※ 2020年11月5日、文教委員会
被害者の多くが子どもたち
〇斉藤委員 性教育について伺います。
私は、三月の予算議会の中でも、新しい性教育の手引をもとに質疑をさせていただきましたが、性教育の充実を求める声は、性被害、性暴力の根絶を求める運動の高まりや、また、コロナ禍での困難を背景に、ますます大きなものになっています。
個人の尊厳を著しく傷つける性暴力は、重大な人権侵害の問題として、これをなくしていくための取り組みが教育現場にも求められています。
内閣府が昨年、二〇一九年に全国ワンストップ支援センターに実施した調査では、面談を行った被害者のうち、十九歳以下が四〇・六%、二十代は三一・三%と、若年層の割合が高いということが明らかになりました。
十九歳以下という学齢期の被害が四〇・六%と多くあることについて、都教育委員会の見解を伺います。また、あわせて現在の取り組みについて伺います。
〇増田指導部長 性犯罪や性暴力は、被害に遭った児童生徒の心と体に長期にわたり重大な悪影響を及ぼすものであることから、学校において、児童生徒が性暴力等の被害者とならないようにするための指導の徹底を図ることが必要であると考えております。
そのため、都教育委員会は、毎年度作成し、都内公立学校の全ての教員に配布している安全教育プログラムに、人通りの少ない道を通行しない、危険を感じたらすぐに助けを呼ぶなど、発達の段階に応じて、児童生徒が犯罪の被害に遭わないようにするための指導事例を掲載するなどして、学校における安全指導の充実を図ってまいりました。
また、主として女子高校生にマッサージを行わせたり、会話やゲームの相手をさせたりする、いわゆるJKビジネスに生徒等がかかわることのないようにするための指導が、学校と警視庁との連携により適切に行われるよう、毎年度開催している警視庁と都教育委員会の連絡会を通して協力を依頼するなどしております。
〇斉藤委員 性犯罪や性暴力は、児童生徒の心と体に長期にわたって重大な悪影響を及ぼすものであるということ、また、学校において、児童生徒が被害者とならないようにする指導の徹底を図るということが必要という認識は重要なものだというふうに思います。
私たち日本共産党は、この間、痴漢被害のアンケートを行いました。一カ月で一千三百件を超える回答を得て、(資料を示す)これが打ち出したものなんですけれども、本当に多くの声が書き込まれております。
痴漢や性被害を受けたことがあると回答したうちで、初めて被害を受けた年齢として、十二歳以下が、小学生だったという方が三五%を占めました。十八歳以下で見ると七四%にも上ります。立場の弱い学齢期の子供たちが狙われているということが明らかになっています。
内容を少しご紹介します。小学校四、五年生で被害を受けたという女性です。図書館で隣に座ったスーツを着た中年男性にずっとお尻をさわられた、何をされているのかよくわからないまま固まってしまった、何十年も前なのに、今でもタイムスリップして叫びたくなるというもの。また、女子高校生は、電車で頻繁に痴漢に遭うという記述も多く、中には、それが原因で学校に通えなくなってしまったというケースもあります。
ほかにも深刻なものがあります。まさに学齢期の子供たちを取り巻く実態に照らした学校現場での取り組みが重要です。
人間の尊厳を踏みにじる人権問題として、いっそうの啓発を
〇斉藤委員 先ほどのご答弁の中では、現在の取り組みについて、被害に遭わないための啓発やJKビジネスなどにつながらないようにするための指導に重点が置かれているという状況だと思いますが、性犯罪は、本来、被害者の注意が足りなかったから起こるものというものではありません。
私は、改めてどんなことが性暴力なのかを教えることも含めて、性暴力の問題は人権問題と位置づけた性教育を発展させていくことが重要ではないかと思っています。
政府が六月に性犯罪・性暴力対策の強化の方針を策定し、これを受けて文科省が各都道府県に通知を出しています。この中で文科省は、子供が性暴力の加害者や被害者、傍観者のいずれにもならないよう、教育、啓発内容の充実、相談を受ける体制の強化、わいせつ行為を行った教員等の厳正な処分、社会全体への啓発について、今後取り組みを強化していくとして、都道府県教育委員会に対して、この趣旨を踏まえた教育、啓発の強化について協力を求めています。
