突然の一斉休校への対応。人権としての性教育を

文教委員会 2020年3月16日

突然の一斉休校を決めたことについて

 

斉藤委員 では、私からも伺います。
まず、一斉休校について伺います。
先月二十七日の安倍首相による突然の全国一斉休校の要請から、三月二日にはほとんどの学校が一斉に休校になり、今、二週間がたちました。突然の休校によって、学校現場では、急な対応のために混乱が生じ、また、長引く休校措置のために、子供たちや保護者、その他の関係者にとって大きな負担が強いられています。
感染拡大の防止はもちろん大切なことですが、そもそも安倍首相の突如の一斉休校の要請には科学的根拠がなかったもとで、都教育委員会として、今の一斉休校が子供たちに過度な負担になっていないか、絶えず検証して、対応を柔軟に考えていくことが必要だと思っています。
初めに、都教育委員会による休校の方針の決定について伺いたいと思います。
先月末に安倍首相が全国一斉休校の要請を行ったこと、これを受けて、都教育委員会事務局は、この翌日の先月二十八日、金曜日に、都立高校や各自治体向けに休校の方針の通知をしました。これについて、本来なら、重要な案件は教育委員五人と教育長の合議で決めるとなっているところ、教育長の職権で休校方針が決められたということに対して、教育委員から苦言が呈されたということが報道されています。委員からは、急なことであっても、意思表示をするやりようがあったと思うと指摘されたということです。
そもそも、一斉休校についての都立学校への通知、また、区市町村教育委員会への対応の依頼に当たって、都教育委員会事務局はどんな検討を行い、一斉休校の判断を下したのか、伺います。

小原教育政策担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 国からの臨時休業の要請におきましては、今が感染の流行を早期に終息させるために重要な時期であるといたしまして、子供たちの健康、安全を第一に考え、多くの子供や教職員が日常的に長時間集まることによる感染リスクに備えるという観点が示されたのに加えまして、臨時休業期間中の保護者の負担などが生じないよう、政府として責任を持って対応する旨の方針が示されたところでございます。
こうした点を踏まえまして、都教育委員会といたしましては、学校における教育課程の取り扱い、卒業式や入学者選抜等の行事、障害のある児童生徒に関することなど、臨時休業による影響と対応につきまして、関係各部署で検討を行ったところでございます。
それらを総合的に勘案し、都立学校については、三月二日から春季休業までの間、臨時休業とすることを決断し、区市町村教育委員会へも対応を要請したものでございます。
なお、決定に当たりましては、時間が過ぎてから後知恵的に、ああだった、こうだったというわけではなく、その瞬間、国から示された危機的状況を都教育委員会としても共有し、二十八日は金曜日でございまして、三月二日からの休校ということになりますと、金曜日の昼過ぎには、都内約千三百ある小学校の子供たちが下校時間を迎えかねないという中で、加えて申し上げれば、二十七、二十八日は都議会の本会議もありまして、そういう中で緊急に処理しなければならない事案でございまして、教育委員会を招集いたしますいとまがなかったことから、法律などに基づき、教育長が臨時代理により処理し、速やかに教育委員会へ報告して、全会一致で承認を得たところでございます。

斉藤委員 要するに、国の要請を絶対というような形で受けとめてやったということだと思います。
教育委員会を招集するいとまがなかったということですが、このことに対して、委員からは、いとまがなかったとは、やや心外だ、委員は意思表示をするやりようはあると思うと述べていたということは先ほども申し上げました。
さらに委員からは、特別支援学校は休校しない選択肢もあったのではないか、また、虐待を受けるなどして家庭に居場所がない子供もいる、学校に行くことができず、しわ寄せが来ている可能性があるという指摘もあったということです。これは重要な指摘だと思います。
本来ならば、こうした重要な問題を含む決定について、委員や現場の声をきちっと聞くためにも、要請から即日の方針決定とせず、独自に検討する時間をとるということもできたはずです。
この点は、今後の決定についても必要な視点だと思いますので、国の方針をそのまま横流しにするようなことではなく、都教育委員会として、どんなことが起こるのか、現場のことも考えて、責任を持って判断していただくということを求めたいと思います。

 

特別支援学校での一斉休校について

 

斉藤委員 特別支援学校について伺います。
先ほども質疑がありました。私たちのところにも、休校が始まってから、特別支援学校での対応をめぐって、まちまちだという声が届いています。児童生徒を預かっているところがある一方で、行きたくても、断られたり、なるべく自宅待機を促されたりするケースがあるという訴えがあります。
仕方なく、我慢しながら自宅にいるという親御さんからは、障害を抱えたお子さんが、いつも通っていた学校に突然通えなくなったことで不安定になり、自宅で壁に穴をあけてしまったり、ふだんは優しいお子さんなのに、家族に暴力を振るったりするケースもあるということです。我慢をして自宅待機をすることが半ば強制されるような雰囲気の中で、お子さんやご家族の負担は増大しています。
改めて、生徒たちが健全に過ごせるようにしていただきたいというふうに思いますが、さきの質問でも、この点については、まず最初に、臨時休校が急な対応だったために、体制の受け入れに差が生じたということが答弁されました。
今現在では、全ての特別支援学校長に直接連絡をして、都教育委員会の方針を改めて伝えているということ、そして、引き続き、子供や保護者を含め、学校現場の声を丁寧に聞き取って柔軟に対応するという答弁がありました。これは大切なことだと思いますので、私の方からも重ねて、この点、徹底していただきたいと思います。
さらに、障害があるお子さんたちにとって、ただ居場所があるというだけでは不十分なわけですが、保護者の方からは、学校に預けたいと思っても、学校でどうやって過ごすかの説明がなくて不安を感じているという声も寄せられました。こうした情報提供や説明も、学校から丁寧にしていただけるようにお願いをしたいと思います。
それから、卒業式についての要望も多く届いています。
現在の都の方針では、特別支援学校については、介助が必要な児童生徒だけが保護者一人の参加が認められています。
しかし、特別支援学校に通うお子さんや保護者の皆さんは、日々いろんな困難を抱えながらも、子供たちの成長に心を寄せて、それをお祝いできる卒業式を楽しみにしてきました。楽しみにするということだけでなく、それを一つの目標にして頑張ってこられました。
都教育委員会では、卒業式についても、感染防止に極力配慮するように、また、時間の短縮や参加者の削減など、さまざま工夫を今しているところだと思いますが、せめて、どのお子さんも、世帯で一人の保護者の参加を認めてほしいという強い要望が上がっています。この点、いかがでしょうか。

