オリンピックの学校連携観戦はやめよ!

文教委員会 2021年5月28日

東京都がねらう学校連携観戦の概要

 

斉藤委員 私からも、東京二〇二〇大会の延期に伴う繰り越しについて伺います。

学校連携観戦運営委託及び暑さ対策グッズの調達にかかわる費用、二・九億円の繰り越しということですけれども、この繰り越し自体に、学校連携観戦の是非、さらにはオリンピック開催そのものの是非がかかる問題です。その観点から質問をいたします。

まず、根本的なことから伺います。

ことしの夏のオリンピックの開催については、中止または再延期を求める声が圧倒的です。五月に発表された朝日と産経での世論調査では、ともに八割以上が中止または再延期を求めています。国内だけでなく、海外の世論調査でも中止や再延期を求める声が大半です。

弁護士の宇都宮健児さんが行っている五輪開催の中止を求めるインターネット署名には、現在、四十万を超える賛同が集まり、小池都知事にも届けられています。

学校連携観戦についても、厳しい批判や不安の声が寄せられています。

コロナの感染が終息せず、変異株の脅威もある中で、子供たちを競技会場に連れていく、こういうことに対して、子供たちにコロナの感染が広がったらどうするのか、子供たちを危険にさらすようなことはやめてほしい、こうした動員の計画はやめてほしいというような悲痛な声が上がっています。

この世論を都教育委員会はどのように受けとめているのでしょうか。

瀧沢指導推進担当部長 こうした声は、新型コロナウイルス感染症への不安と認識をしております。

オリンピック・パラリンピック教育でさまざまな学習や体験を積み重ねてきた子供たちにとって、世界のトップアスリートが最高峰の競技を繰り広げる姿を目の当たりにすることは、その後の人生の糧にもなる貴重な体験であると考えております。

東京二〇二〇大会の競技観戦を楽しみにしている子供たちのため、競技観戦を希望している学校が安心・安全を十分に確保した上で競技観戦を実施し、子供たちの心のレガシーとなるよう、準備を進めているものでございます。

斉藤委員 感染拡大に関する不安というふうに認識していると。認識しているのに、なぜ強行しようとしているのかということが、今、本当に大きく問われていると思います。安全に行っていくといっていますが、その中身がない。そのことに、みんな本当に不安を感じているんです。言葉だけでは具体的なものにはなりません。

今回は、学校連携観戦の延期に伴う費用の繰り越しの報告ですけれども、そもそも、こうした世論に背を向けて、都教育委員会がこのままこの計画を強行するということでいいのでしょうか。保護者や教員だけでなく、多くの都民、国民から批判の声が上がっていること、このことに向き合って、中止の判断を行うことが求められています。まず、そのことを指摘しなければなりません。

その上で、この学校連携観戦の概要について伺います。

参加予定の幼稚園、小中学校、高等学校と特別支援学校の希望者数はどうなっているのでしょうか。

瀧沢指導推進担当部長 学校連携観戦に参加を予定している公立の児童生徒数は、令和二年十二月時点で、幼稚園、こども園約四千人、小学校約四十八万人、中学校約二十四万人、高等学校約八万人、特別支援学校約六千人の合計約八十一万人でございます。

斉藤委員 調査をまとめた昨年の十二月時点の数として、全体で約八十一万人ということです。このことは、我が党の新聞、機関紙「しんぶん赤旗」で報じて、大きな衝撃として受けとめられています。

コロナの感染防止に、社会全体で、また学校現場で必死に努力をしているというときに、また、変異株の脅威もあるという中で、都知事自身が人流の抑制を繰り返し訴えている状況です。それなのに、八十一万人もの子供たちを公共交通機関を使って遠出させる、人混みの中に連れていくということに、保護者や教員だけでなく、多くの方々から、東京都はとんでもないことをしている、正気なのか、また、この計画はすぐにでもやめてほしい、そういう声が私のもとにもたくさん届いています。

