保育事故なくし、不登校ふやさない条件整備を

2018年12月12日 都議会での一般質問

七年前、我が子が認可保育園に入れず待機児童になったとき、足立区には認可保育園の増設計画が全くありませんでした。これは放っておけないと、足立区で認可保育園の増設を求める運動を立ち上げたことが私の政治家としての原点です。

その運動の中で、保育施設で最愛の我が子を亡くしてしまった親御さんたちがいることも知り、ご遺族のお母さんたちと一緒に、保育の基準を緩和していく対策は絶対にしないでほしいと、都や国に何度も足を運んで訴えてきました。

我が子を亡くしたばかりのお母さんが、失意の中で、涙に詰まりながら、力を振り絞って国や都に訴えていた姿を私は忘れられません。

ご遺族のご両親の訴えを受けて、都は、認可外保育施設への年一回の巡回指導体制をとることになりました。

しかし、死亡事故は繰り返されています。十月に練馬区の施設でまた小さな命が亡くなりました。保育従事者の配置基準などの違反を繰り返している認可外施設での死亡事故は、ことしに入ってから都内で二件目です。

あってはならない保育施設での死亡事故が繰り返し起きている東京都の現状について、知事はどう認識していますか。

東京都の認可外保育施設への立入調査は、全国比較ができる二〇一六年度の実施率が二一・二%で、東京都以外の道府県市の実施率の八四・六%と大きくかけ離れています。

立入調査の実施率がほかの自治体と比べても明らかに不十分な実態について、知事はどう認識していますか。

児童福祉法に基づく年一回の立入調査を行うためには、今の四倍から五倍近くの人員体制が必要です。法に基づく立入調査が十分に実施できるように人員をふやす必要がありますが、いかがですか。

二〇一六年の中央区の認可外保育施設での死亡事故について、検証委員会の報告書では、巡回指導の結果を公表することが提言されました。

しかし、現時点では、都が発行する指導検査報告書に簡単なまとめが掲載されるにとどまっています。保護者が把握できるよう、施設ごとの結果を公表すべきと考えますが、いかがですか。

大田区で死亡事故を起こした施設は、保育士が一人もいないなど深刻な状況があったにもかかわらず、事故が起きるまで改善勧告が出されませんでした。

ことし六月の本会議で、東京都は、指導監督を強化していくと答弁しましたが、厳格な対応がとられるよう、しっかりと具体化しなければなりません。

必要な対応がとられなかった背景の一つとして、改善勧告などの指導については、さまざまな要素を総合的に判断するとされ、実態として判断基準が明確でないことがあります。

実施する基準を明確化することを含め、必要なときに改善勧告などの対応が速やかに行われるようにしていくべきだと考えますが、いかがですか。

保育士の配置基準を半分まで切り下げた企業主導型保育が始まってまだ二年ですが、既に多くの問題が噴出しています。

世田谷区の企業主導型保育所では、十月末に保育士が一斉に退職し休園となりました。今年度、保育士の一斉退職や職員不足、在園児童の減少により、休園や継続困難等の問題が生じた施設は、世田谷区だけでも五園に上ります。全国でも不正などで助成が取り消された施設や休園が相次いでいます。

背景には、企業主導型保育事業が区市町村の関与なく行えるという制度の根本問題があります。自治体の保育の整備計画と整合性がとられず、改善を求める声が自治体からも上がっています。インターネットの申請だけで助成金がおりるなど、確認も極めて不十分です。

国会で、少子化対策担当大臣も、利用実態の把握についてはこれまでしっかりと対応できておらず不十分、自治体とも連携しつつ取り組まれることが極めて重要と述べざるを得ませんでした。

知事は、こうした企業主導型保育で起きている問題をどのように認識していますか。

国は、企業主導型保育制度の見直しを図るための検討会を設置することを決め、東京都も参加することになりました。東京都は、どのような立場で検討会に臨むのですか。新設を停止することを含めた抜本的な改善を求めるべきだと思いますが、いかがですか。

 

不登校について

 

次に、不登校についてです。

都教育委員会の調査によると、近年、都内公立小中学校の不登校の子供が増加し、二〇一二年度の八千三百八十一人が二〇一七年度には一万一千九百八十八人と、一・四倍にもふえています。特に私の地元の足立区では、この五年間で一・六倍にもなっています。

