少人数学級、「生理の貧困」、トイレ洋式化…教育条件の改善を

文教委員会 2021年3月16日

少人数学級をさらに前へ

 

斉藤委員 日本共産党の斉藤まりこです。よろしくお願いします。

まず、少人数学級について伺います。

現在の学級編制の標準は、法的には小学校一年生のみ三十五人で、二年生は財政措置により三十五人にしていますが、国は、四十年ぶりに義務標準法を改定し、来年度から五年かけて、小学校を三十五人学級にするとしています。

さらに国会では、先日、菅首相が我が党の質疑に対し、中学校も含め検討するというふうに答弁をしました。

学習面や生活面のよい効果はもとより、コロナ禍のもとでの子供たちへのケアや感染防止のための身体的距離の確保を考えれば、より早く小中高全学年で少人数学級を実現することが求められています。

今定例会で、我が党は、こうした立場から、本会議、予算特別委員会でも少人数学級について質問しました。きょうは、それらを踏まえて質疑を行いたいと思います。

まず、全国的な少人数学級の実施状況についてです。

東京都が国の標準より少人数の学級編制にしているのは、中学校一年生の三十五人学級だけですが、全国の道府県では、東京以上に少人数学級を実施している県が多数あります。

今年度、東京より学年を広げたり、人数を少なくしたりして少人数学級を実施しているのは何自治体ありますでしょうか。

田中地域教育支援部長 文部科学省の調査によると、令和二年度において、東京都の学級編制基準を下回る学級編制基準の弾力的運用を実施していると考えられる道府県の数は四十一団体です。

斉藤委員 東京都の学級編制基準を下回るというのは、要するに学級の児童生徒数が少ないという意味ですね。四十一自治体、ほぼ九割の道府県は、東京都より少人数学級を充実させて実施しているということです。東京都はおくれているというふうにいわざるを得ません。

一方で、東京都も、中学一年生については、国に先駆けて三十五人学級にしています。

そこで伺いますが、東京都が小学校一、二年生と中学校一年生について三十五人学級を可能にしたのはいつですか。

浅野人事部長 都教育委員会では、小一問題、中一ギャップの予防、解決を図るため、平成二十二年度から、教員加配により、学級規模の縮小とチームティーチング等の活用を学校の実情に応じて選択できる取り組みを開始いたしました。

こうした取り組みや国の法改正等により、小学校第一学年では平成二十三年度から三十五人編制を実施するとともに、小学校第二学年では平成二十四年度から、中学校第一学年では平成二十五年度から、三十五人編制を可能とする教員加配を行っております。

斉藤委員 都は、平成二十二年度、二〇一〇年度に独自に教員加配をして、小一と中一を三十九人学級にするところから始め、その後、小一は二十三年度、小二は二十四年度に国が三十五人学級にしました。小二は財政措置のみということですけれども、そして、中一については、都が二十五年度に三十五人学級にしました。

約十年前のことになるわけですけれども、都教委はこのとき、教員加配に関わる効果検証に関する調査最終報告書として調査結果をまとめています。緑の冊子ですけれども、私、持ってくるのを今忘れてしまったのですが、覚えている皆さんは多いんじゃないかと思います。ここには、学級規模の縮小、つまり少人数学級になってよかった、効果があるという声がたくさん掲載されています。

例えば校長の意見、学級規模が二十六、二十七名ということから、担任がきめ細かに児童を見ることができ、適時対応することができるようになった、また教員の意見、学級の人数が少ないことで、新規採用者でも児童の個性に合わせた学級運営やきめ細かな学習指導が可能になり、学級が落ちついたなどです。

三年生も一年生と同じ七十九名であるので、一年生のように少人数の方がよい、これは中学校の保護者の声です。三年生は三十九人と四十人の二学級だけれども、一年生は二十六あるいは二十七人の三学級になっているということについての意見です。

都教委は、自身の調査で、こうしたよい結果が出ているということを忘れてはならないというふうに思います。こうした声に応えて、仮に一年ずつでもやっていれば、今ごろ、小中学校全学年を三十五人にすることができたということではないでしょうか。

今からでも、国より前倒しして、都もやるべきだというふうに思いますが、いかがでしょうか。ご答弁をお願いします。

田中地域教育支援部長 学級編制の標準の引き下げの問題ですけれども、義務教育における学級編制は、教育の機会均等や全国的な水準の維持の観点から、国の責任で行われるべきであると考えております。

国は、今般、少人数によるきめ細やかな指導体制を構築するため、義務標準法を改正し、小学校について、学級編制の標準を五年かけて学年進行で三十五人に引き下げることといたしました。

都教育委員会は、今回の法改正による学級編制の段階的な整備を行ってまいります。

斉藤委員 あくまでも国の責任だということで、こうした消極的な姿勢なのは東京都ぐらいなんじゃないかと、今、思います。多くの県は、国より、今、前進をさせています。全国的な水準という点では、東京都は、もはやおくれた水準にあります。

少人数学級という教育条件を前進させることでよい効果がある、都教委自身の調査でも、また、他県の実践からも明らかではないでしょうか。

さらに、我が党の「しんぶん赤旗」の調査によれば、十五の道県が、さらに来年度も前進させることが明らかになっています。私たちは、これらの県に聞き取り調査を行いました。

群馬県は、来年度から、小学校五、六年生と中学校二、三年生を一気に三十五人にします。その理由の一つに、コロナ対策で密になることを回避することを挙げていました。

子供たちのことを考えれば、感染が一番深刻な東京都がするべきことではありませんか。

田中地域教育支援部長 学校内感染への対策は、手洗い、マスク着用の励行、日々の健康観察、換気や施設の消毒とともに、教室等における児童同士の間隔の確保に留意するなど、学校生活上のあらゆる場面で予防策を実施することや、教育活動上のさまざまな工夫を行うことが重要と考えます。

区市町村教育委員会は、これらを踏まえた感染症対策などのガイドライン等を作成しており、各学校では、ガイドライン等に基づき、感染症予防対策の徹底を日々実践しております。

斉藤委員 学校現場では、当然ですけれども、学校生活上のあらゆる場面で予防策や工夫をして頑張っておられます。今、問題なのは、教育行政としてやれること、その問題です。学校現場でどんなに努力をしても、現在の学級編制の基準では、教室内での机の間隔、身体的距離を十分にとることができません。教員と教室を確保し、少人数学級をできるようにする、これこそ教育行政の仕事ではないでしょうか。

