※ 2024年9月17日、文教委員会
性犯罪のなかでも再犯率がもっとも高い
○斉藤委員 私からは、陳情の第三の要望に関わって、加害者の更生プログラム等を実施する専門機関へつなぐことへの重要性について伺っていきたいと思います。
まず、痴漢の再犯を防止する取組のこの重要性や効果についてですが、先ほどのご答弁で、痴漢も含めて犯罪の繰り返しをなくしていく再犯防止の取組は重要という認識でした。
もう一点、伺いますけれども、痴漢は同じ加害者が繰り返す、つまり再犯率が高い犯罪だという認識はありますか。
○勝見治安対策担当部長事業推進担当部長兼務 平成二十七年版の犯罪白書によりますと、性犯罪者の類型別で、痴漢につきまして再犯率が高いという一つのデータがございます。
○斉藤委員 二〇一五年版の法務省の犯罪白書のことでお答えをいただきました。(勝見治安対策担当部長事業推進担当部長兼務発言を求む)質問していませんが。
○勝見治安対策担当部長事業推進担当部長兼務 平成二十七年版の犯罪白書でございます。
○斉藤委員 つまり二〇一五年版の法務省の犯罪白書、そこから再犯率が高いというデータが示されていると。まさにそのとおりでして、痴漢の再犯率は、このときの犯罪白書によりますと三六・七%と、性犯罪の中でも高いということが示されています。
毎日の通勤や通学に使う電車の中での被害が多く、最も身近な性犯罪でありながら、これまで軽視されてきた中で、加害行為が野放しになってきたという背景があります。
加害者を治療するプログラムによって、再犯率は激減
〇斉藤委員 陳情の提出者であります、この若者協議会の皆さんは、五月に都議会で勉強会を開いています。先ほども言及がありましたけれども、性犯罪の加害者に対する治療を行う、公認心理師、臨床心理士で認知行動療法に基づいた性犯罪者治療を日本に導入した第一人者である筑波大学教授の原田隆之先生を講師としてお招きした勉強会で、我が会派のほかにも、超党派の議員の皆さん、そして、この生活文化スポーツ局の担当の課長さん方も参加されているというふうに思います。
この場で、原田先生は、繰り返される性犯罪等アディクション、つまり依存症と捉えて、刑罰だけでなく治療を行うことが大切だというふうにおっしゃっています。
原田先生が都内で行っている通称痴漢外来では、痴漢の加害者に共通する認知のゆがみ、これを正して行動変容を促していくプログラムによって、三〇%台といわれているこの痴漢の再犯率を三%まで抑えているということです。
痴漢をなくすためには、こうした加害者への対策が重要だという認識は、都も共有されていますでしょうか。
○勝見治安対策担当部長事業推進担当部長兼務 現在、国において、刑事施設等で性犯罪再犯防止指導等を実施しており、その分析結果によりますと、痴漢加害者を含む迷惑行為防止条例違反事犯者に対する効果的な指導の在り方につきましては検討が必要とのことでございます。
○斉藤委員 今まで繰り返されている答弁でお答えが来ましたけれども、この加害者への対策が重要だということは、皆さん方がまとめている、昨年−−今年も引き続きやっているということですけれども、痴漢被害実態把握調査、この中でも示していますよね。
都は、痴漢撲滅プロジェクトの中で、この実態調査の報告書の中で、予防に関する今後の施策例として、加害者再犯防止プログラムの普及というものをここに掲載しています。これは本当に重要なことだというふうに思っています。
刑期が短く、刑務所内でプログラムを受けられない加害者への対応は
〇斉藤委員 しかし、そうしたプログラムについて、原田先生からは重要な指摘がありました。国では、刑事施設において性犯罪再犯防止プログラムを行っているけれども、刑期が短い痴漢ではプログラムが受けられないという現状があるというお話でした。
そもそも痴漢は、不起訴や罰金刑だけで終わることが多く、刑事施設でのプログラムはほとんど受けられていないというのが現状です。
このことを、都はどのように受け止めていますか。
○勝見治安対策担当部長事業推進担当部長兼務 国における取組の話と考えております。
○斉藤委員 ちょっと、今のは本当に驚くべき答弁だと思います。国における取組の話ということで、本当に他人事のような答弁なんですけれども、こうした手の届いていないところにこそ、東京都がやれることがあるということなんじゃないですかね。そういう意味で、本当に有効な、有意義な勉強会だったんじゃないかというふうに思うんです。
この都議会で開かれた勉強会で、都に無関係な話を先生はされたわけではないと思います。こうした対策から漏れている部分に対して、都としてどういう施策ができるのか、少なくとも、皆さんがまとめた痴漢被害の実態調査の報告書にも、加害者再犯防止プログラムをこの施策例として示しているわけですから、都ができることを真面目に考えていただきたいというふうに思います。
この間も述べてきたように、都民の声、特に若い皆さんからの声と都議会での議論を受けて、都は、昨年度から痴漢撲滅プロジェクトに踏み出して、この実態調査を行っています。
調査に当たっては、やはり痴漢の加害者への再犯防止の実践を行っている斉藤章佳先生や、被害者の支援を行っている齋藤梓先生を有識者会議のメンバーとしてお招きをして、都も、その知見を深めてきたのではないかというふうに思います。