増田指導部長 感染の拡大を防止するため、今般の卒業式への参列者につきましては、都立高等学校においては、保護者及び来賓は参加せず、教職員、卒業生及び式に関係する在校生に限定しております。
しかしながら、都立特別支援学校におきましては、医療的ケアなどの介助が必要な児童生徒等の保護者について参加いただく予定としております。
現在、都内での感染拡大を防ぐ取り組みを続けているところであり、こうした方針を変更する予定は今のところございません。

斉藤委員 方針を変更する予定は今のところないということですが、ぜひ親御さんたちの気持ちに寄り添っていただきたいというふうに思います。
特別支援学校の卒業式は今週から始まり、目前に迫っています。今、現場では、個別に都教育委員会に確認をとりながら、保護者が別室でオンラインで卒業式を見られるように準備をしているというところもあります。しかし、最後まで式に参加できるように皆さんが望みを持っているという声を、きょうもいただいています。
特別支援学校に通うお子さんたち、特に高校生は、幼稚部から通っていれば十五年間の月日を、先生方と手を携えて、子供たちの成長とともに歩んできました。他県では保護者の参加を認めるところもあります。
私もこれまで、地元の特別支援学校の卒業式には参加させていただいていますが、卒業生の人数は少なく、普通科であれば、十数人から六十人、七十人程度です。体育館で生徒と離れて座るなど、感染防止に配慮しながら参加する方法はあるのではないでしょうか。
一律ではなく、何らかの基準を示し、各校ごとのやり方での実施もあり得ると思います。いま一度、検討していただくということをお願いしたいと思いますが、いかがですか。もう一度、お願いします。

増田指導部長 先ほどもご答弁させていただきましたとおり、感染拡大を防止するためには、最大限、参加者の削減など工夫をすることが必要だというふうに考えております。
都立特別支援学校におきましては、医療的ケアなどの介助が必要な児童生徒の保護者については参加いただく予定としております。

斉藤委員 私も、感染拡大防止の対策を講じることは重要だというふうに思うんです。しかし、お母さんたち、保護者の方たちの思いを最大限酌んで工夫してやるということは、今、いろんなところで行われております。ぜひ都教委も、この点、硬直したままではなくて、一生に一度のことがもう今週に終わろうとしている中で、改めて検討していただきたいというふうに思います。

 

小中学校での一斉休校について

 

斉藤委員 小中学校の一斉休校について伺います。
今、子供たちの日中の過ごし方について、保護者はとても苦労して、子供たちもストレスをためていく状況が続いています。子供の居場所や健全に運動ができる環境の確保について、切実な要望になっています。
我が党が行っているネットでのアンケート調査でも、健康な子供がこんなに長い期間どこも行けず、家にいなさいという指示では精神的におかしくなりますという声や、保護者の疲労感もすごいし、ふだんの生活のルーチンが崩されたことで体調を崩している子供も多いという声が届いています。
しかし、子供の居場所が公的に確保されている自治体は少ない状況です。
そこで伺いますが、今現在、都内の公立の小中学校で、学校施設を開放して子供の居場所を確保している自治体、また、食事を提供している自治体は幾つあるのか、教えてください。

太田地域教育支援部長 本年三月九日に、文部科学省が新型コロナウイルス感染症対策のための臨時休業実施状況アンケートを実施しておりまして、その中で、子供の居場所の確保に関する状況等についても確認しております。
現在、文部科学省において集計作業が行われており、今後、集計結果を公表することを予定していると聞いております。

斉藤委員 今、文科省の方で、現在、集計中ということです。
我が党は、国会でも、子供のための居場所づくりや運動の機会確保などを求めてきました。
先日土曜日には、ご存じのとおり、安倍首相が記者会見をして、休校中の子供たちについて、健康管理、ストレス解消のためにも、人が密集しないようにするなど、安全な環境のもと、屋外に出て運動の機会もつくってくださいと述べました。
文科省では、一斉臨時休業に関するQアンドAにおいて、児童生徒の健康保持の観点から、児童生徒の運動不足やストレス解消をするために行う運動の機会を確保することも大切と示しています。
その上で、学校の校庭や体育館、公共スポーツ施設を開放して、児童生徒が運動する機会を提供してもよいのかという問いに対して、先月十三日、金曜日には、児童生徒の健康保持の観点から、学校の校庭や体育館、公共スポーツ施設の開放を設置者や各学校等において検討していただき、児童生徒の運動する機会を確保していただきたいと考えますという積極的な回答に更新されています。
この文科省の方針と都の見解は一致しているということだと思いますが、この通知はとても大切な通知だと思いますので、今後も遅滞なく、こうした通知については都教育委員会からも積極的に行っていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

太田地域教育支援部長 まず、ご指摘の通知ですが、今月十三日に発出されたものだと思われます。回答の更新につきましては、今月十三日だと思います。
答弁でございますが、施設開放等の対応につきましては、文部科学省による通知やQアンドAを踏まえまして、設置者である区市町村教育委員会が、地域や学校の実情に応じて、感染の予防や感染拡大防止のための防護措置等を講じた上で判断していくものと考えております。
引き続き、迅速な区市町村教育委員会への周知に努めてまいります。