飛沫は一・八メートルまで飛ぶ危険があるということで、私が視察に行ったある学校は、透明なプラスチックの板を、子供たちの机の三方に立てて飛沫を防いでいました。学校として精いっぱいの工夫をしているわけですけれども、九カ月も使っている中で、板が曲がっていたり、傷だらけになったりして、板を通して前を見ると、ゆがんだり、かすみがかかったように見えるという状況でした。こうした板も、十分な距離をとれば外せるかもしれません。

また、別の学校では、三十七人、三十八人、こういう児童たちがすし詰め状態になって、先生がその間を見回る、そういうスペースすらない、こういう状況も見てきました。

我が党の予算特別委員会でも質疑しましたので、きょうは詳しく述べませんが、コロナ禍の子供たちのケアのためにも、この少人数学級は求められています。国待ちということではなく、独自に前進させていただきたいと思います。

少人数学級の早期実現は、保護者からも求められています。

小学校二年生から、学年進行で五年かけて、小学校のみ三十五人学級にするという国の方針は、いいかえれば、小学校三年生以上は、今と何も変わらないということです。

特に来年度の小三は、今は小二で三十五人学級なのが、来年は四十人学級になってしまいます。感染症防止策に逆行する状況です。小二の今は二十人の二学級だけれども、小三になったら四十人の一学級になってしまう、こういう学校がたくさんあります。

来年度の小学校三年生は、二年生のときに比べて教育条件が悪くなってしまう、今の小学校二年生以上には何の恩恵もないのはひどい、体の大きい中学生も少人数学級にしてほしい、こういう保護者の声が届いていますが、こういう声を都教委はどのように受けとめるのでしょうか。

田中地域教育支援部長 学年進行による学級数の変動は、通常起こり得るものであり、保護者のさまざまな受けとめ方があることは承知をしております。

学校生活においては、学級を基本としながら、教科等の特性や学習場面等に応じたきめ細かな指導により、一人一人の個性や能力に合った学びを実現していくものと考えます。

また、学習規律や落ちついた生活習慣の確立などには、学校でのさまざまな取り組みや工夫が関係していると認識しております。

学級編制のあり方につきましては、教育の機会均等や全国的な教育水準の維持の観点から、国の責任で行われるべきと考えております。

斉藤委員 さまざまな受けとめ方があることは承知しているといいますけれども、では、三年生になって一クラス四十人になって、うれしいという声はあるのでしょうか。通常起こり得るといいますけれども、この十年間、ずっとそういうことが起こり続けていたということの方が問題です。

学年四十人、八十人などの二年生の保護者からは、来年は一クラス四十人になってしまうのは困る、何とか避けられないかという声、そういう相談がたくさん届いています。さまざまな受けとめではなく、三年生になっても教育条件が悪くならないように、三年生以上も少人数学級にしてほしい、それが保護者の声です。これをきちんと認識していただきたいというふうに思います。

私たちは調べましたけれども、例えば埼玉県や愛知県、三重県、佐賀県などは、来年度から小学校三年生を三十五人学級にします。先ほどご答弁いただいた四十一道府県には入っていない県もあります。どの県も、国の動きを契機に、来年度からは小三にも踏み出すという動きになっています。

せめて小学校三年生だけでもというのが東京都の保護者の声です。保護者たちは、小学校全学年を前倒しで三十五人にした場合でも、都が独自に財政負担をしなければならないのは四年間だけだというふうに指摘しています。

また、中学校を独自に三十五人学級にすれば、来年の三年生から六年生も恩恵が受けられます。

ぜひこれらの声に応えていただきたいというふうに思います。

国の法改正どおりにやるにしても、独自に前倒しにするにしても、少人数学級の実現に向けて、教員の人数と質の確保は重要です。

都教委は、これらをどう確保していくのか、見解を伺います。

浅野人事部長 都教育委員会では、教員採用選考の受験者を拡大するため、教員志望の若者への相談会、現職教員の声等を伝えるパンフレットやSNSを活用した広報活動など、さまざまな方策を講じております。

また、学校における働き方改革推進プランに基づき、デジタル技術や外部人材の活用により、教員が働きやすい環境の整備に取り組んでおります。

今後とも、多くの受験者の確保を図り、優秀な教員の採用に努めてまいります。

斉藤委員 PR活動も大切ですけれども、やはり教員確保のためには、教員の長時間労働を改善する働き方改革は重要な課題です。

昨年十月の教員の勤務状況が二月に発表されましたが、小中高等学校とも、月の時間外労働時間が四十五時間以下の教員が減り、八十時間以上、つまり過労死ライン以上の教員がふえています。コロナという事情があるから仕方ないというふうにはいえない状況です。

それから、若手の教員の志を生かすという点でも、少人数学級は重要だというふうに実感しています。先生方は、学級を落ちつかせるために、学級の人数によって指導方法を変えているというふうに聞きました。例えば、子供が少ないときは、穏やかな声かけで十分だし、さまざまな場面で子供に問いかけ、子供が考えるということを指導ができる。しかし、四十人近くになったら、子供に考える余地を与えるとざわざわするので、座ります、こうです、それは違います、こういう指示で管理することになるということです。

ある若手の先生は、四十人の学級の担任をしていると、子供たちを管理する能力を疑問を持ちながらも身につけてしまう、本当は子供たちに丁寧にかかわり、人格の交流を通じて成長を促す教員になりたいと思っているのに、つらいというふうにいっていました。

少人数学級にすると、教員をたくさん確保するのが大変だということではなく、教員の志を生かした教育の基盤となるんだ、その魅力の一つとして、少人数学級をぜひ推進していただきたいというふうに思います。

教室の確保についてです。

子供が増加している地域では、少人数学級に対応した教室の確保が課題となっています。

都教委として、増改築により確保することが必要な教室はどの程度あると見込んでいますか。また、教室確保のために区市町村にどのような支援をするのか、伺います。

田中地域教育支援部長 公立小学校に関する施設整備等については、学校教育法第五条により、原則として、設置者である区市町村がその経費を負担することとされています。区市町村教育委員会は、例年、児童の人口を推計し、必要な教室の確保を行っています。

