今のご答弁は、非常に分かりやすい、ある意味典型的な事故、異常の状況、ケースをお答えいただいたというふうに思うんですが、しかし、その他事故が発生したときという文言になっているということなので、そういうことだけに限定されず、例えば、窓口業務で苦情を受けて収拾がつかないときなどに、交通局職員である助役に直接指示や判断を仰ぐとか、こういう通常業務の範囲内で起こり得ることも含まれる余地がある、そこが、つまり指摘された、交通局が協力会に指揮命令できる余地が認められるということ、こういう指摘になったのではないかというふうに思います。

 そもそも駅業務の指揮命令系統というのは、協力会のスタッフへは協力会が行うというものが通常の正しい委託の在り方ですけれども、協力会は、九時から五時の営業時間しかいないために、二十四時間対応の駅業務には対応ができません。協力会のスタッフの中に局職員との連絡を担う責任者を定めているというようなことのようなんですけれども、その方々も、いないときもあれば役割が曖昧になっているということ、現場の方から聞いています。こうしたことでは、確かに労働者派遣の実態になっているのではないか、こういうことは明らかではないかと思います。

 今後に向けてですけれども、今回の指導票を受けて、交通局はどのような改善をするのか伺います。

◯築田鉄軌道事業戦略担当部長 現在、指導内容に従いまして、点検、確認を行っているところでございます。

◯斉藤委員 指導内容に従ってということなんですけれども、今のままでは、どんな指摘を受けたのか、都民には明白には分からないままです。交通局は、どんな指摘を受けたのか、何点の指摘があったのか、こういうことも含めて、改めて明らかにする必要があるということを重ねて強く求めます。

労働条件や賃金をめぐる指導・勧告も

〇斉藤委員 そして、今回は、同じ内容で東京都営交通協力会も労働局から是正指導を受け、さらに、協力会は、亀戸労働基準監督署から是正勧告も受けたと報道されていますが、それぞれ指摘を受けた法令違反の内容について伺います。

◯豊田総務部長 一般財団法人東京都営交通協力会からは、労働者を募集する際に、労働条件をホームページへの掲載や口頭により示していたものの、書面で交付していないことについて、東京労働局から是正指導を受けたと聞いております。

 また、一部事業所において、時間外労働に対する割増し賃金が支払われていない例があったことや、点呼記録に出退勤の時間が記録されていなかったことについて、労働基準監督署から是正勧告を受けたとも聞いております。

 なお、これらについては、速やかに是正を図っていると聞いております。

◯斉藤委員 東京都営交通協力会は、労働者派遣法の違反の疑いのほか、労働条件について労働者に書面で交付していないことで、職業安定法の違反、これを労働局から指摘をされていて、是正指導を受けたということ。さらに、労働基準監督署からは、出退勤の記録を取っていないということ、それから、時間外労働に対する割増し賃金が支払われていない例があった、こういうことで労働基準法の違反も指摘をされたと。是正勧告を受けているということです。

 東京都の公共交通の中心を担う都営地下鉄、これを支える現場の方々が、このようなずさんな体制の中で働かざるを得ない状況に置かれていたということに対して、交通局は無関係なことではないというふうに思います。

 協力会は、交通局の事業協力団体です。交通局自身の襟を正していくということと同時に、働く方々の労働環境の改善につながるように、交通協力会の法令の遵守を交通局としても働きかけていく必要があると考えますが、いかがですか。

◯豊田総務部長 交通局では、安全性やサービス水準を維持しつつ、経営の効率化を図るため、駅業務の委託を実施しているところでございます。

 今回指導を受けたことから、疑念を持たれることのないよう適切に対応いたします。

 また、事業協力団体は、自らの責任と判断の下、事業運営を行うものであり、従業員の労務管理については、法令等に基づき、東京都営交通協力会がその責任において適切に対応するものと認識しております。

 なお、本件については、情報提供があった際に、既に協力会に対し、改めて法令等を遵守するよう求めており、協力会は是正を図っているところであると聞いております。

◯斉藤委員 法令を遵守するようにと既に求めたということですけれども、今後も、都営交通を支えている現場で働く皆さんがどういう状況に置かれているのか、きちんと目を配っていただくように求めます。