昨年の七月には、毎年開かれている安全・安心まちづくり協議会で、「身近な性犯罪・性暴力、痴漢をなくすために 加害者臨床の現場から考える」というテーマで、臨床に関わってきた斉藤章佳先生からの講演が行われています。
この中で、まさに竹迫生活安全担当局長、参加されておりまして、痴漢について、基本的には依存症であって、何らかの治療をしなくちゃいけないというような一連の流れじゃないと、痴漢をする人自体が減っていかないということかという質問をされております。
斉藤先生からは、専門治療につながるような仕組みをどうつくることができるのかが課題であることや、早期発見、早期治療をどう実践していくか、実現していくか、システムとか制度を変えていく必要があるという考えを示されています。
重要な視点だというふうに思いますが、どう認識していますか。
○勝見治安対策担当部長事業推進担当部長兼務 現在、国において、刑事施設等で性犯罪再犯防止指導等を実施しており、その分析結果によりますと、痴漢加害者を含む迷惑行為防止条例違反事犯者に対する効果的な指導の在り方につきましては検討が必要とのことでございます。
○斉藤委員 私、国のことを聞いたんじゃないんですね。東京都で開いた、この安全・安心まちづくり、ここで局長自身が、これ、重要な質問だと思います。とても重要な視点での質問だと思います。これに対して、斉藤先生から回答がされているわけですね。これは、しっかり都の話としてちゃんと受け止めて今後に生かしていかなきゃいけないというふうに思うんです。
迷惑行為防止条例違反事犯者、つまり都の条例違反に当たる痴漢の加害者に対する指導の在り方については検討が必要ということで、ご答弁で繰り返されているんですけれども、二〇二〇年三月に示されたという、その分析結果というのを私も拝見をしました。
この中で、迷惑防止条例違反事犯者においては、指導効果については統計的な裏づけは得られなかったという注意書きがありましたが、この分析は、刑事施設、つまり刑務所内で行った再犯防止プログラムの効果についての分析なんです。
先ほど申し上げたように、都道府県の条例違反者、つまり痴漢の加害者は、刑務所に入ったとしても、刑期が短く、そして国のプログラムが受けられないか、あるいは、受けたとしても、回数などが十分ではないから、統計がそもそも取れないということなんじゃないでしょうか。
そのことを、あたかも加害者の更生プログラムの効果は分からないとして否定するようなことは、私は間違っているんじゃないかというふうに思うんです。現に、都が知見を伺ってきた斉藤章佳先生や原田隆之先生は、その効果があるということを実証しているわけです。
国からも都道府県むけガイドラインが示され、各地で実践が始まっている
〇斉藤委員 しかも、国は、その後の二〇二三年五月に、都道府県向けに再犯防止プログラムの活用のための性犯罪の再犯防止に向けた地域ガイドラインというのを出しています。この中には、刑事施設には入所にはならない不起訴や罰金刑の方を含めて、地方公共団体で支援やプログラムが行えることが示されています。罰金や科される刑期が短い迷惑行為防止条例違反者にも、これが求められているということは同じではないでしょうか。
続けて伺いますけれども、先ほど来、取り上げております、都がまとめた痴漢被害実態把握調査の報告書の中で示されている予防のために必要な施策例、加害者再犯防止プログラムの普及というのを掲げています。
この施策についてはどのように実現していくのか、また、その検討状況について伺います。
○勝見治安対策担当部長事業推進担当部長兼務 現在、国において、刑事施設等で性犯罪再犯防止指導等を実施しており、その分析結果によりますと、痴漢加害者を含む迷惑行為防止条例違反事犯者に対する効果的な指導の在り方につきましては検討が必要とのことでございます。
都としては、国の状況を注視してまいります。
○斉藤委員 先ほどから、ずっと同じ答弁を繰り返されているわけなんですけれども、また国の話ということでご答弁ですが、しかし、ほかの府県では独自に取組を進めているところがあります。
実際に、刑事施設での性犯罪再犯防止プログラムが受けられない痴漢の加害者を対象に、大阪府では再犯防止のための制度をつくっています。
大阪府では、痴漢や盗撮などは再犯率が高いという認識の下、起訴猶予や罰金刑だけで終わってしまうような痴漢や盗撮など犯罪行為で悩んでいる人を対象に、心理カウンセリング制度をつくって、その中で、認知のゆがみを正したり、行動変容を促す、こういう支援を行っています。
先ほど、とや理事からも取り上げましたけれども、福岡県でも、福岡県における性暴力を根絶し、性被害から県民等を守るための条例、これをつくって、性犯罪の再犯を防止するための専門的な指導プログラムをやっているという状況なんです。
都としても、こうした先進事例に倣っていくということはできるというふうに思うんですが、これ、私、質問したいと思ったんですけれども、ちょっと聞き方を変えたいと思います。同じ質問だと、繰り返されても困るんでね。