今後五カ年で学級編制の標準を引き下げることへの対応についても、区市町村教育委員会が行うものであり、その実情に応じて教室の確保ができるよう、都教育委員会はこれまでも、国に対し、補助制度の充実について要望しております。

なお、現在、国が、令和三年及び四年それぞれの四月一日時点における普通教室の見込みを把握するために、公立小学校の三十五人学級実施に伴う使用教室の状況について調査を行っています。

斉藤委員 今、国が調査中ということです。調査結果を東京都もしっかり把握し、国に補助制度の充実を求めていくということは重要です。

あわせて、都の支援も含め、教室が間に合わないということのこの内容の対応をお願いして、次の質問に移ります。

子どもの心のケアを

 

斉藤委員 コロナ禍の学校について伺います。

国立成育医療研究センターが二月十日に発表した第四回「コロナ×こどもアンケート」では、小学校四年生から六年生の一五%、中学生の二四%、高校生の三〇%以上に中等度以上の鬱症状があったと報告されています。

子供たちの声として、休校中に心の病気になりました、だから、また休校にならないか、とても心配という小学六年生、コロナに縛られて自由がないという中学三年生、気持ち悪くなったり、夜中に目が覚めたりするという小学一年生、コロナを理由に何でもかんでも中止にしないでほしいという小学五年生など、深刻な声が寄せられています。

都教育委員会として、子供の声に耳を傾け、子供たちや学校にどんな支援が必要か、つかんでいくことが必要だと思います。

十一月の事務事業質疑で、私は、コロナ禍での子供たちの声や現状について聞いているのか伺いましたが、都教委からは、児童生徒が記入するアンケートの例を示して、学校において定期的に不安や悩みを聞き取るとともに、スクールカウンセラーとの面接を、まずは心配な様子が見られる児童生徒から優先して行いつつ、年度内に小学五年生、中学一年生、高校一年生の全員と行うように求めるという答弁でした。

都教委は、こうした子供たちの声、どのような声をつかんでいるのか、伺います。

増田指導部長 学校からは、聞き取りや面談等を通して把握している子供の実態として、例えばコロナウイルスに感染することが心配で勉強に身が入らない、会話しながら昼食をとることができないので、友人とかかわる機会が減ったなど、さまざまな不安や戸惑いを抱えている状況が伝えられております。

斉藤委員 子供たちが不安や戸惑いを抱えている状況が学校から伝えられているということです。

学校が子供たちの声を受けとめ、心のケアができるようにサポートすることが必要ですけれども、都教育委員会の認識と取り組みについて伺います。

増田指導部長 これまでの日常とは異なるコロナ禍において、多くの子供が不安や戸惑いを抱えていることから、小さな変化を見逃さずケアを行うとともに、子供がいつでも、どんなことでも安心して相談できる環境を整える必要がございます。

そのため、都教育委員会は、学校に対しアンケートの例を示し、定期的に子供たちの不安や悩みを把握するよう徹底を図るとともに、学校の要請に応じてスクールカウンセラーの派遣回数をふやすなどしております。

斉藤委員 子供が安心して相談できる環境を整える必要がある、重要な認識だというふうに思います。

スクールカウンセラーの派遣の回数をふやしているということです。

スクールカウンセラーの充実については、我が党も、そして、私自身、二〇一八年十二月の一般質問も含めて、コロナの感染が広がってからも繰り返し求めてきました。

前回の質疑では、七月末から八月初めの登校日に合わせて派遣回数をふやしたということでしたが、現在は、一月から三月にかけても派遣回数をふやしているということを事前に伺いました。回数をふやしていただいたということは、よかったなというふうに思います。

しかし、学校の今の状況では、例年より元気のない子や自傷行為をするという子がふえている、また、コロナで不安、そして家庭環境が不安定になっている、こういう子たちがふえているというふうに聞いています。スクールカウンセラーが予約でいっぱいだという声が届いています。

引き続き、現場の声をよく聞いて、スクールカウンセラーの常勤化など、拡充していただきたいというふうに思います。

ある都立高校の生徒の保護者さんから、部活動が長期間できなくて子供たちがかわいそうだ、何とかならないかという相談がありました。長引くコロナの緊急事態宣言や自粛の中で、児童生徒たちは、二度と戻らないかけがえのない学校生活の中で、多くの制限や我慢を強いられています。

春の大会を目標に頑張っていた生徒たちが部活動の休止を強いられる中で、近くの中学校や私立高校では、グラウンドで部活動を行っている姿を見ていて、果たして部活動の停止が感染拡大を防ぐ有効な手段なのかと疑問に感じているということです。さらに、部活動停止の理由や見通しさえ告げられずに放置され、生徒たちは納得がいかないという状況だという相談がありました。

行事や部活動については、生徒たちに説明もなく停止ということではなく、客観的、科学的な情報を提供し、生徒たちの意見を聞く場を保障して、自主的に考えることができるように都教委が後押ししていくことが重要ではないかと思いますが、見解を伺います。

小原教育政策担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 各学校では、子供たちの健康、安全を第一に、保健所等とも連携しながら感染症対策の徹底とともに、児童生徒等の健やかな学びの保障との両立に取り組んでおります。

教員は、子供たちの状況について、日常的な会話や観察などを通してきめ細かく把握しておりまして、各学校では、子供たちの実態を踏まえ、三つの密を避けた方法で行事等を実施するなど、学びの充実に向けてさまざまな工夫を行っております。

今後とも、都教育委員会は、一人一人の子供の声を丁寧に受けとめ、感染症対策と学びの保障とが両立できるよう、学校の取り組みを支援してまいります。

斉藤委員 一人一人の子供の声を丁寧に受けとめて、感染症対策を講じながら学びの充実を図れるよう、学校の取り組みを支援していくという重要な答弁だと思います。

長引くコロナの自粛の中で、どうやって学校生活を送るのか、今まさに子供の権利、子供の意見表明、こうした権利に焦点を当てた対応が求められているんじゃないかというふうに思います。

先日の一般質問で、子供の権利についてただした我が党の池川都議の質問に、教育長は、子供は、あらゆる場面で権利の主体として尊重される必要があり、子供の年齢及び発達の程度に応じてその意見を尊重するとともに、子供の最善の利益を実現することは、学校教育においても同様に重要だという、とても大切な認識を示されました。ぜひこのことを具体化する学校の取り組みを、このコロナ禍だからこそ後押ししていただきたいというふうに思います。