大事な取り組みだと思いますが、都教育委員会の見解を伺います。また、これを受けて、都教育委員会ではどのような検討をしているのか、あわせて伺います。
〇増田指導部長 児童生徒が性暴力の加害者、被害者、傍観者のいずれにもならないようにするためには、学校において、危険を予測し回避する能力、生命を尊重する態度、互いを思いやる心などを育む教育を充実させることが重要でございます。
そのため、都教育委員会は、各学校における人権教育や道徳教育の充実を図ってまいりました。
また、児童生徒が性被害等について相談できるよう、都内公立小中高等学校にスクールカウンセラーを配置するなどして、相談しやすい学校の環境づくりを支援するとともに、都教育相談センターにおいて、二十四時間受け付けの電話相談や中高生対象のSNS教育相談等を実施しております。
今後とも、国における性犯罪や性暴力対策に関する検討状況を注視してまいります。
〇斉藤委員 今ご答弁された認識は、非常に重要なものだというふうに思います。
現在の取り組みについてご説明いただきましたけれども、大事なことは、今の子供たちを取り巻く背景や問題提起を受けて、今後、都教委がどのような対応を行っていくかということだと思います。
政府の方針では、性犯罪、性暴力は被害者の尊厳を著しく踏みにじる行為として、尊厳と性を結びつけて捉えている点は重要な点です。性と人権は不可分であり、性犯罪は人権侵害であるという認識に立つことが大事です。
都教育委員会としてこれまで推進してきた人権教育に、性と人権にかかわる学習や啓発を加えていくことが必要だと考えますが、見解を伺います。
〇増田指導部長 児童生徒が互いの人格を尊重し、望ましい人間関係を築いていけるようにするためには、学校において、教育活動全体を通して人権尊重の理念について正しく理解させるとともに、互いに尊重し合う態度を育てることが重要でございます。
そのため、都教育委員会は、毎年度、人権教育の実践的な手引として、都内全ての公立学校の教員に配布している人権教育プログラムの中に、東京都男女平等参画基本条例に基づく男女両性の本質的平等の理念や、男女平等教育に関する指導事例を掲載するなどして、学校における人権教育の推進を図っております。
〇斉藤委員 重要な認識を示していただきましたけれども、従来から人権教育プログラムに男女平等教育に関する指導事例を掲載しているということはわかっておりますけれども、今、あらゆる性暴力を許さない、こういう運動や世論の高まりから始まっているこの取り組みは、性被害や性暴力をなくしていこうという具体的なものです。人間と性の尊厳や、どういうことが性暴力なのかを学ぶということが、学齢期の子供たちにとって必要だというふうに思います。
性教育を人権教育として位置づけて先進的な取り組みをしている中学校に、私は、三月の質疑の前に公開授業にも伺わせていただきましたが、その中で、先生方は、何よりも今の児童生徒を取り巻く環境や実態から出発した性教育が重要だと強調していました。
今、児童生徒たちを取り巻く性被害やその背景に社会的な大きな光が当たっているときに、こうした子供たちの犠牲をなくしていくための取り組みが今こそ求められていると思います。
今の児童生徒たちを取り巻く環境や実態から考えた性教育の重要性について、都教育委員会としてどのように認識しているか、伺います。
〇瀧沢指導推進担当部長 学校における性教育は、児童生徒の人格の完成を目指す教育の一環であり、人間尊重の精神に基づいて行うとともに、児童生徒が性に関する正しい知識を身につけ、適切な行動を選択できるよう進めていく必要がございます。
こうした認識のもと、全ての児童生徒に学習指導要領に示された内容を確実に指導するとともに、社会状況の変化を踏まえた今日的な課題にも対応できるよう、各学校が保護者の理解を得ながら、児童生徒等の実態に応じて性教育に取り組んでいくことが重要でございます。
〇斉藤委員 学校における性教育は、児童生徒の人格の完成を目指す教育の一環であり、人間尊重の精神に基づいて行うということ、児童生徒の実態に応じて性教育に取り組んでいくことが重要という認識は、これもとても大事なことだというふうに思います。このことを取り組みの根本に据えていただきたいというふうに思います。
政府の方針では、子供を性暴力の当事者にしないための生命(いのち)の安全教育の推進ということを掲げていますが、具体的にどのように学校教育で取り組んでいくことが考えられるか、見解を伺います。