 そして、根本的には、専門性の高い駅業務、また、運転に関わる業務にも近い役割を担っている駅業務を委託で行わせるということには大きな矛盾もあるというふうに思っています。前回の質疑でも取り上げましたが、民間の鉄道事業者でも、駅業務の委託は法令を遵守した形で行うのは難しいということから、会社の直接採用に切り替えているという流れがあります。

 民間事業者が、法令遵守のために変わっているという中で、公の機関である交通局が、偽装請負になりかねない状況を続けるということは許されませんし、見直しが必要なことだというふうに思います。

 今回の指摘を踏まえて、駅業務の直営化を進めていく、こういうことも検討していくことを強く求めて、質問を終わります。

【参考】委託の駅職員が、日常的に都職員(駅助役や車掌)から指示を受けざるを得ない状況

※ 2022年11月1日、公営企業委員会での質疑から

〇斉藤委員 最後に、都営地下鉄の駅業務の委託について伺います。

 都営地下鉄の駅業務は、乗客の方々とその運行の安全を守る大切な業務です。駅で働く皆さんは、交通局の職員であれ、委託の駅係員さんであれ、都営地下鉄を支える一員として、日々の業務に尽力していただいていることと思います。

 この大切な駅業務について伺っていきたいと思いますが、この都営地下鉄の駅業務について、現在では五十九の駅が東京都営交通協力会に委託されています。

 先日の公営企業決算において、我が党の原純子都議の質疑から、委託駅においては、駅長に当たる助役は交通局職員、駅係員は東京都営交通協力会の方々だと伺っています。

 駅業務の委託内容は、窓口案内業務、駅務機器取扱業務、ホーム監視業務など、駅係員の業務全般という内容を伺っていますけれども、助役の業務内容はどういうものか伺います。

◯築田鉄軌道事業戦略担当部長 助役は当該駅の責任者でございまして、監督業務を行うほか、終電の出発指示を行うとともに、異常時、緊急時におきましては、委託職員に指示を出し、対応に当たっております。

◯斉藤委員 異常時、緊急時は委託職員に指示を出して対応に当たると。平常時は駅係員さんの仕事の監督業務を行うということですね。

 委託していない駅は、どのような理由で委託していないのか伺います。

◯築田鉄軌道事業戦略担当部長 常時、列車の折り返しが発生する駅や駅務管区が所在する駅などにつきましては直営駅としております。

◯斉藤委員 常時、列車の折り返しが発生する駅は直営の駅としていると。また、先ほどのご答弁では、助役は終電の出発指示を行うということでした。

 つまり、ちょっと確認したいのですけれども、電車の運行に関わる仕事をしている助役は交通局職員であり、また、電車の運行に関わる仕事をする駅は局の直営でやっているということでよろしいでしょうか。

◯築田鉄軌道事業戦略担当部長 直営の駅におきましては、委員おっしゃったとおり、運転取扱業務が発生する駅につきましては直営の駅にしてございます。

◯斉藤委員 ありがとうございます。

 運行に関わる業務が発生する駅については直営でやっているというご答弁で、電車の運行に関わる仕事ですとか、指令所へ連絡や指示などが行えるというのは、鉄道会社、つまり交通局の職員であるというふうに定められていると伺っています。

 伺いますけれども、委託駅の職員の構成は、駅の責任者である助役は交通局職員、そして、それ以外の駅係員は委託の職員だということですけれども、この助役の交通局職員は、委託駅に一人の配置ということでしょうか。

◯築田鉄軌道事業戦略担当部長 委託駅には常時一名の助役を配置しております。

◯斉藤委員 委託駅には常時一名の助役を配置しているということですが、ちょっとこれ、この点詳しく伺いたいんですけれども、助役の方が休憩を取るとき、あるいは、業務の中で遺失物を管理駅に持っていくというようなときは、助役以外の駅係員さんで駅の業務を行っているということでよろしいでしょうか。

◯築田鉄軌道事業戦略担当部長 委員おっしゃるとおりでございます。

◯斉藤委員 そのとおりだというご答弁でした。

 ちょっともう一つ伺いたいんですけれども、窓口案内業務、駅務機器取扱業務、そして、ホーム監視業務など駅業務を行う駅係員さんには、時間に合わせて動くことが必要なので、作業ダイヤというのがあって、それに合わせて、業務に支障がないように休憩を取るということも伺いました。