斉藤委員 ぜひ遅滞なく行っていただきたいというふうに思います。ようやく政府も示したとおり、屋外での安全な環境で体を動かすことは、心身の健康を保つ上でも必要なことです。都教育委員会からも、子供の運動の機会を確保するように、区市町村を後押しするための周知や支援を積極的に行っていただきたいと思います。
こうした小中学校の子供たちの状況についても、都教育委員会としてきちんと把握をしていただきたいと思いますが、この間、区長会と都の意見交換が行われ、市町村からも要望が都に提出されています。
その中には学校関係の要望が多く出されていますが、都教育委員会では、関係各局とそうした情報共有はされているのでしょうか。

小原教育政策担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 新型コロナウイルス感染症対策に係ります知事と区市町村長との意見交換の内容につきましては、当然のことながら、教育庁を含む関係局の間で共有されているところでございます。

斉藤委員 当然のことながら共有されているということで、子供たちのことを、ぜひ状況をつかんでいただきたいというふうに思います。
この区長会と都知事との意見交換での要望について、私も確認しましたが、子供の居場所づくりへの教職員の協力依頼や学習機会の確保、また、図書館や博物館、スポーツ施設等の子供が利用する施設の開館など、子供の過ごし方に配慮を求める要望が多くあります。
感染防止の対策をきちんと講じた上で、こうした要望に応えられるよう、ぜひ子供たちのためにも、都として検討していただきたいと思います。
また、休校になったことで給食が食べられなくなったことも、子供たちと子育て世帯に大きな影響を与えています。私のもとには、生活保護を受けている世帯のお母さんから声が寄せられました。
保育園と小学校に通う四人のお子さんのお母さんですが、ふだんは実費負担なく給食を食べることができているのに、今は四人分の食費の負担が家計に重くのしかかっていて、本当に大変だということです。
また、先生方のお話からは、ふだんの夏休みでも食事がとれなくなる子供がいるということを伺いました。
学校がない、給食がないということは、こうした子供たちにとって死活問題であり、学校がまさにライフラインになっているんだということを、今、強く私も実感をしています。
我が党の吉良よし子参議院議員が学校施設を利用した昼食提供を求めたことに対して、萩生田光一文科大臣は、学校に自習に来ている子、来ていない子にも昼食提供は可能と答弁をしました。都教育委員会としても、区市町村の取り組みを後押しし、支援できるように強く求めておきます。
今後、三月後半に向けては卒業式や修了式、また、四月には入学式、始業式を迎えます。節目に向けて、今後いろいろな判断が出てくると思いますが、私は、都教育委員会が、ただ単純に国のいうことに従うだけではなく、都として子供たちや現場の声に耳を傾けて、丁寧に判断していく軸を持つことが必要だと思っています。
都教育委員会は、都の新型コロナウイルス感染症対策本部に参加をして、そこには専門家もいます。感染防止の取り組みももちろん大切なことですが、一斉休校を続ける中での子供たちの心身への大きな負担も考えた上で、どういうことならできるのか、都教育委員会として、学校問題に特化して専門家の意見を聞く機会を持ち、子供たちが置かれている現状の改善に向けて取り組むべきだと思いますが、いかがでしょうか。

安部総務部長 国や都におきましては、新型コロナウイルス感染症の対応について、専門家会議の議論なども踏まえ、対応方針が示されております。
今般の臨時休業を受けて、各学校においては、そうした国や都からの情報をもとに、感染防止の措置を講じた上で、学校や地域の実態に応じて、さまざまな工夫を図りながら子供たちの心身の健康のケアに努めております。
具体的には、小中学校で、学校ごとに登校日を設定する取り組みや、学校施設を活用した子供たちの居場所の確保などの取り組みが行われているところがございますが、子供同士の座席の間隔をあけたり、窓をあけて換気を行うなどの配慮がされております。
今後とも、都教育委員会は、子供や保護者の状況を踏まえつつ、国や都の関係機関とも連携しながら、学校と区市町村との情報共有を図り、適切に対応してまいります。

斉藤委員 現場で、特に小中学校においても、しっかり対策をやりながら尽力しているということに対しては、本当に敬意を表したいというふうに思います。ぜひ都教育委員会としても主体的に、子供や保護者の状況を踏まえ、適切に対応していくというご答弁でしたので、取り組んでいただきたいと思います。
具体的に今後についてですが、学校の三月の卒業式や修了式は、感染防止の対策をしっかりと講じて、工夫をしながら各学校が行えるようにしていただきたいと思います。また、四月の入学式、始業式までの学校再開に向けて、都教育委員会として、専門家の意見を踏まえて独自に判断も行いながら、適切な時期や方法について検討していただきたいと思いますが、どのようにしていくのか、今後について教えてください。

安部総務部長 都教育委員会は、都立学校の修了式につきまして、予定された日程で、混雑時を避けて登校させるとともに、放送設備などを活用し、各教室で実施するよう通知しております。
また、春季休業後の対応につきましては、今後の状況の変化や国の動向を見きわめるとともに、都の関係部局とも連携しながら検討してまいります。