〇増田指導部長 都教育委員会は、安全教育プログラムに児童生徒が性暴力を含む犯罪の被害に遭わないようにするための指導事例を掲載するなどして、学校における安全指導の徹底を図っております。
また、道徳授業地区公開講座の開催や道徳の副教材の作成などを通して、小中学校における道徳教育の充実を図るとともに、全ての高等学校で指導する都独自の教科、人間と社会を通して、よりよい生き方を主体的に選択し、行動できる力を育む教育を推進しております。
今後とも、こうした取り組みにより、学校における指導の充実を図ってまいります。
〇斉藤委員 安全教育プログラムや道徳ということでお答えいただきましたけれども、私は、人権問題として位置づけた性教育の中でこそ、豊かに発展できるものではないかというふうに思っています。
都教育委員会では、近年、性教育のモデル授業をふやしたり、学校独自の性教育の取り組みを尊重し、少しずつ前進をさせています。その中には、性に関する教育を人権教育として取り組んでいる先進的な事例もあります。
性被害や性暴力も、まさに人権の問題として恒常的に位置づけて取り組んでいく必要があると考えますが、見解を伺います。
〇増田指導部長 児童生徒が男女平等の理念を正しく理解するとともに、思いやりの心や社会生活の基本的ルールを身につけられるようにするためには、児童生徒の実態に応じ、学校の教育活動全体を通して計画的に人権教育を推進することが重要でございます。
今後とも、都教育委員会は、児童生徒が互いの人格を尊重し、望ましい人間関係を築いていこうとする態度を育成することができるよう、学校における人権教育の充実を図ってまいります。
〇斉藤委員 人権教育の推進、充実を図っていくということですが、ここにぜひ性暴力も含めた性教育を位置づけていただきたいというふうに思います。
政府の方針は、取り組みに一歩を踏み出すものですが、しかし、二〇二〇年から二〇二二年までの三カ年を集中強化期間と期限を切っているというところが不十分な点です。二、三年で終わっていいものではなく、また、解決できるものではなく、まさに恒常的に、計画的に位置づけて取り組まなければならないことだと思います。そのスタートラインに、都教育委員会としても立つことを求めます。
SNSをつうじた性被害と、SNSでの相談体制について
〇斉藤委員 児童生徒のSNSの活用が進む中で、性暴力や性被害につながりやすい状況があることもこれまでに明らかになっています。
都民安全推進本部所管の青少年問題協議会では、今、SNS利用を通しての性被害などの犯罪に巻き込まれる子供への対応について諮問され、議論がされています。
都教育委員会としてはどのようにかかわっているのか、伺います。
〇増田指導部長 ご指摘の東京都青少年問題協議会には、東京都教育委員会教育長が委員の一人として参加しております。
本年六月に、知事がこの協議会に諮問した、SNSの不適切な利用に起因する青少年の性被害等が深刻化する中での健全育成については、現在、答申に向けて協議を行っているところでございます。
〇斉藤委員 教育長がこの協議の総会には参加されているということなんですけれども、この専門部会では、非常に活発な議論がされています。議事録を拝見しましたけれども、若年層とSNSの実態について、学齢期の子供たちがどういう状況にあるかということが議論されています。積極的にかかわっていただきたいというふうに思います。
これに関連しますけれども、政府は方針の中で、若年層が相談しやすくなるように、SNS相談について、来年度からの通年実施に向けて検討と準備を進めるとしています。
都教育委員会として、現在の取り組みについて伺います。
〇増田指導部長 性被害のみならず、子供が抱える個々の悩みや不安を解消するためには、多様な相談窓口を設置するとともに、それらを相互に連携させ、適切に支援していくことが重要でございます。
そのため、都教育委員会は、昨年度から、若者の日常的なコミュニケーションツールであるSNSによる教育相談を通年で実施しております。
この相談窓口に性被害等に関する相談が寄せられた場合には、警視庁少年センターや児童相談所の連絡先を案内することとしており、関係各局との連携を図っております。
〇斉藤委員 SNSによる教育相談の体制を昨年度からつくっているということですけれども、性被害についての相談も行っていることや、どういうことが性被害、性暴力なのかということをあわせて情報提供しなければ、相談に結びつかないのではないかというふうに思います。丁寧な対応を検討していただきたいというふうに思います。
