保育士の平均賃金が低すぎる背景には、保育のための予算が少ないと同時に、それが人件費には十分あてられていないことがあります。とくに株式会社立の保育園では、人件費の割合が低く抑えられながら、多額の役員報酬が支払われている実態も。保育への委託費や補助金がきちんと生かされるよう求めました(2024年2月29日、本会議・一般質問)
〇斉藤まりこ 次に、保育について質問します。
保育士の処遇は、保育の質の維持向上のために重要な要素です。都内の保育士の平均賃金は、全産業平均より月十二万円以上低い状況です。保育士の処遇改善は引き続き重要な課題ですが、知事の見解を伺います。
保育士の賃金の低さや配置の少なさの大本にあるのは、国と自治体の保育のための予算があまりに少ないことです。同時に、その少ない金額が人件費に十分に充てられていない場合があります。
国は、認可保育園の基本的な運営費のうち、約八割が人件費だと想定しています。一方で、足立区の株式会社立の認可保育園の場合、一昨年度の事業活動収入に占める人件費の割合は平均五六%で、中には三〇%台の保育園もありました。社会福祉法人立では平均七一%です。施設ごとの事情等によって、ある程度増減することはありますが、あまりに低い場合は、引上げが必要です。
都内にある人件費の割合が四六%の株式会社立の保育園で働いている保育士さんからお話を伺いました。その保育園には、園庭がありませんが、ぎりぎりの人数で運営しているため、お散歩も週一回程度、クラス合同で行くのがやっとだそうです。
また、人が足りないという理由で、ゼロ歳児クラスは、夏にも沐浴ができず、一歳児以上のクラスの子たちも水遊びができません。人手がぎりぎりのため、保育士が休憩を取るのも困難です。
世田谷区では、区独自の上乗せ補助について、人件費割合が五〇%を切る施設には出さないというルールをつくっています。都としても、委託費や処遇改善のための補助が適切に人件費に回るようにするための仕組みを強化する必要があると考えますが、いかがですか。
東京都は、以前、人件費を含む保育施設の財務情報や都の補助による賃金の改善状況の分析を行い、結果を公表しましたが、その理由について伺います。また、二〇一七年度の分以降は行われていません。定期的に分析、公表を行うべきではありませんか。
自治体から認可保育園に支払われる委託費は、人件費などその園での保育に必要な経費に充てるというのが本来の原則です。しかし、実際は、弾力運用という形で、非常に幅広く例外が設けられ、その保育園以外のところで使えるようになっています。このことが、人件費割合が低くなる背景にあると指摘されています。
私たちが東京都に開示請求した文書によると、足立区内では、昨年度は、二十二か所の株式会社立の保育園が合計で約一億八千万円を法人本部の経費に充てていることなどが分かりました。その中には、一つの保育園で二千万円近い金額を法人本部に回しているところもありましたが、その法人の持ち株会社の役員の報酬等は、三名分で約一億五千万円に上っています。
委託費は、本来、その保育園の運営のための人件費等に充てられるべきものです。委託費の弾力運用について規制の強化を行うべきですが、いかがですか。答弁を求めて、質問を終わります。(拍手)
◯知事(小池百合子君) 斉藤まりこ議員の一般質問にお答えいたします。
保育士の処遇改善についてのお尋ねがございました。
都は、保育士が専門性を高めながら、やりがいを持って働くことができますよう、キャリアパスの仕組みを導入する事業者を対象といたしまして、保育士の処遇改善の取組を支援しているところでございます。
その他の質問につきましては、関係局長から答弁いたします。
◯福祉局長(佐藤智秀君) 三点のご質問にお答えいたします。
まず、保育士の人件費についてでございます。
都は、保育士等キャリアアップ補助におきまして、事業者に対し、職責や職務内容等に応じた賃金体系の届出や賃金改善の実績報告などの提出を求めております。
続きまして、保育士等キャリアアップ補助についてでございます。
都は、保育士等の処遇改善の状況等を把握し、さらなる支援策を検討するため、平成二十七年度及び二十九年度の保育士等キャリアアップ補助による賃金改善の状況などを分析し、結果を取りまとめて公表したものでございます。
保育士等キャリアアップ補助では、事業者に対し、職責や職務内容等に応じた賃金体系などの届出や賃金改善の実績報告などの提出を求めておりまして、また、施設ごとの財務情報等を公表しております。
最後に、保育士の委託費の弾力運用についてでございます。
国は、通知によりまして、委託費の弾力運用が可能な使途の範囲や金額を示しております。