調査を行った時点と現在では、状況が一変しています。

少なくとも都教育委員会として、改めて現時点での参加の希望と理由の調査を行って、学校現場の声を聞くべきですが、いかがですか。

瀧沢指導推進担当部長 今後、組織委員会から提供されます観客の上限設定に関する情報などを踏まえながら、各学校の参加に係る意向調査を行う予定であり、現在、準備を進めているところでございます。

斉藤委員 今ご答弁いただいたのは、チケットの配券を行うための調査であり、あくまでも組織委員会が決める観客の入場制限に合わせて希望をとるというものです。

私が求めているのは、そういう事務的なことではなくて、今、コロナの感染も終息されないばかりか、変異株の危険もある、世論の大半が中止か再延期を求めている中で、現場の教員や保護者の声を聞いて、その実態を都教育委員会がつかんでいく必要があるということを求めています。そして、その声を都として組織委員会に届けていくということが重要です。

さらに詳細について伺います。

昨年五月に示されている学校連携観戦チケット最終意向調査における留意事項には、チケット配券決定後のキャンセルについて、正当な理由なくキャンセルすることは認められませんと記載されています。

例えば、当日に猛暑が予想された場合やコロナの感染状況が悪化しているなどの理由でキャンセルすることは認められないのでしょうか。

瀧沢指導推進担当部長 当日の猛暑や新型コロナウイルス感染症の感染状況によって、校長が競技観戦を取りやめると判断した場合には、キャンセルすることができるというふうにしております。

斉藤委員 猛暑やコロナの理由でキャンセルできると。

さらに伺います。

学校で観戦に行くとなった場合でも、新型コロナへの感染が心配で児童生徒が参加しないことを選択した場合、欠席扱いになってしまうのか、また、欠席した場合は、内申などで不利益な扱いになってしまうのかという不安の声も上がっています。

都教育委員会としてどのように対応するのでしょうか。

瀧沢指導推進担当部長 競技観戦当日を学校行事として位置づけ、授業日として設定した場合、参加しない児童生徒の出欠席の取り扱いは、不利益にならないよう、また、保護者の理解が得られるよう、適切に判断することを校長に依頼しております。

不参加になった場合であっても、児童生徒に対してオリンピック・パラリンピックに関する課題学習を与えることなどにより、ほかの校外学習と同様に出席扱いにするなどの工夫が考えられます。

会場への下見の実態は

 

斉藤委員 今、政府、組織委員会、そして小池都知事が五輪の開催ありきで突き進み、都教育委員会もこれに追随していくという現状の中で、この学校連携観戦に当たって、教員が児童生徒を引率するための会場への視察が行われています。

現在、何カ所の会場で、何人の教員が参加したのか、伺います。

また、今後行われる実地踏査、現地視察では、何カ所、何人の教員の参加が予定されているのか、伺います。

瀧沢指導推進担当部長 本日までに、十会場で実施をし、千七百八名の教員が参加しております。

また、今後、十一会場で実施し、約九百三十人の教員が参加する予定でございます。

斉藤委員 この教員たちの実地踏査、会場への下見についても、「しんぶん赤旗」で報道しています。

参加した教員からは、緊急事態宣言で小池都知事が人流の抑制を強調している中、教員の感染リスクがある下見を本当にやるとは思わなかったという驚きの声、また、公共交通機関を使って一日数百人もの教員を集めるのはリスクが高い、これがきっかけで学校に感染が広がる可能性もあると懸念する声も届いています。

本当に、小池都知事と、今、都教委が行っていることが感染症防止に矛盾しているということをいわざるを得ません。

学校連携観戦会場における実地踏査についての通知では、その目的に、教員が幼児、児童生徒を安全に引率するため、会場視察を行い、引率時の安全対策や留意点等を確認すると明記しています。

引率時の安全対策について、特にコロナの感染防止対策としては、具体的にどんなことが確認されたのでしょうか。マニュアルやガイドラインなどはあるのでしょうか。

瀧沢指導推進担当部長 実地踏査では、引率する教員が会場内の動線を歩き、児童生徒の実態に応じた安全対策や留意点を確認しております。

具体的には、新型コロナウイルス感染症に係る対策として、三つの密の回避を踏まえた動線やトイレの広さなどに加え、会場入り口に設置しております検温所などについて確認をしております。