都立学校での感染状況と情報公開、修学支援を

 

斉藤委員 次に、都立学校における新型コロナの感染状況と情報公開について伺います。

資料の14で出していただきましたけれども、教職員、児童生徒等の感染が判明した都立高等学校の数は百七十八校、特別支援学校は三十四校という数になっています。都立学校は、高等学校、中学校等を合わせて全部で百九十五校、特別支援学校は全部で五十六校なので、九〇%以上の都立学校、また、六〇%の都立特別支援学校で感染があったという状況です。

新型コロナの感染は、どんなに気をつけていても、かかってしまうことはあります。家庭内感染を抑えるのは難しいという側面もあると思います。感染はどこにでも起こり得るという前提で対応していくことが必要だというふうに思います。

不安を取り除き、適切に対応していくためにも、情報の公表のあり方が問われてくると思います。

改めて伺いますけれども、都教育委員会が都立学校の感染について公表する基準はどのようなものでしょうか。

谷都立学校教育部長 都立学校関係者の新型コロナウイルス感染症の感染状況の公表につきましては、教職員等に感染が判明した場合と、臨時休業等、学校運営に影響が生じた場合に行っております。

なお、児童生徒等の感染状況につきましては、学校運営に影響がない限り、当該児童生徒等の人権に配慮し、個別には公表しないこととしております。

斉藤委員 学校を休校にする場合のみホームページに掲載するということですが、そのために、感染があっても休校にしない多くのケースで情報の公表がないために、学校内だけでなく、地域にも正確な情報、対応の状況が伝わらず、不安を招いているという声をこの間もたくさん聞いています。

多くの区市では、公立の小中学校で感染があった場合には、何らかの情報公開を行っています。私の地元の足立区では、五人以上のクラスターになった場合は学校名も公表ということですけれども、クラスターではない場合は、学校名を伏せた上で、感染の発生の経緯と対応状況について区のホームページで公表しています。そのため、感染があったといううわさがあっても、区のホームページでどのように対応されているのかを確認することができるため、地域の方々の安心にもつながっているというふうに聞いています。

都教育委員会としても、感染を公表しないことで疑心暗鬼を招くというようなことを避けて、感染があった場合には、その対応について、都度公表し、生徒や保護者、地域の安全・安心につなげていく必要があると思いますが、見解を伺います。

谷都立学校教育部長 都立学校関係者で感染が判明した場合には、当該校の児童生徒及びその保護者が不安を抱くことのないよう、感染の事実や濃厚接触者の有無等の対応状況について、個人情報に配慮しつつ、必要な関係者に周知をしております。

児童生徒や保護者への周知の際には、感染者や濃厚接触者とその家族等に対する偏見や差別につながるような行為を行わないよう注意喚起をしております。

こうしたことから、児童生徒等の感染状況につきましては、臨時休業等、学校運営に影響がない限り、現時点において個別に公表する必要はないと考えております。

斉藤委員 例えば墨田区では、クラスターではない場合でも学校名も公表して情報公開しています。墨田区の保健所長は、匿名にしても、うわさで広がる、名前がわかれば、区民が自分事として危機意識を持つことができるし、関係のない子が塾に来るなといわれるようなことも防ぐことができる、メリットの方が大きいと、一般紙の取材でコメントをしています。

今のご答弁で、現時点においては公表する必要がないというお答えでしたので、状況が変われば公表のあり方を見直すということもあるのかなというふうに受けとめましたが、特にどのような対策が行われているのか、学校関係者だけでなく、地域の方々も安心できるような情報公開のあり方について、今後も検討していただきたいというふうに思います。

次に、修学支援について伺います。

セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンが、高校生がいる都内ひとり親家庭への調査を行い、コロナ禍での高校生等の修学の継続が困難な実態を明らかにしました。

その中で、高校生活における進学や就職など、進路にかかわる費用について支払えなかったことがある家庭が九%、今後支払えなくなる可能性がある家庭は八三%、さらに、経済的な理由で高校を中退する可能性があるという家庭が三二%に上っています。回答の半数以上が都立などの公立高校です。

高校生がコロナの影響で修学を諦めるようなことがあってはならないと思いますが、都教育委員会としての認識を伺います。

谷都立学校教育部長 どのような家庭の経済状況にありましても、高校生の学ぶ環境を整え、一人一人の可能性を広げていくことは重要であると認識しております。

都教育委員会は、家計急変により授業料の納付が困難となった世帯に対する免除制度に加えて、今年度、新型コロナウイルスの影響により家計急変した世帯の支援を目的とし、奨学のための給付金と給付型奨学金についても制度改正し、新たに支援の対象といたしました。

また、今年度から、奨学のための給付金にオンライン通信費を増額しております。

今後とも、こうした取り組みにより保護者負担の軽減に努め、生徒の学びたい、学び続けたいという気持ちに応えてまいります。

斉藤委員 どのような家庭の経済状況にあっても、高校生の学ぶ環境を整え、一人一人の可能性を広げていくことは重要という認識は大切だというふうに思います。

今現在の取り組みについてもご説明いただきましたが、それで十分なのかどうかつかんでいくためにも、実態を把握していくということが重要だと思います。

同団体は、高校生等の修学継続困難な実態を調査するよう、都に求めています。また、都内の高校に、家計の変化によって修学継続が困難な家庭がないかどうか定期的に把握することや、高校生活にかかわる費用が支払えなかったり、遅滞する家庭がないかどうか、学校がより一層、生徒の家計変化に目を配るよう求める通知を出すようにと求めています。

実行する必要があると思いますが、いかがですか。

谷都立学校教育部長 都立学校では、日ごろから生徒の状況を把握しており、また、各種支援制度の申し出等により、生徒の家庭状況の把握にも努めております。

これまでも、年度当初の各種支援制度の通知はもとより、七月に奨学のための給付金の申請書類等を配布する際は、就学支援金申請時に把握した生活保護受給世帯及び非課税世帯に対して、制度周知及び申請書等の配布を重点的に行う旨、各学校に通知しております。

さらに今年度は、新型コロナウイルスの影響により収入が激減した世帯もあったことから、さまざまな機会を捉えて、家計急変が新たに対象に加わったことについて、生徒、保護者への周知の徹底を図りました。