斉藤委員 今後の対応について、国の動向を見きわめ、検討していくということです。先ほど来、私の方では、やはり東京都としても、国からの要請というものを絶対ということだけでなくて、きちんと現場の状況を見ながら対応していただくこと──現状の中で行っていただいているということもわかっておりますが、本当に、長引く休校の中で、かえって危険が増すんじゃないかということもいわれています。
感染が広がっている欧州でも学校閉鎖に踏み切る国がありますが、その中で、学校閉鎖を行わないというイギリスの判断も注目されています。ジョンソン首相は、科学に従って、正しいことを正しいタイミングでやると強調し、学校閉鎖については、利益より実害が多いと述べています。主席科学顧問のバランス氏は、学校閉鎖の間に子供が年配の祖父母に預けられれば、その方がより危険だと説明したと報じられています。どちらが正しいかということは本当に難しいことではあると思うんですが、考える上では、考慮すべきに値する重要な視点だというふうに思います。
国の判断を見ていくということであっても、子供たちにかえって負担や危険が及ばないように、都教育委員会としても判断の軸を持っていただきたいということを重ねて申し上げます。
都教育委員会が主体的に子供たちの状況や現場の声を酌み上げて取り組みを支援し、子供たちの学習権と生活を守る立場で科学的に判断していただくことを求めて、次の質疑に移ります。

 

GIGAスクール構想について

 

斉藤委員 次に、来年度予算で新規で入ったGIGAスクール構想について伺います。
これは、先ほども質疑がありました、国の構想によるGIGAスクール構想に係る予算ですが、都による区市町村支援の内訳について、先ほど質疑がありました。
先ほどのご答弁でも、トータルとして、予算案の中、約五億五千万円が計上されているわけですが、そのうち、校内通信ネットワークを整備する場合には、国の補助に加えて、都として二十分の一を補助すると。
それから、児童一人一台端末の整備について、端末導入支援員を配置するための費用、四分の三を補助するという内容でした。
事前のお話ですと、このうち端末支援員の費用は四億六千八百万円、一人当たり八百万円、その四分の三の補助で、都が六百万円程度を見込んでいるということも伺っています。
タブレットなどの端末を一人一台導入するということなら、支援員は必要なのかなと思いますが、この間の学校の先生の長時間労働が大問題になり、教員をふやすことが切実に求められている中でも、教員をふやして抜本的に解決していくための予算措置が一向にされない中で、とても大盤振る舞いの印象が際立っていると思います。
そもそもGIGAスクール構想の予算は、昨年の教育庁の要求にはなかったものだと思いますが、なぜ予算案に突然入ってきたのか、経緯について伺います。

谷企画調整担当部長 昨年末、新たに国から、GIGAスクール構想として、校内通信ネットワーク整備及び児童生徒の一人一台端末に関する補助について示されたことによりまして、都としても区市町村への支援を行う必要が生じたためでございます。

斉藤委員 国からいわれたということで、受け身の中身だということだと思いますが、ご存じのとおり、この構想は、経済産業省主導のもと、安心と成長の未来を拓く総合経済対策として、昨年十二月五日に閣議決定されたものです。
この中で、学校における高速大容量のネットワーク環境、校内LANの整備を推進するとともに、特に義務教育段階において、令和五年度までに、全学年の児童生徒一人一人がそれぞれ端末を持ち、十分に活用できる環境の実現を目指すこととすると説明されています。
しかし、そもそも文科省の中央教育審議会では、二〇一六年の段階では、PC端末などのデジタル教科書について、地域ごとにネット環境などが異なることだけでなく、子供たちへの健康の不安があることから、全面的な導入を拙速に進めることは適当ではないと報告していました。それが、経済界の求めから急展開してきました。
この中身について伺いますが、文科省が出しているGIGAスクール構想の実現の説明の中には、公正に個別最適化された学びを全国の学校現場で持続的に実現させると説明されています。
個別最適化ということはどういうことをいっているのか、ご説明をお願いします。

増田指導部長 文部科学省が令和元年六月にまとめた新時代の学びを支える先端技術活用推進方策(最終まとめ)では、公正に個別最適化された学びについて、多様な子供の一人一人の個性や置かれている状況に最適な学びを可能にしていくことと示されております。

斉藤委員 多様な子供の一人一人の個性や置かれている状況に最適な学びを可能にしていくことと示されているということですが、では、具体的に、この構想の教育現場への導入に当たって、都教育委員会としてはどのような話し合いが行われてきたのでしょうか。

谷企画調整担当部長 校内通信ネットワークと一人一台端末について、国の補助を活用して整備を行いたいと希望する区市町村教育委員会が早期かつ円滑に対応できるよう、支援等について検討いたしまして、都教育委員会として、今回の補助を予算案に計上することとなったところでございます。

斉藤委員 支援等について検討したということですが、導入することが前提で支援の検討が行われたということだと思います。私は、この構想の中身について丁寧に検討する必要があるというふうに思います。
この構想が二〇二五年までに全学年に全面的に導入するとされていることに対して、都教育委員会として、この教育の目的が何か、学校の現場が、教育の現場がどうなっていくのか、中身についての検討はされているのか、そして、区市町村の各教育委員会や現場の先生方にはどのように説明をされているのか、あわせてお伺いいたします。

谷企画調整担当部長 GIGAスクール構想につきましては、国の施策でございますので、国が市町村に対して説明を実施しているところでございます。
都教育委員会としては、これらの国の通知につきまして区市町村にも通知を行うことにより、情報提供を行っております。
また、都独自の支援について検討し、これについて実施するために、区市町村教育委員会には説明を実施しているところでございまして、区市町村からは、導入の支援となることから、大変ありがたいとの声をいただいております。
なお、教員への説明については、必要に応じて区市町村教育委員会が行うものと認識しております。

