近年、通信制高校へのニーズが高まり、国が構造改革特区で株式会社による設置を認めてから、質の保たれていない施設が急増しています。とくに、東京ではその傾向が顕著であり、東京都として責任をはたすよう求めました。(2024年3月19日、文教委員会)
◯斉藤委員 まず、通信制高校についてです。
通信制高校は、かつては働きながら通う人が多かった時代から、今では、不登校経験のある生徒や外国にルーツのある生徒など、多様な生徒が選択する進学先の一つになっています。
二〇〇三年に国が株式会社による学校開設を認めてから急増し、生徒数も右肩上がりで、文科省によれば、二〇二三年度の速報値で、生徒数は約二十六万人に上ります。
不登校などの生徒たちの進学先として私立の通信高校が急増する一方で、不適切な教育活動などが多く指摘される中、国は、昨年十一月に、都道府県が定める通信制高等学校の認可基準の標準例を策定し、全国の私学行政の担当所管に通知を出しました。
通信制高校の質を保つため、東京都は認可基準を定めてきたか
〇斉藤委員 まず、都が認可している通信制高校の数と全体の生徒数について伺います。
◯戸谷私学部長 都が認可しております通信制高等学校は八校ございます。
生徒数につきましては、令和五年五月一日現在、八校全体で約九千二百人でございます。
◯斉藤委員 都が認可している私立の通信制は、例えばNHK学園高等学校や科学技術学園高等学校、また東海大学付属望星高等学校など、老舗の学校が多いというふうに伺っていますが、生徒数は、八校全部で約九千二百人だということです。
文科省はこれまで、認可基準をまともに定めてこなかった中で、通信制高校をめぐっては、二〇一五年に、株式会社立の通信制高校で就学支援金の不正受給事件が発覚したり、教員免許がない人が指導をしていたり、また、百人を超える生徒に教員が一人で面接指導していたりと、一部で不適切な教育内容があることが報じられてきました。
設置認可を担う都道府県でも、報道によれば、三分の一は認可基準を設けていなかったということですが、都は、設置基準などを設けているのか、また、教育の質の確保のために、これまでにどのように対応してきたのか、伺います。
◯戸谷私学部長 都は、東京都私立高等学校通信制課程に係る認可基準を定めておりまして、通信制高校を設置する場合の生徒の教育環境を確保しているところでございます。
具体的には、通信制高校においても、一定程度の対面授業や面接指導等が必要であることから、一人当たりの教室面積を規定しているほか、実験、実習のための特別教室や、運動場等の体育施設を設置することを規定してございます。
また、補習等の実施の仕方に合わせまして、基準以上の教職員を置くことも規定してございます。
◯斉藤委員 つまり、東京都では、都独自の基準を定めて対応してきたということです。
今までは、義務教育を終えた十代の生徒たちが多く通う中で、教育の質の確保がますます重要になっています。教員の配置も、養護教諭を置くことを努力義務にしているなど、よりよい教育環境のためには重要なことだというふうに思います。
規制緩和で、都外に本拠地があるサテライト施設が、都内で急増
〇斉藤委員 しかし、国が構造改革特区で株式会社による学校開設を認めてから私立の通信制高校が増え、特に、本校舎の所在地以外で直接指導を行うサテライト施設が急増しています。
都外に本部を置く学校は、その道府県が所轄庁になり、都の手が直接及ばなくなるのがこのサテライト施設ですけれども、都は、都内にサテライト施設が幾つあるのか、把握していますか。
◯戸谷私学部長 令和五年度に各都道府県に対し示された国のデータによりますと、他の道府県が認可した通信制高等学校が設置する都内のサテライト施設は四百三十か所ございます。
◯斉藤委員 今年度の国のデータによると、都内のサテライト施設は四百三十あるということです。その一覧を見ると、北海道や茨城、沖縄に本拠地を置く学校のサテライト施設が都内に多くあるのが分かります。
中には、雑居ビルの一室がサテライト施設になっていると見受けられるところも多く、十分な教育環境が確保されているのか、心配です。
一つの高校で都内に五十以上のサテライト施設を持っている学校もあり、地方に本拠地を置きながら、人口の多い東京都や都市部が、大きな市場として生徒を集める場になっているんじゃないかということも懸念されます。
サテライト施設でも質が確保されるように、東京都として努力を
〇斉藤委員 昨年、二〇二三年十一月の文科省の通知では、サテライト施設を設ける場合には、設置先の都道府県の意向を考慮することを求めています。
都は、都外に本校舎を置く事業者が都内へサテライト施設の設置を行う場合に、報告をさせ、教育の質の担保も確保していく責任があると思いますが、どのように対応していきますか。
◯戸谷私学部長 国の通知によりますと、学校がサテライト施設を他の都道府県に設置する場合は、サテライト施設所在地の都道府県が定める認可基準も参考にすることとされております。
都といたしましては、新たにサテライト施設を設置する学校や、その所轄庁である道府県から問合せがあった場合には、都の認可基準について改めて明確に伝え、留意するよう、引き続き求めてまいります。
◯斉藤委員 他の道府県に本校舎がある通信制高校が都内にサテライト施設を設置する場合は、今後は、その道府県から東京都に意向を確認することが前提になりますが、都として、都内の子供たちの教育環境の確保を行うためにも、都の認可基準を守らせるなど、徹底していただきたいというふうに思います。
また、道府県から都に問合せがない場合や、サテライト施設が都に設置されたことを道府県側も知らないということがあると聞いています。
通信制高校に通う生徒数は、高校生全体の一割弱を占めるといわれています。
都として教育の質の保証を行っていくためにも、国や他県とも連携しながら、施設数や教育環境の実態などをつかんでいく必要があると思いますが、いかがですか。
◯戸谷私学部長 通信制高校の在り方につきましては、制度を所管する国が責任を持って構築するものであり、現在、国が様々な検討を行ってございます。
なお、国の通知によりますと、学校がサテライト施設を他の都道府県に設置する場合には、サテライト施設所在地の都道府県が定める認可基準も参考にして、本校の所轄庁の認可を受けるとともに、適切な維持管理にも努めるべきであることが記載されております。
都に照会があった場合には、都の認可基準を伝え、留意するよう求めているところでございます。
◯斉藤委員 ご答弁のとおり、このサテライト施設に、都の認可基準を守るよう求めていくことは重要なことだというふうに思います。新しく設置する施設だけでなく、現在既にある施設も、できる限り基準を満たした施設となるよう、都としても対応していってほしいというふうに思います。
私立の通信制高校やその他のサテライト施設では、子供に寄り添い、献身的に教育を行っているところもあります。そうした取組は大切にしながら、その教育環境の向上を図っていただきたいというふうに思います。
同時に、私立の通信制のサテライト校に通う不登校経験のある生徒たちなど、多様な背景を持つ都内の子供たちが増えていることには、今の公教育の在り方が問われる問題だというふうにも思っています。この十年間で、小学校の不登校は五・五倍、中学校も二・五倍にもなっています。学校にグローバル人材の育成などが押しつけられて、本来の姿である、子供の学びを支え、人格の形成を促す学校ではなくなってきていることなどが背景にあると考えます。
私学部や都教委をはじめ、全庁的に、この小中学校の教育の在り方について真剣に考えていただきたいというふうに思います。
通信制高校については、都として、国や道府県との連携を強めて、実態把握と、教育環境の質の確保のための取組を強化していくことを改めて求めておきます。