かつて足立区では、不登校は東京都の平均よりも少なく、子供たちは学校が好きでした。今の状況に多くの区民の方々が心を痛めています。足立区では、不登校急増の原因の分析を専門家に依頼して、今年度中に報告をまとめる予定にしています。

東京都でも不登校が急増している理由について、都としてどのように考えていますか。都としても、学校の現状を含めて不登校が増加していることについて分析する必要があると思いますが、いかがですか。

今、学校では、子供たちに挨拶の仕方や椅子の座り方、手の挙げ方などの行動を細かく統一する学校スタンダードなどといわれる指導が広がっています。朝読書、中休みのマラソン、お昼休みの掃除、帰りの会の後のプリント学習、七時間授業、多過ぎる宿題などに子供たちは疲弊しています。

あるお母さんは、四年生の息子が家に帰ると、忙しい、忙しいといって宿題を広げながらいらいらしていると心配しています。また、細かい決まりを守ろうとして、少しでも失敗するとパニックになってしまう子供もいます。子供たちにも先生にもゆとりがなく、分刻みの行動が強いられる状況が広がっています。これでは、学校に行きたくなくなる子供がふえるのも無理はありません。

都教委は、こうした小中学校の実態をつかんでいますか。実態を調査し、子供たちがゆとりを持って学校生活を送れるよう、方向性を示すべきではないですか。

また、足立区では、東京都の学力テストの自治体ランキングが低かったことが問題視され、学力向上として学校間競争があおられてきました。区のテストも行われ、学校別の平均点が公表されて、下位の学校には指導が入り、先生は、点数を上げようとして過去問の練習をさせている実態があります。点数がとれそうにない子供は別室でテストを受けさせ、集計から外すといった教育が行われています。

二〇一三年には、全国学力テストが全員に受けさせる形で復活しました。テストの結果で能力がはかられる環境の中で、子供たちが自己肯定感を持ちづらくなっています。当初の目的がどうであれ、学力テストが序列化の材料として扱われ、競争をあおり、子供たちを傷つけていることは問題だと思いますが、いかがですか。

学力テストは、学習状況や授業の改善に役立てるのが本来の目的だとすれば、過去問を繰り返しやらせるような指導は不適切だと考えますが、いかがですか。

今年度は、新たに六県が県単位の学力テストを中止しました。東京都も、本来の趣旨に照らせば、抽出の調査で十分です。弊害の多い全員対象の学力テストは中止することを求めます。

不登校の問題の解決には、これらの子供を追い詰める学校の現状にこそ目を向けるべきではないでしょうか。

子供たちが学校に行けない要因を取り除き、子供たちが通いたくなる学校をつくり、不登校を減らしていくことが大切だと考えますが、知事、いかがですか。

不登校の子供たちと親への支援も重要です。教室以外の場所なら学校に通えるという子供もいますが、対応できる先生がいないため、別室登校は一日一時間までと決められて帰宅させられたり、担任の先生も授業が詰まっていて、生徒が来ても話もできないという実態があります。

不登校対応の教員加配をふやすなど、学校に来ようとする子供や保護者を励ませるような教員体制の充実を求めますが、いかがですか。

保護者や校長会から要望されているスクールカウンセラーの常勤化や派遣回数の充実をすること、また、スクールソーシャルワーカーの配置や有資格者によるアウトリーチ支援を行う区市町村を支援することを求めますが、いかがですか。

 

水害対策について

 

最後に、水害対策について伺います。

足立区の中川地域では、十四の町会、自治会が、中川や荒川が氾濫した場合のコミュニティタイムラインを作成する先進的な取り組みをしています。

大きな被害をもたらす台風や長雨などが想定されるときに、いつ、誰が、何をするかということを町会、自治会単位であらかじめ確認をして、避難先や助けが必要な人を地域ごとに把握し、住民と足立区とで課題の認識や連携を深める貴重な場になっています。

マイタイムラインを生かす上でも、コミュニティタイムラインの役割は重要です。コミュニティタイムラインの取り組みを広げていくためにも、町会、自治会などへの財政的な支援の拡充が必要だと思いますが、いかがですか。答弁を求めて質問を終わります。(拍手)

 

答弁

 

