多摩地域の住民の血液から「健康リスクが生じる」とされる濃度のPFASが検出されたにもかかわらず、東京都はまともな対策をとらず、水道水の「安全は確保されている」と言い続けています。その都民を欺く態度を厳しくただし、少しでも安全な水を供給するよう迫りました。(2023年10月27日、公営企業会計決算特別委員会)
〇斉藤委員 次に、PFAS汚染について伺います。
有害性が指摘されている有機フッ素化合物、PFASが、多摩地域の水源井戸で高い値で検出されていること、また、市民の血液検査の結果、血中から、国が実施した検査よりも高い値で検出されているということで、都民に不安が広がっています。
住民による自主的な血液検査に取り組んでいる市民団体が、六月に、六百五十人分の分析の最終結果を発表しました。アメリカの学術機関、アカデミーは、七市のPFASの合計で、血中濃度が一リットル当たり二十ナノグラムを超えると健康リスクが生じるとの指標値を示していますが、多摩地域全体の三か所の平均値で、この指標値を上回る実態が明らかになりました。
米国の指標値を個人で超えていた人は二十自治体の三百三十五人と、参加者の過半数に上ります。都民の健康を守るために、少しでも安全な水を供給するための対策が、今切実に求められています。その視点から伺っていきます。
暫定基準にてらして水道水の現状は?
〇斉藤委員 まず、二〇二二年度、令和四年度末時点で取水停止にしている水源井戸の総数と、昨年度に停止した水源井戸について、その停止に至った経緯を伺います。
◯大友技術調整担当部長 令和四年度においては、府中市内の幸町給水所の水源である六本の井戸を停止しており、年度末時点でPFOS及びPFOAを理由として停止している水源井戸の本数は、合計四十本でございます。
四年度に停止した幸町給水所の水源井戸については、平成二十八年度に施設の更新工事のために運用を停止したものですが、検査の結果、運用を再開すると、給水栓で国が定めた暫定目標値を超過するおそれがあったことから、工事完了後も引き続き運用停止したものでございます。
◯斉藤委員 二〇二二年度、令和四年度末時点で取水停止にしている水源井戸は四十本、そのうち昨年度に停止をしたのは、府中市の幸町給水所の六本の井戸で、更新工事でもともと止められていたものの、検査で、給水栓において国の暫定目標値を超えるおそれがあったため、そのまま運用停止にしているというご答弁でした。
さらに伺います。
二〇二二年度、令和四年度の時点で稼働している水源井戸の中で、PFOSとPFOAの合計と、PFHxSの値のそれぞれについて、国の暫定基準の一リットル当たり五十ナノグラムを超えている箇所は幾つありますか。
◯大友技術調整担当部長 令和四年度末時点で稼働している水源井戸のうち、PFOS及びPFOAの合計が一リットル当たり五十ナノグラムを超えている井戸は六本でございます。
PFHxSに国の暫定目標値は設定されておりませんが、一リットル当たり五十ナノグラムを超えている水源井戸は五本でございます。
なお、水源井戸での検出状況にかかわらず、給水栓におけるPFOS及びPFOAの値は暫定目標値を大幅に下回っているため、水道水の安全性は確保されております。
◯斉藤委員 PFOS及びPFOAの合計が一リットル当たり五十ナノグラムを超えている井戸は六本、そして、PFHxSについては国の暫定目標値は設定されていませんが、一リットル当たり五十ナノグラムを超えている水源井戸は五本あるということです。
さらに、蛇口においては五十ナノグラムを下回っているため、水道水の安全性は確保されているというご答弁でした。
日本共産党都議団はこれまで、対策の強化を求める住民の声を繰り返し届けてきましたが、たとえ蛇口の水の値が五十ナノグラム以下でも、少しでも体内に取り込むことを避けるために、高い値が出ている水源井戸の運用は止めてほしいという住民の声も届けてきました。
この声についてどう認識しているか、改めて伺います。
◯大友技術調整担当部長 暫定目標値は、令和二年当時における安全側に立った考え方を基に、健康に影響がない値として国が定めたものでございます。