斉藤委員 あくまでも国の施策だということで、教員には区市町村が必要に応じて説明するということですが、私は、このことは、教育にかかわる方々、現場の多くの先生方のコンセンサスがとれた上で行っているのかということに非常に疑問を感じます。
支援について、ありがたいという声があったということですが、私も、タブレットなどの端末を使った学びを全て否定するものではありません。ネット環境の整備がおくれているところや、端末をふやしたいという自治体もあるかと思います。また、発達障害などを抱えて読み書きが難しい子でも、端末だと学びやすいということもあるということは承知しております。
しかし、一人一台の裏にどういうことがあるのか、これは冷静に検討しなければならないと思います。
皆さんご存じのことだと思いますが、この構想を提言したのは、経産省の「未来の教室」とEdTech研究会というところです。
この研究会では、アメリカのボストンコンサルティンググループ社が事務局を務めていましたが、この会社は、アメリカで公立学校の廃校と公設民営学校への置きかえを推進してきた企業です。
アメリカでは、PC端末で授業を行うことで、正規免許を持たない時給十五ドルのアルバイトが、一人で百三十人の生徒を監視するというような授業になっているということが報じられています。
こういうことで学校といえるのかどうか、本当にすごい事態だというふうに思いますが、アメリカの公教育の民営化に詳しい教育研究者の鈴木大裕さんは、日本全国で教員不足が叫ばれているときに、一人一台端末は、財政的にも優先順位がおかしい、政府が出すのは初期投資の予算だけであり、数年後にはランニングコストが自治体の財政を圧迫する、日本でも教員不足をPC端末で補う動きが出てこないか懸念すると指摘しています。
まさに経済対策として教育現場を市場と捉えて入り込んでくる、この一人一台の構想が、その先にどんなことにつながるのか、これは都教育委員会としてもしっかり検討していく、教育に携わる方々がきちんとこれを検討していくという必要があると思います。
こういう中だからこそ、来年度に予算をつけてまで導入を決定するというには、余りに拙速なんじゃないかというふうに思いますが、いかがでしょうか。

谷企画調整担当部長 GIGAスクール構想における校内通信ネットワーク整備については、国が補助を実施するのが令和二年度までとされております。また、一人一台端末整備については、令和五年度までに整備を行うこととされており、来年度から国の補助を活用したいという区市町村に対応する必要がございました。
このため、来年度予算案として、区市町村への補助を計上したものでございます。
なお、スマート・スクール・プロジェクトや都内のICT環境整備促進の方針と、この方向性については合致しているものと考えております。

斉藤委員 校内ネットワーク整備の補助は来年度だけ、一人一台の導入も二〇二三年度までという短期間であるということに、導入を急がせる意図を感じざるを得ません。だからこそ、都教育委員会としても、このことがどういう結果を教育現場に招くのか、現場の声とともに検証する必要があると思います。
子供たちが端末でそれぞれ異なる課題に取り組むようになれば、それが行き過ぎれば、集団の中での学び、人格の形成を目指す本来の学校教育のあり方が根底から崩れてしまうと、教職員組合からも懸念の声が上がっています。
このGIGAスクール構想の導入に当たって、今後も都教育委員会として、これからも広く意見を聞きながら丁寧に検討していく必要があると思いますが、いかがですか。

谷企画調整担当部長 引き続き、区市町村教育委員会とは、都の行う補助制度を説明する際などを活用して、必要に応じて意見交換を行うことになるものでございます。

斉藤委員 ぜひ区市町村教育委員会とも丁寧な意見交換を行っていただきたいというふうに思います。現場の先生からも声を聞いて、集団の中の学びから人格の形成を目指す本来の公教育のあり方が変わり得る、こういうあり方について、しっかりとその先のことも考えた上での検討を進めていただきたいというふうに思います。

 

人権としての性教育の推進を

 

斉藤委員 次に、性教育について伺います。
一昨年度来、都議会では性教育の取り組みについて議論が発展し、子供たちが科学的な知識を学ぶことができる性教育を求める世論が大きく高まりました。
その中で議論の契機となった私の地元の足立区立の中学校で行われている性教育についても、保護者の了解を得ながら、今も生徒たちが人権としての性やLGBTなどさまざまな性について学び、みずから適切な意思決定や行動選択を行うための豊かな性教育を展開しています。
また、都教育委員会では、二〇一八年度から、産婦人科医を外部講師として招いたモデル授業を始めています。
こうした性教育の取り組みが進んでいくことは、子供たちがお互いを尊重し、自分自身を大切にするための行動選択をする能力を培うためにも、とても重要な前進だと思います。
今回は、この取り組みを進めていくための条件整備にかかわって質問をしたいと思います。
まず、モデル授業について伺います。
産婦人科医を外部講師として招いたモデル授業の今年度の取り組み状況と内容について伺います。

瀧沢指導推進担当部長 都教育委員会は、今年度、産婦人科医を外部講師として招聘したモデル授業の実施を、昨年度の中学校五校から十校に拡大し、その取り組みを広くほかの学校に周知するなどして、児童生徒が正しい知識を身につけ、適切に意思決定や行動選択ができるよう、区市町村教育委員会等と連携して各学校を支援してまいりました。
モデル授業では、学習指導要領に示されていない内容を含む授業や、保護者の理解を得る方法等について検証してまいりました。

斉藤委員 モデル授業を昨年度の五校から今年度は十校に拡大して、その取り組みを広くほかの学校に周知してきたということです。
昨年度末に改定された新しい性教育の手引には、授業後の生徒と保護者へのアンケートの結果が掲載されています。専門家による説明は効果的でしたか、また、授業の内容は今後役に立つと思いますかという質問に、ともに九割以上がそう思うと答えていて、非常に高評価をいただいているということがわかります。学習指導要領を超える内容でも、これだけ支持が得られているということがわかったというのは、とても画期的なことだと思います。
また、今年度からは、学校区内の教職員に対して授業を公開する形で行ってきたということも伺いました。今年度は、モデル授業を行った中学校の教職員からもアンケートをとっているということですが、どういう声が寄せられているのか、教えてください。