また、安全対策に向けたマニュアル等につきましては、基本的感染症対策及び学校行事に係る留意点を示しました都教育委員会による新型コロナウイルス感染症対策と学校運営に関するガイドラインがございます。

今後、組織委員会においても、感染症対策などを含めた競技観戦のルールを示す予定と聞いており、これに合わせて、引率者が安全に競技観戦ができるよう、競技観戦の留意点を取りまとめ、周知してまいります。

斉藤委員 実地踏査では、安全対策や留意点を確認しているということですけれども、私のところには、実地踏査に参加した先生から、こういう声が届いています。

公共交通機関を使わないといけないとなると、一般の方も乗り合わせているわけで、それで子供たちがコロナに感染しないで安全・安心に引率できるとは思えない、集められたこの下見では、教員からの質問にも、都側は曖昧に答えるだけで、時間が延長した、また、実地踏査の段階でも、子供たちが会場までの移動に使う公共交通機関や競技観戦時の感染対策がほとんど示されていないという声が届いています。今の答弁とは、実態がかけ離れているという状況です。

新型コロナウイルス感染症対策と学校運営に関するガイドラインとおっしゃいましたけれども、これは、ふだんの学校生活の中で使っているものであって、オリ・パラ観戦時のものではありません。

環境が変わったところでどういう対策が必要なのか、その対策を講じることが必要なのに、実地踏査でも示されなかった、こう聞いています。

今後、組織委員会からの競技観戦のルールが示される予定ということもおっしゃいましたけれども、現時点で示されていない中で、安全の保障などないと教員の皆さん方が感じるのは当然ではないでしょうか。

たとえ希望校だけだとしても、競技観戦に来てくださいと、この状態で呼びかける。それは私は無責任ではないかというふうに思います。

今回のこの報告についてですけれども、学校連携観戦運営委託と暑さ対策グッズの調達に係る費用の繰り越しについて、念のために伺います。

コロナ感染防止という観点から、安全対策は、暑さ対策以上に必要になるんじゃないかというふうに思いますが、いかがでしょうか。

瀧沢指導推進担当部長 感染症防止対策につきましては、各学校が都教育委員会の新型コロナウイルス感染症対策と学校運営に関するガイドラインなどに基づきまして、マスクの着用や検温、手洗いなど基本的な感染症対策を徹底するとともに、家庭における健康観察も、保護者に協力を依頼してまいります。

今後、組織委員会から示される競技観戦時の感染症防止対策等も十分踏まえてまいります。

こうした感染症防止対策が徹底されますよう、引率教員向けの説明会や競技会場の実地踏査で丁寧に説明を行っております。

斉藤委員 私がちょっと確認したかったのは、コロナの感染の防止対策として、新たな費用が必要になってくるんじゃないかということをお伺いしました。

例えば、消毒や検温のための資材、密を避けながら誘導するための誘導員の新たな配置など、こういうことは想定されていないのでしょうか。ご答弁をお願いします。

瀧沢指導推進担当部長 今回は、令和二年度の予算の繰り越しということで計上しております。感染症対策等につきましては、令和三年度の予算として計上しております。

このため、この中には入っておりませんが、例えば、手指消毒用の消毒を配布するなどの予算については計上しており、安全に観戦が行われるように各学校に配布をし、また、その適正な使用について周知を図ってまいります。

斉藤委員 手指消毒等の資材というのは令和三年度の予算でということですけれども、それ以上に、やっぱり求められてくるということはあると思うので、そこら辺は、やはり適当にはしてはいけない、きちんと考えていかないといけない、そういう部分だと思います。

炎天下での対策は

 

斉藤委員 夏の猛暑の対策に加えて、コロナの感染防止対策のために、炎天下でもマスクが必要な状況になっています。

東京都医師会の尾崎会長は、子供の競技観戦について、競技は真夏の時期で、しかも、会場が屋外の場合もある、マスクの着用による熱中症の危険も大人以上に考えなくてはなりませんと指摘をしています。