当局では、給水栓において暫定目標値を超過するおそれのある場合は、原因となっている濃度の高い水源井戸を直ちに停止しております。この対応により、給水栓における値は暫定目標値を大幅に下回っており、水道水の安全性は確保されております。
引き続き、給水栓において水質基準などを遵守して、安全な水道水の供給を図ってまいります。
安全というが、PFASの人体への影響をどう認識しているのか
◯斉藤委員 PFASが人体に与える影響について、発がん性のほか、妊娠高血圧症や胎児の低体重、そして、免疫力の低下などの有害性が海外での知見から指摘されています。アメリカの学術機関は、PFASの血中濃度が高いほど、これらの健康リスクにつながるおそれがあるとして注意を呼びかけています。
水道局では、PFASが人体に及ぼす影響についてどう認識しているのか、改めて伺います。
◯橋本浄水部長特命担当部長兼務 現在、国におきまして、有機フッ素化合物に関する専門家会議を設置し、最新の知見や検出状況の収集、評価を行い、科学的根拠に基づく総合的な対応を検討しているところでございます。
当局では、関係局と連携し、科学的根拠に基づいた知見を早急に示すよう、国に対し緊急要望を行っているところであり、引き続き、国の動向を注視してまいります。
◯斉藤委員 ちょっと確認をしたいんですけれども、つまり、今のは、人体の影響については、国が科学的根拠に基づいた知見を示しておらず、水道局としては分からない、どの値なら人体に影響があるのかどうかも分からないという状況でしょうか。
◯橋本浄水部長特命担当部長兼務 繰り返しになりますが、現在、国におきまして、有機フッ素化合物に関する専門家会議を設置し、最新の知見や検出状況の収集、評価を行い、科学的根拠に基づく総合的な対応を検討しているところであります。
当局では、関係局と連携し、引き続き、国の動向を注視してまいります。
◯斉藤委員 私が聞いたのは、今、人体への影響について、これは分からないという現状でいいかということを聞きました。どうですか。
◯橋本浄水部長特命担当部長兼務 繰り返しになりますが、当局では、関係局と連携しまして、科学的根拠に基づいた知見を早期に示すよう、国に対し緊急要望を行っておりまして、引き続き、国の動向を注視してまいります。
以上でございます。
◯斉藤委員 人体への影響についての明言を避けておられるんですけれども、国においてその知見がないと、ないから示してほしいということを求めているということですね。
だから、この影響について、どの程度なら影響があるのかというのは分からないという状況だというふうに思うんですけれども、こうした健康への影響について分からない、答弁されない、そういう状況でありながら、先ほど来、ご答弁の中で、水道水の安全性は確保されている、このように繰り返されています。これは大きく矛盾していませんか。認識を伺います。
◯橋本浄水部長特命担当部長兼務 国におきましては、国内において、PFOS、PFOAの摂取が主たる要因と見られる個人の健康被害が発生したという事例は確認されていないとしております。また、どの程度の量が体に入ると影響が出るかについては、いまだ確定的な知見はないとしております。
繰り返しになりますが、現在、国において、有機フッ素化合物に関する専門家会議を設置し、最新の知見や検出状況の収集、評価を行い、科学的根拠に基づく総合的な対応を検討しているところでございます。
当局としましては、引き続き、関係局と連携し、国の動向を注視してまいります。
◯斉藤委員 だから、今の国の立場でも、人体に及ぼす影響というのは確認されていないと、分からないということですね。
そういう現状でありながら、安全性は確保されているというふうに水道局が断言する、この根拠は何ですか。
◯橋本浄水部長特命担当部長兼務 当局では、給水栓における水質基準など、国が定める水質基準等を遵守することにより、水道水の安全性を確保しているというふうに考えてございます。
