東京の住宅問題、増える重層長屋

11月下旬、東京都内に増えているという「重層長屋」の視察に行ってきました。

 

「重層長屋」。初めて聞く方も多いかもしれません。一階建ての戸建て住宅が縦に積み重なったもので、各戸への通路や階段が独立している建物のこと重層長屋といいます。建築基準法や東京都の建築安全条例では、長屋の定義があいまいで、通常、マンションなどの「共同住宅」であれば法律が厳しく適用されるところ、「長屋」は戸建てと同等とされ、規制はゆるくなる。それを利用して、安全確保が不十分でも、狭い敷地に部屋をいくつもつくって賃貸にする「重層長屋」が急増しています。

 

この日、視察した足立区内の重層長屋は、一見すると、トランクルームか、と思うような構造で、しかも奥が袋小路で、手前で火災があった場合には奥の人には逃げ場がないようなつくりになっているものもありました。

 

元々は一軒家だったという狭い敷地に、12人分の部屋に分けられた長屋もありました。間口が狭く、通路のように長い路地状の敷地部分の奥のスペース、いわゆる「路地状敷地」に64人分の長屋が造られようとしている現場では、住民の反対運動が起きています。路地状敷地の建物は奥まったところにあり、火災時などの避難に支障が多いために、東京都建築安全条例ではマンションなどの共同住宅を建てることを禁じられていますが、長屋は共同住宅として定義されていないために、建築が許されてしまっています。

 

この現場では、袋小路になっている敷地から道路に出るには、現況幅1.5メートルしかない細い通路(2項道路)しかありません。長屋に住む人にとっても、近所の住民にとっても危険だとして、反対運動が起こるのも当然だと思います。規制緩和や法の抜け道を使った危険な建築を放っておくわけにはいきません。

 

そして、つくづく痛感するのが、安心して暮らせる住まいの政策が都として実現できていないこと。いま非正規雇用が広がる中で、安心して暮らせる住まいの確保が難しい若者、あるいは負担ばかりを押し付けられて住まいに困難を抱えている高齢者も多い中で、東京都の住宅政策はあまりに貧弱です。17年間、新設増設がなく、入居基準もきびしい都営住宅について、日本共産党は一貫して、政策を拡充していくべきと主張しています。安全な民間の空き家の借り上げやURとの連携も提案しています。

 

公的責任を投げだして、こうした危険な住宅ビジネスを広げていくようなことではなく、安心して暮らせる東京を実現するために、今こそ都がその役割を発揮するべきではないでしょうか。