瀧沢指導推進担当部長 教員からは、医師による専門的な講義は説得力があった、所属校でも生かしていきたいなどの感想が寄せられました。

斉藤委員 自分の学校でも生かしていきたいという前向きな感想があったということで、やはり科学的知識に基づいた性教育の必要性が、教職員の間でも認識されているのではないかと思います。
私は、先日、この都のモデル授業を行っている産婦人科医の方のお話を伺う機会がありました。授業では、性行為の結果としての妊娠について、科学的に理解することだけでなく、自分の健康を守り、自分と他者を大切にする生き方そのものを学ぶ人権教育であるということを意識して教えているということでした。
女子生徒には、今、妊娠したら、赤ちゃんを産んで育てられますかと問いかけ、男子生徒には、もし彼女が妊娠したら、産んでもらって一緒に育てていけますかと問いかけて、自分の性行動について考える授業を行っているということです。
さらに、何かあったときにはクリニックに来るようにと、地域で生徒たちの相談を受ける役割を果たされているということもわかり、子供たちの支えになる大きな意義があると感じました。
こうした取り組みをさらに広げていくためには、公開授業に参加した教職員だけでなく、全ての学校の教職員に共有されていくことが必要だと思います。
モデル授業の内容や生徒、保護者、教職員からのアンケートなどの声について、どのように周知を行っているのか、伺います。

瀧沢指導推進担当部長 都教育委員会は、性教育の手引に掲載した実践事例と、モデル授業の内容や生徒、保護者及び教員の感想などを、区市町村教育委員会の担当者連絡会や保健体育科主任連絡協議会等を通じて周知しております。

斉藤委員 モデル授業の内容や生徒、保護者、教員の感想、それと、新しい性教育の手引に掲載した実践事例についても、保健体育科主任連絡協議会等を通じて周知しているということです。
新しく改定された性教育の手引については、この後、また取り上げたいと思いますが、この間、かつての七生養護学校での心と体の学習に対する不当な介入が行われ、学校現場での性教育の取り組みが長期にわたって萎縮してきてしまった中では、都教育委員会がみずから性教育について周知していくということは、現場の取り組みを大きく励ますものになると思います。
ぜひ続けていただきたいというふうに思いますが、来年度は何校でこのモデル授業を行う予定か、教えてください。

瀧沢指導推進担当部長 来年度は、婦人科医を活用した授業を実施する学校の募集枠を三十校に拡大いたします。

斉藤委員 来年度は三十校ということで、今年度の三倍にふやしたということは重要だと思います。しかし、六百を超える都内の公立中学校の数からすると、まだまだ少ない状況です。今後も、校数をふやしていくことと取り組みを継続していくことを求めます。
現在のモデル授業では、外部講師は全て産婦人科医となっていて、とても重要な役割を果たしていただいているというふうに思いますが、一方で、取り組みを広げていくためには、産婦人科医の方だけでは担い手不足になるのではないかという指摘があります。
今後は、助産師等の活用なども検討をして取り組みを進めていく必要があると思いますが、いかがでしょうか。

瀧沢指導推進担当部長 産婦人科医に加えて、助産師や保健師等を含め、学校の実態に応じた外部講師の活用について、今後とも、区市町村教育委員会の担当者連絡会や保健体育科主任連絡協議会等において紹介してまいります。

斉藤委員 助産師等を含めて、外部講師の活用について紹介をしていくということです。ぜひお願いをしたいと思います。
次に、昨年度末に改定された性教育の手引について伺います。
今回の改定は、前回の手引から、先ほど申し上げました都立七生養護学校の性教育の実践を不適切な性教育と位置づけ、積極的な性教育を抑制しようとした表現が削除されたということが、まず大きな特徴です。
その上で、子供たちが性に関する情報を正しく選択して、適切な意思決定や行動選択ができることを性教育の意義として再認識していること、また、基本方針に主体的、対話的で深い学びを挙げて集団学習の重要性を示したことは、大きな前進だというふうに思います。さらに、性的指向及び性自認の多様性に対しての配慮や支援の必要性も記している点も重要だと思います。
現代の児童生徒は、手引で示されているとおり、社会環境の変化や情報社会の進展によって、さまざまな問題に直面しています。ネット上には性に関する情報が氾濫し、SNS等を介して性犯罪に巻き込まれる可能性や、望まない妊娠や性感染症など、児童生徒たちが抱える今日的課題に向き合って解決していくための性教育の取り組みが求められています。その取り組みを推進していくためにも、その抑制となる要素、また、抑制となり得る要素については、改めて不断に見直しをしていくということが必要だと思います。
その視点から伺いたいと思いますが、新しい性教育の手引では、指導の充実に当たって、発達の段階を踏まえること、学校全体で共通理解を図ること、保護者の理解を得ることなどに配慮することが大切ですとしています。
まず、発達の段階というのは、手引の全体にわたって繰り返し記載されていますが、具体的にどういうことを示しているのか、伺います。

瀧沢指導推進担当部長 発達の段階とは、身体的発達、情緒的発達、知的発達や社会性の発達など、さまざまな側面における年齢を基礎とした共通して見られる特徴を指しております。
具体的には、小学生期は、心身の発育、発達が顕著であり、基本的な生活習慣の確立を図りながら、健康課題に対して自立的に取り組む時期であります。中学生期は、心身が劇的に変化するとともに、知的能力の発達も著しく、心身の健康の保持増進に主体的に取り組む基盤を培う時期であります。高校生期は、中学生よりさらに心身の全面にわたる発達が進み、生涯にわたって心身の健康を保持増進する態度や習慣が確立する時期でございます。