◯斉藤委員 繰り返しご答弁いただいていますけれども、要するに、国は、人体に与える影響について分からず、当然、水道局としてもそれが分からないと、つかんでいるわけではないと。そういう中で、なぜ安全性を確保されているという答弁が出てくるのか、私、本当にこれ疑問です。
本当に、ダブルスタンダードといいますか、あまりにひどい姿勢なんじゃないかなというふうに思います。こういう言葉で都民に説明をするというのは、都民を欺く説明だというふうにいわざるを得ません。
かつては現在より厳しい基準で取水停止に
〇斉藤委員 もう一点伺います。
運用を停止している水源井戸について、令和四年度に水質検査を行った結果を水道局は公表しています。
この中で、最初に井戸の停止を行ったのは、二〇一九年、令和元年六月だということ。このときに提出されたのは、府中市の府中武蔵台浄水所の三つの井戸と、国分寺市の東恋ヶ窪配水所の井戸の一つ、そして、国立市の国立中給水所の井戸の一つで、合わせて五か所の水源井戸を止めていることが分かります。
このときに井戸を停止する判断の基準、目安としていた値について伺います。
◯大友技術調整担当部長 令和元年五月に、国が、国会にて、PFOS及びPFOAに関する目標値設定の検討を表明したことなどから、当局では、令和元年六月に、独自の取組として、当時、海外で最も厳しい目標値であったアメリカ環境保護庁の健康勧告値、一リットル当たり七十ナノグラムを参考にして管理を行ったものでございます。
◯斉藤委員 アメリカの環境保護庁の健康勧告値を参考にしていたと。
今、そのアメリカはもっと進んでいて、この環境保護庁は、PFOSは一リットル当たり〇・〇二ナノグラム、そして、PFOAは〇・〇〇四ナノグラムを基準として示しています。
なるべく摂取しないということが大切なんだということですけれども、二〇一九年の時点では、アメリカの健康勧告値は、今ご答弁でありましたとおり、一リットル当たり七十ナノグラムというふうにされていました。
水道局では当時、その半分の三十五ナノグラムを目安として、水源の井戸から取水停止の判断の目安にしていたということが、朝日新聞の記者の諸永裕司さんの著書、こちらですね、消された水汚染に記されています。
恐らく、理事者の皆さんはよくご存じのものではないかと思うんですが、この朝日新聞の記者さんが、繰り返し水道局の方とのやり取りの中を詳しくここに書いていらっしゃるんですね。
この当時、その三十五ナノの目安についてですけれども、少しでも都民の方々が安心できるように判断しましたという当時の課長さんの言葉もここに掲載されています。
この当時のアメリカの七十ナノグラムの半分での値を目安として対応していたということは間違いないでしょうか。
◯大友技術調整担当部長 間違いございません。
◯斉藤委員 ご答弁ありがとうございます。
私も、この間のお話の中で、当時は、アメリカの健康勧告値七十ナノの半分の三十五ナノグラムを目安として使っていたということを伺っていまして、昨年の質疑の中でも、そのことは述べさせていただいています。
日本人は体が小さいからアメリカの基準の半分を目安にしていたと。当時、沖縄の企業局も同様の対応をしているというふうに、この本の中にも記載をされています。明確な基準がなくても、まだ定められていなくても、なるべく安全な方向で対策を行っていたということは重要なことだと思います。
そして同時に、今に照らして見てみますと、当時目安としていた三十五ナノグラムというのは、現在の国の暫定目標値よりも厳しい基準です。水道局の過去の対応に照らしても、今の暫定目標値の五十ナノグラム以下なら安全というふうに断言して、それ以上の対策を行わないというのは、私は矛盾しているというふうに思います。
根拠がない下で、安全性は確保されている、このような説明を行うのは、あまりに無責任だといわなければなりません。体内に蓄積されるPFASをなるべく減らすために、PFASが検出されている水源井戸、特に高い値で検出されている水源井戸は取水停止を行う、また、活性炭によるPFASの除去の対策を行うなど、必要な対策を取ることを強く求めます。