知事(小池百合子君) 斉藤まりこ議員の一般質問にお答えいたします。

認可外保育施設におけます死亡事故についてのお尋ねがございました。

保育施設で亡くなられたお子様とご家族の皆様にお悔やみを申し上げたく存じます。

また、保育施設におきまして、このような事故が発生するということそのものはあってはならないことと考えます。

都におきましては、認可外保育施設の質の確保を図るために、児童福祉法等に基づきます立入調査に加えて、昨年三月から巡回指導を開始いたしまして、指導監督を強化しているところでございます。

また、重大事故が発生した場合には、直ちに現地確認を実施いたしまして、基準を満たさない場合には、改善指導、改善勧告、施設閉鎖命令等を実施することといたしております。

本年三月に取りまとめられました保育施設等におけます重大事故の検証委員会の提言を受けて、第三者評価の導入や認証保育所等への移行支援、また、巡回指導を行う区市町村への支援などを進めております。

今後とも、認可外保育施設の質の向上に取り組んでまいります。

次に、認可外保育施設に対しましての立入調査についてのお尋ねがございました。

認可外保育施設におきましては、保育サービスの質を確保することは重要でございます。そのため、都は、児童福祉法等に基づいて認可外保育施設に対しまして、書面による報告徴収や立入調査等の指導監督を実施いたしております。

これらに加えまして、先ほど申し上げました巡回指導を開始し、都内全ての認可外保育施設を年一回以上訪問しており、この結果等も踏まえまして立入調査を機動的に実施をしております。

企業主導型保育事業についてのお尋ねでございます。

企業主導型保育事業は、国が平成二十八年度に創設したものでございます。夜間や土日、短時間など、働き方に応じた多様で柔軟な保育サービスで、地域住民の児童を受け入れることができるなど、待機児童対策の一つでもあるとされております。

一方で、整備に際しまして、自治体の関与が少ないことから、保育の実施主体であります区市町村が利用実態を把握できないなど、地域との連携に課題があると認識をいたしております。

次に、不登校についてであります。

不登校は、子供たちの学習の機会が失われたり、将来、社会的に自立することが困難になるなど、かけがえのない子供たちの人生に影響を及ぼすおそれがございます。

不登校の要因や背景は多様かつ複合的であることから、教育のみならず福祉などの視点も含めまして、さまざまな関係機関の協力を得て総合的な施策を講じていく必要がございます。

東京で学ぶ全ての子供たちが生き生きと生活ができて活躍できますよう、より一層魅力ある学校づくりなど、不登校の対策に引き続き取り組んでまいります。

残余のご質問は、教育長及び関係局長からの答弁とさせていただきます。

 

教育長(中井敬三君) 六点のご質問にお答えいたします。

まず、不登校児童生徒の増加についてでございますが、都内公立小中学校における不登校の児童生徒数は、平成二十五年度以降増加しておりますが、子供たちを取り巻く環境や価値観はさまざまであり、不登校の要因や背景も複雑多様化しております。

都教育委員会はこれまで、不登校対策に関する委員会や教育支援センター等の充実に向けた委員会等において、不登校の現状を考察するとともに、対策について検討してまいりました。

今後とも、区市町村教育委員会と連携しながら、各学校における不登校対策を推進してまいります。

次に、小中学校の教育活動の把握についてでございますが、都教育委員会は、毎年、都内各公立小中学校等の年間の教育活動計画である教育課程の編成実施状況を調査し、授業時数や読書活動などの実態を把握しております。

また、小中学校校長会や区市町村教育委員会の担当者による協議会において、ゆとりのある学校生活に関する特徴的な取り組み事例などを情報交換し、互いの参考とする場を設定しております。

情報交換の具体例として、学校行事の精選を行い、準備や練習に費やす子供たちの負担を減らしている事例や、教員の会議の時間を見直し、子供と向き合う時間を確保している事例などがございます。

次に、小中学校における学力調査についてでございますが、都教育委員会が実施している学力調査は、児童生徒の学力の実態を明らかにすることによって、それぞれの教員が授業を改善し、児童生徒の学力の向上を図ることを目的としており、他者や他校との比較を意図しているものではございません。

今後とも、本調査を通して、子供たちに基礎的な知識や技能だけでなく、みずから学ぶ意欲や思考力、判断力、表現力などの資質や能力までも含めた確かな学力を育成してまいります。