また、平成二十八年度からは、各学校からの依頼に応じてユースソーシャルワーカーを派遣し、中途退学等の未然防止のための支援や福祉面からの支援に取り組んでおります。

斉藤委員 現在の支援と取り組みについてお答えいたただきました。家計急変への対応などを今年度に行うなど、努力されていることも重要だというふうに思います。

ユースソーシャルワーカーによる支援の充実についても、私たちは繰り返し求めてきましたが、家庭環境の支援では、昨年度四月から三月では六百八十人だったところ、今年度は、学校が再開した六月からことしの一月までに七百十一人だったというふうに事前に伺いました。支援の取り組みを強化していただいているということは重要なことだというふうに思います。

しかし、今のコロナ禍で、より一層、目配りをするということが今求められています。アンケートの回答者は、ひとり親で、非課税世帯で、さらにコロナの影響で収入が減るなど、セーブ・ザ・チルドレンから三万円の給付を受けた世帯です。その二〇%が、支援について知らなかったということも示されています。その中に都立高校生がいないというふうにはいえないと思います。ぜひ一層の努力をしていただきたいというふうに思います。

支援について伺いますが、コロナにより困窮した経済状況に置かれている高校生を支えるためにも、都独自の制度である給付型奨学金を充実させていく必要があると思いますが、現在の給付の対象と、これまでの三年間の執行率について伺います。

谷都立学校教育部長 給付型奨学金は、家庭の経済状況にかかわらず、生徒が希望する進路に挑戦できるよう、生徒が学校の選択的教育活動に参加するために必要な経費を、東京都が保護者にかわり支払う制度でございます。

具体的には、生徒が在籍する学校の教育課程に基づく教育活動のうち、勉強合宿や語学合宿、模擬試験受験料や各種検定試験受験料などを主な対象経費としております。

過去三年間の執行率は、平成二十九年度、二七・五%、平成三十年度、二九・六%、令和元年度、三三%でございます。

斉藤委員 執行率が三〇%前後ということで、この執行率の低さというのがとても目立ちます。

実際に、都の給付型奨学金は使い勝手が悪く、余り支援にならないという声を、私たちは直接伺ってきています。具体的には、今ご答弁いただいたとおり、対象が試験の受験料や勉強合宿など、選択的教育活動というのに限られているということにも原因があります。

セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンの調査では、高校生活に係る経済的な負担について、教材費や通学費、修学旅行費など、日々の修学に欠かせない費用が挙げられています。

通学費や修学旅行費なども対象として、使いやすいものにする必要があると考えますが、見解を伺います。

谷都立学校教育部長 生活保護受給世帯に対しては、生業扶助により生徒の教材費や通学費が実費支給されております。

また、非課税世帯に対しては、教材費や通学費等の負担を軽減するため、奨学のための給付金が給付の対象となっております。

さらに、平成二十九年度から開始している給付型奨学金では、長期就業訓練に伴う実習先までの交通費や、すぐれた成績により学校の代表として全国大会に出場する活動などにおいて必要な旅費等を対象経費として給付しております。

修学旅行費については、奨学のための給付金の支給対象経費となることから、給付型奨学金の支給対象としてございません。

斉藤委員 ほかの制度と支援が重ならないようにしているというご答弁ですけれども、所得制限によって、授業料以外には支援がない世帯が多くあります。

セーブ・ザ・チルドレンの給付を受けた非課税世帯の方も、それを通学費や教材費などに充てており、奨学のための給付金だけでは足りていないという現状です。対象を広げるよう改めて求めるものです。

「生理の貧困」への対策を

 

斉藤委員 次に、生理の貧困について伺います。

コロナ禍で家計状況が急変する中で、若い学生たちからは、生理用品を買うことが困難になっているという声が上がっています。

#みんなの生理という若者のグループがSNSで呼びかけて行ったアンケート調査では、買うのに苦労したことがある、また、買えなかったことがあると答えたのは、合わせて二六%、さらに、生理が原因で学校を欠席や早退、遅刻したことがあるという人が四九%に上っています。

都教育委員会として、生徒たちが生理用品に困ることがないように、都立学校のトイレなどで無償配布するなどの対応を考えるべきだと思いますが、いかがですか。

小原教育政策担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 ご指摘の、いわゆる生理の貧困につきましては、さきの国会における議論等を通じて承知いたしております。

都立学校においては、生徒が生理用品を忘れてしまった場合を含め、さまざまな理由により生理用品が必要になった場合には、養護教諭等が提供いたしております。その際には、養護教諭等が必要に応じて生徒の状況を聞き取るなどいたしております。

斉藤委員 養護教諭が、必要な生徒に提供しているということです。

私は、改めて学校の先生たちに生理用品の対応についてお話を伺いました。確かに保健室で対応しているのだけれども、もしかしたら、もらいに来ることをためらって来られない子がいるかもしれない、それで学校を休む子が、もしかしたらいるかもしれないと先生たちはおっしゃっていました。先生たちがわからないところで、支援につながっていない子がいるかもしれないということです。

それが、学校のトイレで、誰でも使っていいんだよと生理用品が配布されるものになれば、学校においての生理の貧困という問題から子供たちは開放されるということです。

女子児童生徒がこのことで登校をためらったり、困ることがなくなれば、それは全ての子供に学習の機会を保障する道にもつながり、すばらしいことではないかということで、先生たちはとても期待をしている、そういう状況でした。

福祉保健局では、災害時の備蓄用に、五年前に初めて七十万枚の生理用品を用意したというふうに聞いています。食品と違って明確な消費期限があるわけではないですけれども、五年を過ぎて、順次、入れかえをしているということです。

その中で、二十万枚は民生児童委員の方に寄附をしたということですが、残ってしまったために、二十五万枚を廃棄し、さらに残りの分についても捨てていくということのようでした。

こうした備蓄用に用意されていたものを有効活用していくことも考えられると思いますが、いかがでしょうか。

福祉保健局と連携をとって、学校での対応の充実につなげていくよう検討していただきたいと思いますが、見解を伺います。

小原教育政策担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 先ほどお答え申し上げましたとおり、現在、都立学校におきましては、さまざまな理由により生理用品が必要になった生徒がいた場合には、養護教諭等が提供を行っておるところでございます。