子供たちが炎天下でマスクをつけて歩くということについて、その危険性や対策について、都教育委員会として専門家の声は聞いているのでしょうか。

瀧沢指導推進担当部長 文部科学省では、専門家の意見も踏まえた学校における新型コロナウイルス感染症に関する衛生管理マニュアル──「学校の新しい生活様式」──を作成しております。そのマニュアルでは、身体的距離が十分にとれないときはマスクを着用するべきとされておりますが、夏季の気温、湿度や暑さ指数、いわゆるWBGTですが、こちらが高い日には、熱中症などが発生するおそれがあるために、できるだけ人との十分な距離を保つ、近距離での会話を控えるようにするなどの配慮をした上で、マスク外すこととしております。

本マニュアルに基づきまして、学校連携観戦におきましても、気候や周囲の状況、児童生徒の様子などを踏まえ、臨機応変に対応できるようにしてまいります。

斉藤委員 いろいろご説明されましたけれども、要するに、改めて専門家に聞いているということはないということだと思います。

通常の学校生活でのマニュアルのお話をされましたけれども、真夏の屋外での移動や競技観戦などは、通常の学校生活にはないものです。子供たちの体に大きな負担を強いる猛暑とコロナの中での対策、これは安易に考えていいということでは全くないというふうに思います。しっかり対策をやれているのかということが見えてこないということが、多くの不安を招いているというふうに思います。

子供たちの救護体制はどうなっているのか、伺います。

駅から会場までや競技会場での救護所の子供たちの利用は確保されているのかどうか、伺います。

瀧沢指導推進担当部長 駅から会場までのラストマイルや競技会場内には、救護所やクールスポットが設置される予定でございます。

学校は、これらの施設を利用することが可能となっており、ラストマイル上に配置されます都の職員や、競技会場内の大会組織委員会の職員、学校連携観戦運営の連絡員や誘導員などが連携しながら救護活動を行う予定でございます。

引き続き、安全対策について万全を期してまいります。

斉藤委員 救護所が設置される予定だということですけれども、それはわかるのですが、このめどはついているのでしょうか。

瀧沢指導推進担当部長 設置の詳細につきましては、オリンピック・パラリンピック準備局及び組織委員会と調整をしているところでございます。

斉藤委員 もう大会まで二カ月を切っているところですけれども、まだ調整中ということなんですよね。

東京都医師会の尾崎会長は、五月二十六日付の毎日新聞でこう述べています。五輪の延期前は、駅から競技場までの沿道にも救護所を設置する予定となっていた、協力要請に応じてくれていた医療従事者に改めて聞くと、発熱外来やワクチン接種で無理といわれている、救護所ではなく、見守り隊を置いて医師につなげるという方法などを検討中だが、実際に対応が可能なのかどうかは見えてこないというふうにいっているんです。子供たちが救護所を利用できる体制もできるかどうか、不明な状態なわけです。

都教育委員会は、ただ組織委員会につき従って、こうした救護の体制なども、みずから状況を調べようということも必要だと思うんですけれども、こうした重要な情報も学校と共有せずに、参加する学校を募るだけでは、余りに無責任だといわなければなりません。

さらに、サポートや誘導にかかわるボランティアや契約スタッフ、都の職員などは、PCR検査やワクチン接種を行うわけではありません。ふだんなら接触しないはずの多くの人と、子供たちは接触することになるわけです。

教員から、コロナの感染を防げる保証はないという声が上がるのも当然ですし、保護者からも、子供たちを危険にさらさないでというのは当然だというふうに思います。

そもそもですけれども、先ほどのガイドラインや緊急事態宣言下での学校での対応について、都教育委員会は依頼を出して、各学校は、それに基づいて感染防止対策に努力をしています。

その中で、都教育委員会では、現在、全ての部活動を中止にする、また、一堂に集まって行う行事、校外での活動は延期にするというふうにしていますが、それはなぜでしょうか。