次に、学力調査の事前の指導についてでございますが、近年、議員ご指摘のような事例は都内では見られておりませんが、万が一、数値データの上昇のみを目的としていると受け取られるような行き過ぎた事前対策の実態が明らかになった場合には、都教育委員会として、区市町村教育委員会に対し、所管の各学校において調査の趣旨、目的に沿って適切な実施がなされるよう指導していく考えでございます。

次に、不登校生徒対応の教員体制についてでございますが、不登校の要因や背景は、多様かつ複合的であることから、都内公立学校では、管理職、学級担任、養護教諭等の教職員が適切な役割分担のもと、スクールカウンセラー等の専門家や福祉等の関係機関と連携して、児童生徒や保護者に対応しております。

都教育委員会では、不登校対応の充実を図るため、特に不登校生徒の出現率が高い中学校八十六校に対して教員加配を行っています。

引き続き、必要な教員の加配を行うなど、学校が関係機関等との緊密な連携を深めながら、適切に対応できるよう支援してまいります。

最後に、区市町村の外部人材活用への支援についてでございますが、都教育委員会は、平成七年度からスクールカウンセラー活用事業を開始し、その配置を順次拡大してまいりました。平成二十五年度からは全ての小中学校に配置するとともに、平成二十八年度からは勤務日数を年三十五日から三十八日に拡充いたしました。

また、スクールソーシャルワーカーについては、平成二十一年度から区市町村教育委員会が策定する配置計画に沿って経費を補助しております。

学校や区市町村教育委員会は、こうした外部人材を活用して教育相談体制の充実を図るとともに、家庭への支援や福祉等の関係機関との連携を強化しております。

今後とも、学校や区市町村教育委員会が専門性の高い外部人材を有効活用し、不登校対策を推進できるよう支援してまいります。

 

福祉保健局長(内藤淳君) 四点のご質問にお答えいたします。

まず、認可外保育施設に対する立入調査の体制についてでありますが、都は、新規に開設された施設、苦情、通報が寄せられた施設などを中心に立入調査を行っております。

また、年一回、都内全ての認可外保育施設を訪問する巡回指導により、重大な問題が認められた場合には迅速に立入調査を行うほか、夜間や事前通告なしの調査を行うなど機動的に対応しております。

調査の結果、基準に適合していない場合は、文書で指摘し、改善を求めており、改善状況については、巡回指導でも確認しているところでございます。

今後とも、立入調査と巡回指導の連携により、指導監督を機動的に実施し、施設の適正な運営を確保してまいります。

次に、認可外保育施設に対する指導結果についてでありますが、都は、立入調査について指導監督基準に規定されている全ての項目を調査し、その結果を施設ごとに公表しております。

巡回指導におきましては、職員配置、保育内容等について、各施設の保育の状況に応じて指導助言を行っており、その結果を重大な問題が認められた施設への早期の立入調査につなげるなど機動的な指導監督に活用しております。

次に、認可外保育施設に対する改善勧告についてでありますが、都は、児童福祉法等に基づき、認可外保育施設に対しまして立入調査等の指導監督を実施しております。

立入調査では、設備及び運営に関する基準に適合しない場合には、文書による改善指導を行い、指導によっても改善されない、または改善の見通しがない場合は改善勧告を行っております。

今年度は、夜間の一人勤務が常態化し、改善の見通しがない施設など複数の施設に対しまして、既に改善勧告を実施しております。

今後とも、認可外保育施設の指導監督に当たりましては、改善勧告を含め厳正に対応してまいります。

最後に、企業主導型保育事業に係る国の検討会についてでありますが、検討会では、事業者団体、公認会計士等の構成員が、保育の質の確保、自治体との連携、指導監査のあり方などを議論することとなっており、都もこれに参加を求められております。

企業主導型保育事業については、都内区市町村から、設置場所、地域枠の設定、入所児童の把握など、保育の実施主体である区市町村との連携における課題があることが指摘されております。

都といたしましては、こうした課題を踏まえ、制度の適切な運用について意見を述べてまいりたいと考えております。

 

生活文化局長(浜佳葉子君) 防災に関する町会、自治会への支援についてでございますが、現在、都は、町会、自治会活動を支援する地域の底力発展事業助成を行っております。

この助成は、防災活動も対象としておりまして、消火訓練や防災マニュアルの作成を初め、タイムラインを活用した訓練等についても助成対象とすることができます。

今後とも、こうした支援を通じて、町会、自治会が実施するさまざまな防災活動の促進を図ってまいります。