斉藤委員 小学生期、中学生期、高校生期とお答えをいただきましたが、ちょっと中身は、クロスする部分もあって、非常に曖昧なものにも聞こえます。発達の段階について、学習指導要領に準じているということだと思いますが、この言葉によって、性教育の実践が行き過ぎや過激と判断されて攻撃されてきた経緯があります。しかし、この発達の段階というのは、どういう根拠に基づくものなのか、明確に示されているわけではありません。
この曖昧な規定を見直す必要があると思いますが、ご答弁の前段では、身体的発達、情緒的発達、知的発達や社会性の発達などにおける年齢を基礎とした共通して見られる特徴を指しているという説明がありました。私は、これは一つのポイントになる視点ではないかと思います。
国際セクシュアリティ教育ガイダンスでは、性教育の内容項目を四つの年齢段階に分けています。発達の段階という言葉で、身体的、情緒的、知的発達の差を児童生徒個々にまで当てはめて個別指導に導くという考えがまだ残っていますが、本来は、年齢を基礎として、身体的発達や直面する社会的要素は共通するものだというふうに思います。
この点について、我が党はこれまでも指摘をしていますが、年齢の点でいいますと、刑法では、性的合意ができる年齢というのが十三歳とされています。しかし、十三歳、中学二年生に対して、今、現状で性教育が十分に行われていない状況だと思いますが、この矛盾については、都教委はどのように認識されているでしょうか。

瀧沢指導推進担当部長 学校における性教育は、校長のリーダーシップのもと、全体計画や年間指導計画に基づいて、全ての教職員が全員共通認識をして、全ての児童生徒に、学習指導要領に示された内容を発達段階に即して組織的、計画的に指導しているものというふうに理解しております。

斉藤委員 済みません、今のご答弁は、私、次の質問で予定していたものだと思います。
先ほど、十三歳、中学生二年生の年齢が、刑法では性的合意ができる年齢とされているという状況、これに対して、学校の現場では、性教育というのが十分には現状では行われていないという、この矛盾についてはどういうふうに認識をされているかという質問です。

瀧沢指導推進担当部長 現在の性情報氾濫などのもとでは、児童生徒が被害者や加害者になる可能性がございます。
そのため、刑法を含む関係法令等について、教職員や保護者との間で情報を共有することは重要であるというふうに考えております。

斉藤委員 教職員の間で、この刑法のことについても情報共有していくということは大事だというご答弁でしたけれども、ここについても矛盾があるわけですね。こういう点からも、性教育の取り組みというのは喫緊の課題だというふうに思います。別の問題として、この刑法のことについては考えていかなきゃいけないという側面もありますが、やはり子供たちが置かれている現状に即した教育を、年齢ごとに、年齢を基礎として行っていくということは重要だというふうに思います。
次に、保護者の理解を得るということについて伺いますが、モデル授業の中では、その点についてはどのように実践されているのでしょうか。

瀧沢指導推進担当部長 学校における性教育は、校長のリーダーシップのもと、全体計画や年間指導計画に基づき、全ての教職員が共通認識をし、全ての児童生徒に、学習指導要領に示された内容を発達段階に即して組織的、計画的に指導しております。
学習指導要領に示されていない内容を含む指導を行うモデル授業の実施に当たっては、事前に学習指導案を対象の保護者全員に提示して説明し、保護者の理解、了解を得た生徒を対象に指導を行っております。

斉藤委員 モデル授業の実施に当たって、事前に学習指導案を保護者全員に提示して説明し、保護者の理解、了解を得た生徒を対象に指導を行ったということです。新しい手引では、保護者に提示した通知例を示して、活用しやすいようにしている点というのはよかったというふうに思います。日本では十分な性教育が学校教育として浸透していない中で、保護者の理解を丁寧に得ていくということは必要だというふうに思います。
しかし、一方で、性教育以外の授業で、保護者にお伺いを立ててから行っているというような授業はありません。性の問題を特異なものとして捉えるようなこのやり方は、やはり早期に解消していけるように取り組みを進めていく必要があるというふうに思います。
まさに、先ほども申し上げましたが、モデル授業、都の取り組みにおいて、学習指導要領を超える指導であっても、九割以上が支持をしたということがありました。これが、今、子供たちの発達に即しても求められている性教育ではないかということ、こういう認識を、保護者とも協力して広げていくための取り組みをしていただけるということをお願いしたいというふうに思います。
この保護者の理解についてですが、モデル授業では保護者の理解を得られず、個別での指導になったというケースはあるのでしょうか。また、その場合に、事後のアンケート等において、個別指導になったことへの生徒自身の理解や感想は聞き取っているのでしょうか。

瀧沢指導推進担当部長 モデル授業におきましては、一部の生徒が個別やグループ等での授業に参加をいたしました。
このことにつきまして、個別やグループ等で授業に実際に参加した生徒からは、男女一緒に学ぶことには抵抗感があった、高校に入ってから学びたいなどの感想が寄せられております。

斉藤委員 保護者との判断の上で個別での授業になった生徒に対しては、今後も、子供の権利に照らして、ほかの生徒と分かれて個別で授業をしたことが本当によかったのかどうか、事後に丁寧に聞き取って、今後の取り組みのあり方の検討につなげていただきたいというふうに思います。
また、手引では、学習指導要領を超える性教育の指導に当たっては、学校全体での共通理解を図ることが大切であるとしていますが、この間のご答弁にも繰り返し出ておりますが、都教育委員会がそのためのイニシアチブをとって取り組むということが重要だと思いますが、認識を伺います。

瀧沢指導推進担当部長 指導に当たっては、発達の段階を踏まえることや、保護者の理解を得ることに加えて、学校全体で共通理解を図ることが重要であり、今後とも、区市町村教育委員会の担当者連絡会や保健体育科主任連絡協議会等を通じて周知をしてまいります。