関係する局の中で、何ができるのかを検討しながら、引き続き適切に対応してまいります。

斉藤委員 災害備蓄用の活用も含めて、関係各局との検討を進めていただけるという前向きなご答弁をいただきました。ぜひ一歩前進する学校環境をつくっていただきたいというふうに思います。

トイレの洋式化を

 

斉藤委員 次に、学校トイレの洋式化の補助について伺います。

東京都は、学校トイレの洋式化率を二〇二〇年度までに八〇%にすることを目標に、二〇一七年度から財政補助を行い、取り組んできました。

トイレの洋式化は切実な問題ですが、区市町村により洋式化率にはばらつきがあり、特に財政力の弱い多摩地域はなかなか大変だというお話も伺っています。二〇一六年四月一日現在のトイレの洋式化率は、二十三区が五七・四%、多摩地域が四八・八%で、全体では五四・二%でした。

学校トイレの洋式化の現在の進捗状況について、二十三区と多摩地域でそれぞれどうなっているか、教えてください。

田中地域教育支援部長 都内区市町村立小中学校におけるトイレの洋式化率は、令和二年四月一日時点で、特別区では七五・〇%、島しょを除く市町村では六二・二%となっています。

斉藤委員 二十三区では七五%、市町村は六二・二%ということです。

子供たちが毎日使うトイレがきれいで衛生的であるということは、子供たちの健康に直結する切実なものだと思いますが、都教育委員会の見解を伺います。

田中地域教育支援部長 学校は、児童生徒が一日の多くの時間を過ごす場所であり、発災時には避難所となる場合もあることから、安全で衛生的なトイレ等の環境整備は重要であると認識をしています。

斉藤委員 子供たちにとって安全で衛生的なトイレは本当に重要と、私も実感をしています。

実は、青梅市の我が党の市議が「学校のトイレ新聞」というのをつくっていまして、学校の和式で老朽化したトイレの状況を調べて、市に実態を届けたこと、また、改修され、洋式できれいになったトイレの様子、さらに、市議会で明らかになった改修の予定など、写真も入れたニュースにして、シリーズで配布をしています。

これが地域ではとても話題になっていて、保護者からは、うちの子が学校のトイレを嫌がるので、我慢せずに行きなさいといっていたんだけれども、写真を見て、余りの老朽ぶりに驚いて、どうして行かないのかということがよくわかったという声が、感想が寄せられたというふうにいっています。子供にとってトイレがいかに切実な問題かということです。

青梅市では、市民の要望に応え、学校トイレの改修を、二〇二五年度完了の予定にしていたのを二〇二三年度完了に計画を前倒ししたそうです。その前倒しに都の補助事業が大きな支援になっていますが、二〇二〇年度末で終了予定だったために、昨年、都教委に市議団として継続を求める要請をさせていただいたところです。

こうした経緯もあったことから、新年度予算案に公立学校におけるトイレ整備の推進の予算が入り、公立小中学校への支援が延長したということは、とても喜ばれています。

特に多摩地域では財政的な困難も大きいため、それぞれの自治体や学校の実情に合わせて、トイレの改修や洋式化に取り組めるように支援を継続してもらいたいと思いますが、いかがでしょうか。

田中地域教育支援部長 本年度は、新型コロナウイルス感染症の影響で夏季休業期間を短縮したことなどにより、区市町村が予定していたトイレ改修工事を見送る事例が生じています。

都教育委員会は、こうした状況を踏まえ、区市町村の取り組みを支援するため、東京都公立学校施設トイレ整備支援事業の期間を令和四年度まで延長することといたしました。

斉藤委員 コロナの状況も鑑みて、令和四年度、二〇二二年度まで支援の延長を決めていただいたということは本当によかったというふうに思います。

しかし、青梅市の例を見ても、計画を前倒しにしましたけれども、それでも二〇二二年度までには完了できないということがあります。補助の期限を区切って、早期に実現を促すということも重要ですけれども、同時に、市町村の財政状況等も踏まえて、さらに柔軟に対応していただくことや補助額の充実なども求めて、次の質問に移ります。

東京都の教育大綱について

 

斉藤委員 最後のテーマになりますが、教育大綱についてです。

都教育委員会は、昨年十二月に新しい教育大綱案を発表しました。我が党は、今定例議会の代表質問と、そして、予算特別委員会でも大綱案について質疑をしましたが、東京都の教育施策の基本方針を示す重要なものになるため、この間の質疑も踏まえて、さらにお伺いをしたいと思います。

都教育委員会は、大綱案についてパブリックコメントを行いましたが、その結果、どんな声が届いているのか、まず伺います。

小原教育政策担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 都教育委員会は、東京都教育施策大綱(案)の要点を示しました骨子を令和二年十二月二十一日に公表し、令和三年一月二十日まで都民からの意見募集を行い、二十七名の方から六十四件の意見等が寄せられたところでございます。

その結果につきましては、本日、ご報告申し上げた文教委員会要求資料に記載のとおりでありますが、具体的には、子供たちは未来の東京の担い手であり、社会の宝というのならば、まず、子供たち自身の願いを聞くことが必要であるということですとか、今後の社会をどう変えていくか、子供たちが主体的に考えることができるよう、意欲や能力を持つ子供たちを育てていく必要があるといったものがございました。

斉藤委員 ありがとうございます。資料要求でもいただきましたけれども、その中からご答弁をいただきました。

子供たちは社会の宝というならば、まず、子供たち自身の願いを聞くことが必要であるということや、今後の社会をどう変えていくか、子供たちが主体的に考えることができるよう、意欲や能力を持つ子供たちを育てていく必要があるという大事な意見をいただいているというふうに思います。

先日、知事と教育長と教育委員の皆さんが出席された総合教育会議を傍聴させていただきましたが、パブリックコメントでいただいた声も大綱案に反映しているという説明がありました。

ただ、パブコメに届いた声は少ないようですから、より多くの都民の声や子供たちの声が反映できるように、今後も議論を深められる機会を充実させていただきたいというふうに思います。

具体的に見ていきたいと思いますが、まず、この大綱案ですが、最初に、第1章に未来の東京の姿が描かれています。

なぜ子供たちの教育方針の最初に未来の東京の姿が必要なのか、伺います。

小原教育政策担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 新しい大綱は、コロナ禍の現在だからこそ、困難を乗り越えるために、未来の東京の姿について展望していくことが必要であるとの考えに基づき策定いたしております。