ワンストップ支援センターにつながるための体制強化
〇斉藤委員 また、被害者が性被害、性暴力に遭ったときにワンストップ支援センターにつながるための体制の強化についても政府が求めています。
このワンストップ支援センターは、性被害に遭った方が医療的ケアなど総合的な支援を受けられる、こういうものになっていますが、岐阜県では、これに先駆けて、ワンストップ支援センターを紹介する中高校生向けのリーフレットをつくって学校で配布しています。
東京都では、ワンストップ支援センターのことを掲載したパンフレットを学校等で配布するなど、こうした他県の例を参考にしながら行うべきだと思いますが、見解を伺います。
〇増田指導部長 都では、性犯罪、性被害に遭った方々の相談に応じたり、必要な支援につなげたりするため、民間支援団体と連携して東京都性犯罪・性暴力被害者ワンストップ支援センターを設置しております。
今後、都教育委員会は、区市町村教育委員会の担当者連絡会や校長連絡会を通して、各学校に対して、このワンストップ支援センター等を紹介しているリーフレットが掲載されているウエブサイトを周知してまいります。
〇斉藤委員 まずはウエブサイトで周知していくということを開始していくということで、よかったというふうに思います。
しかし、今の都のリーフレットは、一般向けにつくられているものです。岐阜県の中高校生向けにつくられたものは、こちらに今持ってきておりますけれども……(資料を示す)中高生向けに振り仮名が振ってある、すごく読みやすくわかりやすい、平易に書かれたものになっています。
例えば、いつ、どこで、誰が被害に遭うのというところでは、性の加害になる人というのは、知らない人だけではない、知っている人から受けるということもあるんだよということが示されていたり、あと、性暴力というのはそもそも何なのか、例えば水着で隠れる場所、プライベートパーツというのは、人にさわられたり、見せたりしてはいけないところなんだというところ、嫌なことをされたらそれが性暴力ですと。そういうことがわかりやすく書かれています。
こうした先進事例を参考にして、ぜひ東京都でも踏み出していただきたいなというふうに思います。
教員による性加害の実態調査にふみだし、対策を
〇斉藤委員 それから、教員から生徒に対する性加害の問題も顕在化し、文科省も、わいせつ行為を行った教員等の厳正な処分を求めています。
都教育委員会として、啓発につなげるためにも、実態調査に踏み出していくべきだというふうに思いますが、見解を伺います。
〇浅野人事部長 児童生徒に起きたわいせつ行為等に関する情報を学校が確実に把握するとともに、声を上げやすい体制を構築することが重要でございます。
各学校では、児童生徒に不安や悩み等がある場合に、学級担任のほか、スクールカウンセラーや養護教諭など、話しやすい教職員に相談を行うよう促しております。
また、学校だけでなく、東京都教育相談センターや区市町村教育委員会が設置する教育相談所などでも、悩みを抱える子供たちからの相談に応じております。
〇斉藤委員 実態把握アンケートはまだ実施していないというところですけれども、こちらも、千葉県がセクシュアル・ハラスメント及び体罰に関する実態調査というものを行っています。特別支援学校を含む県立学校、高校、そして市立小中学校の在籍者、四十八万人以上を対象にする大規模な調査です。
担当の方にお話を伺いましたけれども、学校におけるわいせつ行為やセクハラの根絶がなかなかできないという認識のもと、二〇〇四年から始めているということですが、セクハラ行為やわいせつ行為の防止や、家庭も含めた啓発にも役立っていると実感されているということでした。全数調査とまではいかなくても、都としても参考になる取り組みではないかというふうに思います。
これまで、さまざまな取り組みを紹介させていただきましたが、都教育委員会としても、子供が多くの被害を受けている性犯罪、性暴力をなくしていくため、また、加害者にも傍観者にもならない子供たちの環境をつくっていくために、新たな取り組みの検討をしていただきたいと思います。
とりわけ、人権教育と位置づけた性教育の中で取り組みをロードマップ化して発展させていくということを求めて、私の質問を終わりにいたします。ありがとうございます。