斉藤委員 今後とも、保健体育科主任連絡協議会等を通じて周知していくということです。ぜひ、モデル授業の共有だけでなく、足立区の中学校で行われている先進的な取り組みの事例についても積極的に紹介をしていくなど、都教育委員会としての取り組みを強化していただきたいというふうに思います。
今回の性教育の手引の作成プロセスについて伺います。
性教育の手引の改定に当たっては、改定のプロセスを透明にし、公開するとともに、幅広い見識を集めるように求める陳情が、一昨年の秋に、提出されて議論が行われました。
我が党は池川友一都議が質疑をして、都民の声に即して作成するように求めましたが、実際には、改定版の作成過程の議事録は公開されず、要旨のみの公開にとどまり、パブリックコメントも行われませんでした。
なぜ広く議論が行われなかったのでしょうか。

瀧沢指導推進担当部長 性教育の手引の改定を行った作成委員会は、児童生徒の個人情報を取り扱う場合もあることや、委員の自由かつ率直な意見の交換を保障する観点から非公開とする一方で、どのような議論が交わされたのかを都民の方に理解していただけるよう、個人情報等に十分に配慮した上で議事録の要旨を公開いたしました。
作成委員会は、学識経験者、医師のほかに、公立学校長、保健体育科や養護教諭等の学校の代表者、小中高等学校及び特別支援学校の保護者の代表者等により構成されており、さまざまな立場の方々から多角的にご意見を聴取いたしました。
パブリックコメントにつきましては、性教育の手引は教師用の指導書であることから行っておりません。

斉藤委員 性教育の手引は教師用の指導書であるから行っていないということなんですが、これによって影響が、これにかかわるのは都民、子供たち全体なんですね。だからこそ広い議論が必要だと。専門的な見地を集めてということですが、手引の作成委員会の委員は、手引の後ろの方にも記載がされていますが、ほとんどが学校関係者ということで、性教育の専門家というのはほとんどいないわけです。医師の数もごく少数です。
この間、国際的標準となっている国際セクシュアリティ教育ガイダンスでは、もっと幅広く、性と生殖の健康に関する活動をしている人々や多様性を代表する若者、研究者など、幅広く知見を集めて合意形成を行う必要があるとしています。
今後は、都民に開かれた手引の改定や策定決定が行われるように強く要望いたします。
新しい性教育の手引には、性同一性障害等に係る児童生徒に対するきめ細かな対応について示されたことも一歩前進だということを先ほども申し上げました。今、児童や生徒の多様性を認め、誰もが尊重される教育現場をつくることが喫緊の課題になっています。
しかし、手引の実践編では、その例示がありません。これはなぜでしょうか。

瀧沢指導推進担当部長 性教育の手引には、文部科学省からの通知である性同一性障害に係る児童生徒に対するきめ細やかな対応の実施等についての内容を掲載し、教員の児童生徒への対応のあり方等について示しております。
手引の実践編では、学習指導要領に明記されています各教科等の項目の中から、性教育として位置づけられる内容を中心に指導事例を掲載いたしました。

斉藤委員 要するに、学習指導要領に記載がないからだということだと思いますが、理念だけが示されていても、教育の現場でどのように扱うことができるのか、そういう例示がなければ、取り組みはなかなか進まないものだというふうに思います。
私は、足立区の中学校での性教育の授業に参観をさせていただきました。中学校二年生の生徒たちがLGBTやジェンダー平等について学ぶ授業でした。性自認や性的指向はさまざまで、お互いが尊重し合うことが大切なんだと学んだ後に、こういうときはどうするという問題が出されていました。
男の子同士で好きな子の話をしていたときに、ある男の子が、僕は実は何々君が好きだと、男の子が好きだということを告白したときに、あなたは何といいますか、こういう質問に、グループディスカッションして、おのおの回答を発表します。大人の私が聞いていても、一瞬、何と答えようと戸惑う内容でしたが、生徒たちはとても生き生きと回答していました。〇〇君が好きなんだね、応援するよとか、仲よくなれるといいねなど、異性間の恋愛と同じような言葉が出てきました。この授業で、私は子供たちの柔軟性をとても実感して、早期の人権教育の意義というのをとても実感することができました。
残念ながら、学習指導要領には、こうした今日的課題、今求められている教育に対応する内容がありません。都教育委員会としても、ぜひSOGIの観点からも、先進的な取り組みをしている事例を積極的に各学校で共有するようにしていただきたいというふうに思います。
この間、国際的な標準となっております国際セクシュアリティ教育ガイダンスというのがありますが、科学と事実に基づいた内容や人権的アプローチに基づいていること、また、ジェンダー平等を基盤にしていることなど、包括的な性教育を行うことを求めて、実際に多くの国で実践されています。
人権の尊重や、性自認及び性的指向などSOGIの観点、ジェンダー平等など、今日的課題を踏まえた性教育の重要性について、都教育委員会の認識を改めて伺います。

瀧沢指導推進担当部長 学校における性教育は、児童生徒の人格の完成を目指す教育の一環であり、人間尊重の精神に基づいて行うとともに、児童生徒が性に関する正しい知識を身につけ、適切な意思決定や行動選択ができるよう進めていく必要がございます。
また、性自認等の児童生徒が自分らしさを発揮し、生き生きと学校生活を送ることができるよう、教員が正しい理解と認識を深め、性教育に取り組んでいくことが重要であります。

斉藤委員 人権の尊重に基づくことや、性自認等のSOGIの理解と認識を深めて、性教育に取り組んでいくことが重要というご答弁でした。とても大切な視点だと思います。
我が党はこれまでも、性教育について、現場の先生たちの取り組みを尊重すること、そして、国際的な到達点に学んで、現場の努力を支援することが重要だと求めてきました。
国際セクシュアリティ教育ガイダンスでは、まさに人権的アプローチや科学的教育、SOGIの観点やジェンダー平等などの視点を持つ包括的性教育が必要であるとしています。
世論に大きく後押しされて、都教育委員会での性教育の前進が始まったところだと思いますが、今後も、豊かな性教育を発展できるように現場の取り組みを尊重し、支援を強化していただくように求めて、質問を終わります。