東京都としても、こうした他県の先進事例に学んでいくということはできるんじゃないでしょうか。いかがでしょうか。
○勝見治安対策担当部長事業推進担当部長兼務 国の取組につきましては、国の分析結果が出ておりまして、こうした国の状況を注視してまいります。
○斉藤委員 私、今、国のことは何も聞いていないんですよね。実際に、独自に、この大阪や福岡のように対策を進めている例があるわけです。
先ほどもいったように、国は、二〇二三年五月に都道府県に対して、取組ができるように地域ガイドラインというのを出しているんですね。
この大阪府の取組について、私、大阪府の担当の方にお話を伺いました。大阪府では、二〇一二年に子どもを性犯罪から守る条例をつくり、性犯罪の実刑を受けて刑期を終えて社会復帰する人への支援、いわゆる出口支援というのを行ってきました。その刑期を終えた方々ですね、そういう支援を受ける人の三割から四割の人が、実は、実刑を受ける前に痴漢や盗撮を行っていたということが分かったということなんです。
つまり、不起訴や罰金で終わってしまうような痴漢などの段階で再犯防止の対策ができていれば、その時点で食い止められるというふうに考えて、大阪府は、この実刑を受けていない人への対策、いわゆる入り口支援というものを昨年度から始めているそうです。
電話の相談には、痴漢行為で悩んで、泣きながら電話をかけてくる家族や本人もいるそうです。それだけ、悩みながらもやめることができない、依存性が高い、そういうものだと思います。そういう苦しみを抱えている人がいるということです。
相談の実績数については非公表ということでしたけれども、昨年度は十名程度の見込みで始めて、プログラムを受けた人からは好評だったということで、今年度は二十名を見込んで取組をしているということです。
被害の多い東京都でこそ、再発防止プログラムの実施にふみだすべき
〇斉藤委員 痴漢の被害が多い満員電車が常態化している東京都こそ、こうした国の地域ガイドラインを生かすのでもいいと思いますし、他県の取組のようにこの対策を行っていく、痴漢の加害者が再犯防止のプログラムを受けられるような取組、こういうのをやっていくべきだというふうに思います。
まだまだ痴漢などの性犯罪に対する再犯防止のプログラムが浸透していないこの日本では、その実践ができる機関や専門のカウンセラーなどの人材が少ないということがいわれています。痴漢の再犯防止のための対策ができるリソースや人材をどう増やしていくのか、これも有識者と相談するべきだというふうに思います。
都の実態調査に有識者として関わってきた斉藤章佳先生の著書にもありましたけれども、専門のリソースや人材が少ないという課題はあるけれども、公認心理師や社会福祉士が一定の研修を受ければ、痴漢などの性犯罪の再犯防止に対応できるようになるということも述べておられました。ぜひ、専門家、有識者の方々の知見を伺いながら取組を進めていただきたいというふうに思います。
もう一つ、要望ですけれども、都は、昨年度末、つまり今年の三月に第二次再犯防止推進計画を策定しました。私たちは以前から求めてきましたが、この中で痴漢対策が盛り込まれたということは、非常に貴重な前進だというふうに思っています。
しかしながら、再犯防止のために重要な加害者プログラムについては位置づけがありません。次の計画の際には、それまでに取組を深めながら加害者プログラムを位置づけていただくことを求めておきます。
最後に、都の基本的な姿勢について伺います。
加害者への対策について、今後に向けての具体的な施策や検討内容というのは言及がなかったのですけれども、少なくとも都は、先ほど来いっていますように、この痴漢被害実態把握調査の報告書の中で、予防の段階、予防のフェーズにおいて加害者再犯防止プログラムの普及というものを施策例として掲げています。
今回の陳情で求められていることは、痴漢の再犯防止のために都が実態調査の報告で示している方向性と一致するものだというふうに思いますけれども、見解を伺います。
○勝見治安対策担当部長事業推進担当部長兼務 報告書にございます再犯防止策につきましては、有識者の提言を記載したものでございます。
○斉藤委員 何か自分たちがつくったものじゃないみたいな答弁なんですけれども、私、本当にそういう答弁は許されないと思うんですね。有識者の提言を記載したものだと。これ、東京都の責任でつくっているものではありませんか。
有識者の提言を記載というんですが、先ほどから繰り返し取り上げているここは、有識者の提言だということは、どこにも書いていません。有識者の提言というのは、その後ろに載っています。そう書いていないところに、これを書いているのは東京都じゃないですか。
やはり、皆さん自身がやっている調査、有識者の皆さんからの意見を伺いながらまとめたものだと思いますけれども、これ、きちんと責任を持って、東京都の施策のための調査だということ、責任を持って取り組んでいっていただきたいというふうに思うんです。
日本若者協議会の皆さんが要望していることは、その方向性の中で実現可能な具体的な施策だというふうに思います。ぜひ実施していただくことを求めて、質問を終わります。ありがとうございます。