目指すべき未来を想定し、そこから逆算して、現在からそこに至る道筋を定めることが必要であるというバックキャストの考え方に立って、教育施策大綱の第1章では、未来の東京とそこに生きる子供たちの姿を描いております。

斉藤委員 ここで描かれている未来の東京というのは、グローバル化や、AIやビッグデータ等、先端技術の社会実装によるソサエティー五・〇時代などに限定されています。未来にかかわる要素ではあると思いますが、手段の一つとして、こうしたことを身につけることは有効な要素であっても、その技術だけで社会が成り立っているわけではありません。

サステーナブルリカバリーについて、新型コロナから未来に向けた復興を目指す視点として重要というふうにされていますが、コロナから未来に向けた復興というのは、今の大人の社会でもできていないことであって、それをいきなり今を生きる子供たちに押しつけるような、この大綱の出発点となっているというのは、とても違和感を感じます。

同じく第1章に未来の東京に生きる子供の姿が描かれて、子供たちは未来の東京の担い手と記載されていますが、それはどういうことなのでしょうか。子供たちの存在は東京都のためのものなのでしょうか。

小原教育政策担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 大綱は、教育施策の根本方針を定めるものでございまして、現在の子供たちの将来の姿を想定し、必要な教育施策の方向性を示したものでございます。

今を生きる子供たちが個性や能力を伸ばし、人生を生き抜いていくことができるように育むとともに、将来、自分の夢や希望を実現し、東京、日本あるいは世界で活躍できるようにしていくことが、結果として未来の東京という社会を形づくっていく主役になるということでございまして、東京のためだけの存在ということではございません。

斉藤委員 東京都のためだけの存在ではない、社会を形づくっていく主役というご答弁で安心しましたけれども、そもそも人間は自由な存在であって、ありのままの個人が認められるべきものであり、その存在や生き方が何かに規定されるようなものではありません。そういうことがわかる大綱案、教育の理念である必要があるというふうに思います。

予算特別委員会で、我が党のとや英津子都議が指摘しましたけれども、教育の基本方針を示す教育施策大綱は、現在の子供たちの姿から出発をして、求められる教育施策、とりわけ子供たちに豊かな教育を保障していくために、知事や行政がどのように教育の条件整備を柱立てていくのかということを示すというのが本来なのではないかというふうに思います。

代表質問でも取り上げましたが、大綱案の最初に、誰ひとり取り残さないということが掲げられていますが、現行の大綱にある子供の貧困への言及がなくなってしまいました。

中央教育審議会、中教審が「令和の日本型学校教育」の構築を目指して──全ての子供たちの可能性を引き出す、個別最適な学びと、協働的な学びの実現──という答申を一月二十六日にまとめています。

この中では、コロナ禍で今の子供たちがどういう状況にあるのか、また、一斉休校の中で学校の役割が再認識されたこと、特に居場所としての福祉的な役割も担ってきたという重要な認識も示しています。

都の大綱案では、コロナ禍での子供の姿や、学校の現状や役割について、何も言及がないのはなぜでしょうか。

小原教育政策担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 新たな東京都教育施策大綱は、これまでの大綱の考え方や、さまざまな取り組みによる改革の流れを受け継ぎながら、新しい教育の方針を示すものでございます。

コロナ禍において、人間関係や家庭の状況など、子供たちをめぐる状況はさまざまであると認識いたしております。こうしたさまざまな状況の子供たちに寄り添い、引き続き、保護者や関係機関、外部の専門家との連携を密に図るなど、これまでの学校や教員の知見に加えて、社会全体で子供たちの心身をきめ細かくサポートしていく必要があると認識いたしております。

斉藤委員 今、私が聞いたのは、都の大綱案で、コロナ禍での子供の姿や、学校の現状や役割について、何も言及がないのはなぜかという質問だったのですけれども、いかがでしょうか。

小原教育政策担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 失礼いたしました。

東京都教育施策大綱は、サステーナブルリカバリーの視点も取り入れて策定いたしておりまして、コロナ禍における子供や学校の状況も踏まえたものとなっております。

また、第3章、東京型教育モデルで実践する特に重要な事項の6におきましては、子供たちの学びを支える教師力、学校力の強化として、学校が新たな時代の学びへの対応とともに、子供の安全・安心を確保し、地域の拠点となる役割を持つことも示しているところでございます。

失礼いたしました。

斉藤委員 サステーナブルリカバリーの視点も取り入れて策定していて、コロナ禍における子供や学校の状況を踏まえたものという答弁なんですけれども、サステーナブルリカバリーの視点も取り入れているということが、今現在、困難や困窮に直面している子供たちにどう関係があるのでしょうか。コロナ禍の子供たちの現状について、また、学校がどういう状況で、どんな役割が認識されているかについて、いずれにしても大綱案には記載がないわけです。

予算特別委員会で、知事は、子供たちの現状についてどのような認識をしているかという、とや都議の質問に対して、コロナ禍で大きな影響を受け、特別な支援が必要な子供たちがふえているというふうに答弁しました。

コロナ禍で、子供たちが置かれている家庭環境や経済状況などに向き合っていくことは一層求められている大事な視点ですけれども、都教育委員会は、子供たちを取り巻く経済状況、修学への困難が増している、こうしたさまざまな状況をどのように認識しているか、伺います。

小原教育政策担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 新たな東京都教育施策大綱は、これまでの大綱の考え方や、さまざまな取り組みによる改革の流れを受け継ぎながら、新しい教育の方針を示すものでございます。

コロナ禍において、人間関係や家庭の状況など、子供たちをめぐる状況はさまざまであると認識しております。こうしたさまざまな状況の子供たちに寄り添い、引き続き、保護者や関係機関、外部の専門家との連携を密に図るなど、これまでの学校や教員の知見に加えまして、社会全体で子供たちの心身をきめ細かくサポートしていく必要があると認識いたしております。

斉藤委員 コロナ禍において、人間関係や家庭の経済状況など、子供たちをめぐるさまざまな状況があるということを認識しているというご答弁です。

そういうことを出発点として子供たちに向き合って、子供の貧困への対応や豊かな教育の保障をきちんと位置づけて、知事や都教育委員会が何を行うのかの指針が、本来、教育施策大綱には必要なのではないでしょうか。