瀧沢指導推進担当部長 緊急事態宣言下において、学校における感染症の発生や感染症拡大のリスクを低減するために実施しているものでございます。

斉藤委員 要するに、感染防止のために、こうした制限を行っているわけですよね。学校現場では、これを必死に守って、先生たちも力を尽くしている、そして、子供たちもそれに応じているわけです。部活動が原則禁止、行事も中止か延期になっているという状況です。

その依頼の前書きには、新型コロナウイルス感染症の変異株による割合は急速に増加していることを踏まえ、感染症対策を一層徹底してくださいと、都教育委員会がみずから、ここに下線を引いて強調して示しています。

こうした中で、ふだんの生活域から出て不特定多数との接触もある、大規模でより危険なイベントに連れ出す学校観戦自体が、ふだんから学校で行っているガイドラインに基づく、この通知に基づく感染防止対策と矛盾するのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

瀧沢指導推進担当部長 各学校は、日ごろから、都教育委員会の感染症ガイドラインなどに示しております感染症対策を徹底して教育活動を継続しております。また、今後の感染状況の改善に伴い、制限してきました教育活動を再開できるように準備を進めております。

都教育委員会は、東京二〇二〇大会の競技観戦を楽しみにしている子供たちや学校が安心して競技観戦できるようにするために、通常の教育活動と同様に、実施が可能となる状況を想定しながら、大会組織委員会、オリンピック・パラリンピック準備局の関係機関と連携を図り、準備をしているところでございます。

また、先ほども答弁させていただきましたが、さらに、今後、大会組織委員会による競技観戦時の感染症防止対策なども発出される予定でございます。こちらもあわせて各校に周知をしてまいります。

斉藤委員 今、現状は、緊急事態宣言を解くことができなくて、またさらに延長だというふうになっているわけです。通常どおりに学校が戻るという見通しが今立っていないわけですよね。

そうした中で、オリ・パラの大会開会まで二カ月を切って、実踏調査も始まっている。こういう中で、感染状況がどうなるのかさえもわからない、それで、組織委員会からのガイドラインというのもまだ出てこない。

こういう状況で、このまま突っ込んでいくということは、安全が担保されていないのと同じだというふうに私はいわなければならないと思っています。

今、保護者が東京都に対して、学校観戦の計画中止を求めるネット署名を始めて、数日で約一万五千筆以上の署名が集まっています。子供たちをコロナの感染の危険にさらしたくない、そういう声や、親の心配から行かせないと、親子関係に亀裂が入ってしまう、また、五輪中止は圧倒的な世論、不安な中で強行すれば子供の心が傷ついてしまう、こういう声が届いています。

教員からも、コロナの感染リスクに加え、熱中症の懸念も大きいこと、また、教育課程への影響を鑑みても、学校観戦を直ちに中止することを求める要望が都教育委員会に提出されています。

こうした保護者や教員の声に、都教育委員会としてどのように答えるのでしょうか。

瀧沢指導推進担当部長 オリンピック・パラリンピック教育でさまざまな学習や体験を積み重ねてきた子供たちにとって、世界のトップアスリートが最高峰の競技を繰り広げる姿を目の当たりにすることは、その後の人生の糧にもなる重要な経験でございます。こうしたことから、学校連携観戦は、競技観戦を希望する学校に参加の機会を提供するものでございます。

都教育委員会は、学校連携観戦の実施に当たりまして、新型コロナウイルス感染症対策や暑さ対策などを徹底し、関係機関との連携を図りながら、競技観戦を希望する学校が安心して競技観戦できるよう、児童生徒の安全確保に万全を期してまいります。

また、学校に対して、新型コロナウイルス感染症対策と学校運営に関するガイドラインなどに基づきまして感染症対策を徹底するように示しております。その上で、競技観戦に係る感染症対策などの安全対策について、各学校が保護者に対し、具体的な感染症対策や競技会場までの経路などを丁寧に説明することを通して、保護者の理解を求めてまいります。

斉藤委員 いろいろとご説明いただきましたけれども、保護者や教員の声を聞くという答弁ではないんですね。あくまでも強行して、そのための理解を得ていくと。

大会のことも、今、夢のようにおっしゃいましたけれども、今、既に、選手も辞退した方がいますし、ワクチン接種も格差があって、フェアな大会にはなっていません。安全対策といっても、今ある学校のガイドラインだけ。安全対策に万全を期していくといっても、その中身がないのだから、誰も安心できないし、多くの方が、この言葉、安心・安全と繰り返されるけれども、中身がない、聞き飽きているという状況なんです。