 助役の方にもこの作業ダイヤはありますか。助役の方の作業ダイヤを作成されているか伺います。

◯築田鉄軌道事業戦略担当部長 委託駅における助役につきましては、ダイヤはございません。

◯斉藤委員 ダイヤを作っていないというご答弁でした。そういうことですね。

 ちょっと業務の内容について伺いますが、ホーム監視を行う委託の駅係員は、例えば、ホームドアが開かないなどの事象が発生した場合に、どのように運転士や車掌に連絡を取るのか伺います。

◯築田鉄軌道事業戦略担当部長 委託駅におきましては、ホーム監視中の係員が列車到着時にホームドアが開かないなどの事象を発見した場合には、携帯している業務用PHSで、駅長である助役へ速やかに報告するとともに、当該列車の運転士や車掌へ直接状況を伝えることとしております。

◯斉藤委員 助役への報告と、列車の運転士や車掌へ直接状況を伝えるということですね。

 ちょっと同様に伺いたいんですけれども、例えば車椅子の方を乗車させるときも、同様に駅係員が誘導し、完了したら、列車の運転士や車掌へ直接伝えるということでよろしいでしょうか。

◯築田鉄軌道事業戦略担当部長 理事おっしゃるとおり、係員が対応することになっております。

◯斉藤委員 駅係員が対応することになっていると。

 ちょっと再確認なんですが、完了した後に、先ほどのホームドアの件もそうですが、車椅子の対応のときもですけれども、完了したとき、その発車の連絡の合図ということも、駅係員の方がやっていらっしゃるということですかね。

◯築田鉄軌道事業戦略担当部長 実際に実施をした係員が対応するということ、対応した場合には、助役に報告をするということになっております。

◯斉藤委員 実際に対応した係員が行うということで、それをまた助役に報告するということですね。

 すみません、先ほど伺った作業ダイヤの件なんですけれども、これで最後になりますが、助役の方には作業ダイヤは作成していないということだったんですが、これはなぜなんでしょうか。

◯築田鉄軌道事業戦略担当部長 委託駅におきましては、一日の作業等が錯綜いたしますので、決まったダイヤは定めず、助役は業務に就いております。

◯斉藤委員 助役の方には業務が錯綜しているため作っていないということなんですが、これ、労働環境としても休憩が定められていないということだったりというのはどうなのかなということを思うんですけれども、委託の駅係員の方からお話を伺っているんですけれども、日常の指示、例えばPASMOや記念切符などの扱いなど、助役から通知の紙を受け取って仕事をしているということなんです。パソコンなどの端末も自分たちにはないために、協力会からの連絡を受けるという手段がなくて、また、協力会のステーション本部の営業時間は大体九時から五時というふうになっているので、それ以外の時間帯は人が不在になっていて、つまり、日常的に助役さんから仕事のお願いや指示を受けて仕事を行ったり、助役さんがいないときには、運転士や車掌さんももちろんですけれども、指令に連絡を行って、列車の運行にも関わっているということも伺ってまいりました。困ったことがあった際には、協力会の本部に聞いても分からないので、同じ現場にいる助役さんに相談するということでした。当然のことだというふうに思うんですけれども、しかし、助役や運転士や車掌は交通局の職員、そして、駅係員は委託業者である協力会の職員です。本来であれば、委託の駅係員が業務上の判断を仰ぐようなことは、交通協力会に対して行うべきものです。

 実際に働いている方から、次のような言葉が寄せられました。緊急時の対応を見よう見まねで対応させられ、十分な訓練をしていないので、いつも不安です、そもそも運転に関する業務はないと定められていると聞いています、委託の職員しか業務していない時間帯もあり、すごく不安ですということです。

 駅業務の委託を巡っては、多くの民間鉄道会社が、法令を守った業務が行えないために、委託をやめて、そして、鉄道会社が直接雇用に切り替える動きが進んできました。阪急電鉄では委託をやめて、直接雇用に切り替え、東急や京急でも駅係員について直接雇用を行っているということです。

 交通局でも、今の駅業務の在り方が法に照らして適切なのか、働く人たちの思いを踏みにじっていないか、考えなければならないのではないでしょうか。問題提起をさせていただき、質問を終わります。

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