しかし、この大綱案では、子供が何を目指すべきか、子供がどうあるべきか、子供に求めることの方が前面に打ち出されているという印象です。

一点、具体的に伺いますけれども、第3章で東京型教育モデルで実践する特に重要な事項として、ソサエティー五・〇時代を切り開くイノベーション人材の育成と世界に羽ばたくグローバル人材の育成と記載されています。

都教育委員会が学校で行っているのは人材育成なのでしょうか。また、こうした分野に子供たちの目標を特定するのはなぜなのでしょうか。

小原教育政策担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 東京型教育モデルを実践する特に重要な事項は、これからの社会の変化を俯瞰して捉え、子供たちがみずからの夢や希望を実現するために必要な資質、能力を身につけることができるよう、都として重点的に取り組むべき施策として定めております。

グローバル化等による多文化共生社会の進展や先端技術の社会実装によるソサエティー五・〇時代の到来など、これからの社会はますます激しい変化が予測されており、そのような社会において必要な基礎的、基本的な知識、技能を確実に習得できるようにすることが求められております。

同時に、新たな価値を創造する力や多様な人々と協働する力を育み、SDGs等を踏まえた持続可能な社会づくりに貢献する意欲を高め、豊かな国際感覚を身につけていくことも必要でございます。

子供たちが社会環境の変化に適切に対応し、自己実現を果たしながら人生を生き抜いていくことができるよう、必要な教育を提供してまいります。

斉藤委員 東京都が学校で行っていることは、要するに人材育成ということなんですか。

小原教育政策担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 ただいま答弁申し上げましたように、激しい変化が予測されている社会に向けて、その社会において必要な基礎的、基本的な知識、技能を確実に習得できるようにし、その上で子供たちが社会環境の変化に適切に対応し、自己実現を果たしながら人生を生き抜いていくことができるよう、必要な教育を提供しているものでございます。

斉藤委員 人材育成かどうかということを否定されないということなんですけれども、グローバルな視点とかICTの活用能力というのは、身につけておくことは有効であっても、それが全ての子供たちのゴールになるということではないと思います。

大綱案にあるように、イノベーション人材やグローバル人材として産業界で働くということが、全ての子供に当てはまるというわけではないと思います。誰も取り残さないといいながら、特定分野に絞った人材育成が掲げられているということに大きな偏りを感じます。

学校は、産業界が求める人材育成のためにあるものではないと思います。どの子も、どんな生き方でも尊重され、幸せに生きていくことができるようにするために教育はあるのではないでしょうか。

教育の目的について、教育基本法では、第一条で、人格の完成を目指し、平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成を期して行わなければならないとしています。

また、第三条では、国民一人一人が自己の人格を磨き、豊かな人生を送ることができるよう、その生涯にわたって、あらゆる機会に、あらゆる場所において学習することができ、その成果を適切に生かすことのできる社会の実現が図られなければならないとしています。

つまり、教育の目的は、個人の人格を形成し、豊かな人生を送れるように導いていくことであり、どういう人間あるいはどういう人材を育成するのかということを規定するようなものではないはずですけれども、都教育委員会の見解を伺います。

小原教育政策担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 大綱の第3章、東京型教育モデルで実践する特に重要な事項に掲げられている六つのテーマのうち、二つのテーマに、ソサエティー五・〇時代を切り開くイノベーション人材の育成あるいは世界に羽ばたくグローバル人材の育成と掲げられているところに関して、人材育成を狙うものではないんじゃないかというようなことで、先ほどから何度かおっしゃっているところではありますけれども、先ほど答弁申し上げましたとおり、こういったテーマも含めて、社会の変化を俯瞰して捉え、子供たちがみずからの夢や希望を実現するために必要な資質、能力を身につけることができるように、都として重点的に取り組むべき施策として掲げているものでございます。

この二つの分野以外にも、伸びていきたいという子供たちの伸びる力をしっかりと応援していく教育政策になっております。

教育の目的の部分でございますけれども、これは教育基本法第一条に示されておりますとおり、人格の完成を目指し、平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成を期して行われるものでございます。

同時に、同法第二条では、教育の目標として、子供たちが公共の精神に基づき、主体的に社会の形成に参画し、その発展に寄与する態度を養うことを掲げてございます。

都教育委員会は、今後とも、子供たちがみずからの人生を豊かなものとし、未来の社会の担い手として生き生きと活躍していくことができるよう、さまざまな施策を展開してまいります。

斉藤委員 教育基本法第二条のお話も出てきましたけれども、第二条の、子供たちが公共の精神に基づき、主体的に社会の形成に参画し、その発展に寄与する態度を養うことという言及がありましたけれども、この社会の形成に参画することと、大人が決めた未来像に合わせて子供たちを人材育成し、その社会に貢献させていくということは、同じことではないというふうに思います。

未来の社会は、子供たちが学びを土台として自由につくっていけるものです。未来の社会を今の大人が想定して、そこに子供たちを適合させていく、こういう発想では、窮屈で、誰も取り残さない教育とはならないのではないでしょうか。

子供たちの学ぶ意欲、能力を伸ばすということは大切なことだと思います。ただ、そこのゴールを限定していくような未来の描き方、そこに合わせていく、そういう教育の行い方というのは、どうなのかというふうに思います。

政治家である知事が策定する教育施策大綱は、今の子供たちが直面している困難を取り除いて、全ての子供の学ぶ権利と豊かな教育を保障できるように、政治や行政がどのように教育の条件整備をしていくのか示すというのが本来のあり方だと思います。

その点で、この大綱案は、一部、曲がりなりにも学ぶ権利ということが入っております。これまでの大綱にはなかったことで、ここには注目をしております。

しかし、これまであった子供の貧困についての施策や言及がなくなり、きめ細かいサポートを実現するためにも重要な条件整備である少人数学級の言葉もありません。少人数学級を明確に書き込むべきだということはパブリックコメントにもありましたけれども、このことについては、きめ細かい指導という表現として加えるにとどまっていて、不十分です。

子供に目指すべきことを求めることばかり並んでいる大綱案は見直すべき点が多いということを指摘して、質問を終わります。