ふだんの生活域から子供たちを連れ出して、ふだんなら接触のない物や人に触れる機会になる学校連携観戦で、子供たちももちろん、接触する人々にもワクチン接種やPCR検査も行わない中で、まともな安全対策や救護体制も不明確。これでは、子供たちの安全を守る対策は破綻しているといわざるを得ません。

オリンピックの理念にも反する観戦強行はやめるべき

 

斉藤委員 そもそものオリンピックのあり方についても伺います。

都教育委員会はこれまでに、オリンピック・パラリンピック教育を各学校で実践してきました。五輪憲章には、友情、連帯、フェアプレーの精神と相互理解、そして、人間の尊厳を大切にし、平和な社会の推進を目指すことをその理念に掲げています。

しかし、IOCのバッハ会長から、東京五輪の開催のために、誰もが幾らかの犠牲を払わないといけないという発言があり、日本の国民の心を大きく傷つけました。大きな批判の声が上がりました。

バッハ会長は、その後に、日本の国民に対していったことではないという釈明をしていますが、それでもこれだけ大きな批判の声になったのは、五輪の開催の強行で、実際に国民、都民に大きな犠牲が強いられるからだというふうに思います。

第一に、五輪のために、医師や看護師など医療従事者の体制が割かれます。

今、現実に、自宅療養で苦しんでいる患者さんや、病院をたらい回しになり、医療にアクセスできないまま命をなくす人たちがいます。医療体制を五輪のためにとられてしまえば、都民、国民の命を救うための医療が逼迫して、そして医療崩壊になりかねません。命の犠牲が起こり得る、こういう状況です。

第二に、五輪を契機に、変異株も含むコロナの感染拡大になれば、さらに苦しい自粛や緊急事態宣言が強いられることにもなりかねません。

今でも生きていくこともままならない経済状況が広がっている中で、本来なら、この夏のオリンピック中止をすれば、東京都の力を、こういう傷ついている命や経済を救っていく、そういうことに振り向けていくことができるんです。

そして、今、中止や再延期を求める大半の声を置き去りにしていくことで分断される社会、子供たちの安全まで、五輪のもとに犠牲にされようとしている。

こういう大会のあり方は、子供たちに教えてきたオリンピック憲章の理念に大きく反するものではないでしょうか。

都教育委員会は、教育者として、子供たちにこれをどう説明できるのでしょうか。

瀧沢指導推進担当部長 お尋ねのバッハ会長の発言でございますが、その発言の意図につきまして、都教育委員会としては承知しておらず、お答えをする立場にはないと考えております。

斉藤委員 もう一回、聞きたいと思いますけれども、こうした大会のあり方は、子供たちに教えてきたオリンピック憲章の理念、今、もう大きくかけ離れている、そういう状況だと思います。

バッハ会長の言葉に日本の国民が敏感に反応したのも、今お話ししたとおり、この夏の五輪開催には、現実に都民、国民の犠牲が伴うからです。

さらに、各国の選手のワクチン接種にも格差があり、今や日本も含めてですけれども、渡航や入国が制限されている国もあります。既に大会への出場を断念している選手もいる中で、フェアプレーのオリンピックにもなりません。

このオリンピックが、皆さんが子供たちに教えてきたオリンピックの理念に沿った大会だということを教育者としていえるのですか。ご答弁をお願いします。

瀧沢指導推進担当部長 これまでオリンピック・パラリンピック教育のもと学習を行ってきた、その成果の一つとなるように、学校連携観戦を通じてオリンピック・パラリンピックの理念を少しでも実感できるように、引き続き、安全な実施に向けて準備を進めてまいります。

斉藤委員 オリンピックが延期になって、もう一年たつわけですね。この一年間の間に、政治、行政がきちんと責任を持って科学的な対策を行って、PCR検査の拡大、そしてコロナを抑えていく、こういうことや、十分な国民、都民の休業補償をやって、人流を本当の意味で抑制できる、そうした責任ある対策、科学的な対策を行って、今現状、仮にコロナが終息できていれば、今、部長さんがおっしゃったように、今までの学習の成果として、本当に喜べるオリンピックになったんじゃないかというふうに思います。

しかし、現実、そうはならなかった。私たちは繰り返し、科学的な対策を行って、みんながこのコロナの危機を乗り越える、そういうことを訴えてきましたが、しかし、政治の責任はそういう形を果たすことがないまま、今に至っているという状況です。

私は、この間、寄せられた中学生の言葉に、本当に涙が出る思いでした。去年は五輪の観戦をとても楽しみにしていたけれども、今はみずから参加しない選択をしているという中学一年生のお子さんです。その理由について、自分がコロナに感染する可能性も、感染させる可能性もあるから、今、大変な医療の人に迷惑をかけてしまうかもしれないから参加をしないというふうにいっているんです。子供たちは、立派に社会の状況を理解して、医療の現状、社会のことを思いやって行動しようとしているんです。

都教育委員会は、昨年末、医療従事者に感謝を伝えようと、各学校に通知を出しました。ところが、今やっていることは真逆のことです。医療従事者も、今、オリンピックは無理だと、悲鳴のような声を上げているんです。

こうした子供たちの姿勢に、むしろ学ぶべきだというふうに思います。

そんな中ですけれども、大会組織委員会では、無観客開催でも子供たちの学校連携観戦は行うという議論が始まったということも報じられました。オリンピックの体裁のために子供をあくまでも利用しようとするような姿勢に大きな批判の声が上がっています。

この件について、組織委員会から、都教育委員会には報告や意見聴取はあったのでしょうか。また、都教育委員会からは確認をしているのでしょうか。

瀧沢指導推進担当部長 都教育委員会では、無観客開催でも子供たちを競技会場に招待するという報道の後、大会組織委員会に連絡をし、事実確認を行ったところでございます。

組織委員会からは、本報道は仮定に基づく報道となっており、組織委員会は承知していないとの回答を得ております。

斉藤委員 これは、組織委員会の関係者が明らかにしたということで報じられているんですけれども、本報道は仮定に基づく報道となっており、組織委員会は承知していないというのは、本当に意味がわからないですよね。

承知していないなら、この報道は間違いで、無観客でも学校観戦を行うという検討はないということでいいのでしょうか。

瀧沢指導推進担当部長 繰り返しの答弁になりますけれども、私どもとして、組織委員会からのお話もございませんし、確認したところでも、組織委員会自身が、本報道は仮定に基づく報道となっており、組織委員会として承知していないという回答を得ているということで、私どもとしては、知り得る状況としては以上でございます。

斉藤委員 組織委員会が承知していないということなら、大変な誤報だというふうなことだと思いますけれども、ちゃんと抗議しないといけないと思います。それから、本当に中身をちゃんと確認しないといけないというふうに思います。

私は、このことについて、学校観戦を担当している文科省、直接的にはスポーツ庁ですけれども、この検討について、組織委員会から連絡や打診はあったのかということも聞きました。しかし、担当の方は、聞いていないというふうに繰り返していました。

私は、組織委員会が、文科省や都教育委員会など子供たちの教育にかかわる関係機関の頭越しに、無観客でも学校観戦を行うという検討をするということは言語道断だというふうに思います。子供を預かる教育現場の責任者として、文科省とともに、そのような独断は許さないということを組織委員会に抗議するべきだというふうに思います。

五輪の開催や子供の学校連携観戦について、IOC、日本政府、そして小池都知事の強硬な姿勢が今、際立っています。そうした中で、都教育委員会が、東京都の子供たちのために、また、保護者や先生たちに寄り添って守る役割を果たすことが今大きく求められています。

IOCのコーツ副会長は、緊急事態宣言のもとでも五輪は開催できるという強硬な発言を行って、また大きな批判を受けました。

都教育委員会としては、たとえ緊急事態宣言のもとでも、無観客開催でも組織委員会が学校観戦をやるといったときに、都として、子供を守る判断をして学校連携観戦の中止を決断するべきですが、いかがでしょうか。それとも、独自で中止の判断を行わず、従っていくということなのか、ご答弁をお願いします。

瀧沢指導推進担当部長 学校連携観戦は、子供たちにとって、世界のトップアスリートが最高峰の競技を繰り広げる姿を目の当たりにできる貴重な経験の機会であると考えております。

都教育委員会は、関係機関と連携を図りながら、競技観戦を希望する学校が安心して競技観戦できるよう、安全対策に万全を期してまいります。

斉藤委員 今のご答弁ですと、どんなにIOCが強硬な姿勢だったり、おかしな状況だったとしても、都教育委員会としては、独自で判断しないでついていく、そういう姿勢だということ、そういう答弁だというふうに受けとめましたけれども、これは本当に、生徒たち、教育現場や先生たち、保護者、皆さんに失望を与えるものだと思います。

どんなにおかしい状況でも、唯々諾々とつき従っていく、これが東京都の教育者のトップの姿なのかということ、これは本当に残念な状況だと私は思います。

さらに伺います。都教育委員会は、学校ごとの参加を判断することができるとしていますが、このことについて、学校任せの状況で、もし児童や生徒、教員にコロナの感染が起きた場合には、誰が責任をとれるのかと、教員から不安の声が上がっています。

学校連携観戦でコロナの感染が起きた場合は、都教育委員会として責任をとれるのでしょうか。

瀧沢指導推進担当部長 都教育委員会は、競技観戦が子供たち一人一人の心にかけがえのない記憶として刻まれるように、関係機関との連携のもと、感染症防止対策などを徹底し、子供たちの安全確保に万全を期してまいります。

斉藤委員 責任をとるとは明言されないわけですよね。学校連携観戦を進めながら、安全対策もまだ示さない、救護体制もどうなるかわからない。そういう状況で進めておきながら責任をとるとはいえないというのは、これは本当に、学校現場にとって衝撃だと思いますよ。非常に無責任な状況だと思います。

安全確保に万全を期していくといいますけれども、中身が示されていなくて、何も担保がされていない、こういうことに先生たちは不安を感じているんです。

コロナの感染状況がたとえ落ちついたとしても、五輪大会を契機に、感染がまた広がるという懸念もあります。五輪開催の結論を待つのではなく、本当に影響の大きい子供たちに対しては、変異株への感染の危険を伴う学校観戦を直ちに中止をするべきです。

少なくとも、子供たちの命の安全に責任を負っている文科省ともしっかりと協議をするべきですけれども、いかがでしょうか。

瀧沢指導推進担当部長 文部科学省からは、感染症を含め、安全・安心に係る通知やマニュアル等が適時発出されているところでございます。

都教育委員会としても、それらを踏まえて感染症対策などの取り組みを実施しているところでございます。

子供たち一人一人が心にかけがえのない記憶として刻むことができるよう、二〇二〇大会が実施されることを前提として、関係機関と連携を図り、安全対策などに万全を期してまいります。

斉藤委員 大会が実施されることを前提にと、あくまでもこういう答弁です。私は、本当に子供の命を守るという立場、子供の命最優先で守るという姿勢で、文科省とも一緒に話をしてほしいというふうに思います。組織委員会にただついていくだけ、こういうのは、本当に今、危険だというふうに思います。

東京都医師会の尾崎会長は、我が党の「しんぶん赤旗」の紙面でこう述べています。子供たちが、暑い中、マスクをつけてのコロナ対策など、大人よりも気を使わなければならないことがある、そして、子供たちの学校観戦は、冷静に考えて中止を判断すべきだと明言しています。医療従事者、しかも、東京都の医師会のトップの方からのこうした見解は、本当に重たいものだと思います。

それを皆さんしっかり受けとめて、向き合って、そして、何かがあってからでは取り返しがつきません。本当に子供たちの安全を守る、その立場で中止を決断していく、このことを強く求めまして、私の質疑を終わりにします。