下水道施設の運営権売却をやめよ。豪雨対策を

公営企業会計決算特別委員会での質疑 2019年11月18日

斉藤委員 質問に先立ちまして、このたび台風十五号、十九号によってお亡くなりになられた方に心からのお悔やみを申し上げるとともに、被害に遭われた方々に心からのお見舞いを申し上げます。では、よろしくお願いいたします。

 

下水道施設の運営権売却の問題点をただす

 

斉藤委員 まず初めに、下水道施設の運営のあり方の検討について伺います。

知事が設置した都政改革本部の方針のもとに、昨年度、下水道局では、下水道施設に対してコンセッション方式の導入等を含む運営手法のあり方を検討しています。コンセッション方式とは、施設の所有は公に残したまま運営権だけを民間企業に売却する民営化の手法の一つですが、災害時の対応について民間企業がリスク負担を回避したり、責任の所在が曖昧になるなど、公的責任が後退する重大な懸念があります。

この点について、知事の見解を伺います。

小池知事 斉藤まりこ委員のご質問にお答えいたします。

下水道局におきましては、平成二十九年十二月の都政改革本部会議における報告を踏まえまして、現在、コンセッションを含めて施設運営手法の検討を進めているところでございます。
下水道は、東京が持続可能な都市として成長するためには必要不可欠なインフラでございます。豪雨のとき、そしてまた、災害のときなど、リスクも含めまして、経済性だけではなく安定的なサービスの提供といった観点も、重視いたしまして、幅広く多角的に検討を進めてまいります。

斉藤委員 公営企業は、地方公営企業法に照らして公共の福祉を増進することが本来の目的であると思いますが、知事の基本的な認識について伺います。

小池知事 ご質問の公営企業についてでございますが、企業としての経済性の発揮、そして、その本来の目的である公共の福祉の増進という経営の基本原則のもとで運営をしているものでございます。

斉藤委員 ご答弁のとおり、公営企業の本来の目的は、公共の福祉の増進という点にあります。この点は、公営企業のあり方として常に見失ってはならない大事な核心部分です。

昨年度に下水道局が施設運営のあり方について委託調査を行った中で、官民連携の実績がある民間企業や下水道関連の民間企業に対して意向調査を行っていますが、この結果、災害時等の不可抗力リスクの受け入れは困難との意見が大半であるということが、この間の決算の質疑の中で明らかになっています。

昨年度から下水道施設にコンセッション方式を導入している浜松市では、運営権者との契約書に、地震、暴風、豪雨等の自然災害にかかわる不可抗力による費用の増加等は原則的に市の負担と明確に記載されています。

リスクを負うことができない民間企業に対して、長期にわたる運営を投げ出すことは、いざというときに、公的な責任のもとの迅速な対応ができなくなる重大な問題です。

そもそも公営企業は、都民の生活に欠かせないライフラインを担い、その命と生活を守る重要な役割を担っています。特に想定外の大雨や台風、地震などの大規模災害が毎年のように起こっている近年において、その公的役割の重要性が増しています。

災害時の対応に根本的な問題を抱えるコンセッション方式は、公営企業の本来の目的である公共の福祉の増進という先ほどの知事の答弁にも逆行するものです。下水道事業、水道事業とも、コンセッション方式や包括委託などの民営化の検討はやめて、局直営で事業を堅持することを強く求めます。

 

豪雨災害におけるダムの運用や浸水対策など

 

次に、災害対策について伺います。

十月の台風十九号では、多摩地域で記録的な豪雨、大雨になり、一日の降雨量が六百ミリを超えた地域もあります。多摩川が増水したことで、流域の各地で建物の浸水被害が出たほか、一名の方が亡くなりました。この災害の教訓から、これまでの取り組みが都民の命や生活を守るという点でどうだったのか、どう改善を図るのか、検証していくことが求められています。

知事にお伺いします。

過去最大級の風水害が毎年のように起こっている中、都民への給水や浸水対策を担う水道局、下水道局の役割は大きいことが改めて認識されています。対策の強化や課題の改善に不断の努力が求められますが、知事の基本的な認識を伺います。

小池知事 都の水道事業、下水道事業は、東京を支える重要なライフラインであるということは先ほど述べました。

また、昨今の大規模水害等も踏まえまして、上下水道におけます防災対策を充実させることは必要不可欠でございます。そのために、これまで耐震化や浸水対策など、上下水道におけます防災対策を進めてきた次第でございます。

昨年度の西日本豪雨などを初めといたしまして、たび重なる災害を受けて、防災事業の緊急総点検を実施して対策の充実を図ることといたしております。

今後とも、先般設置をいたしました大規模風水害検証会議を通じまして、上下水道において不断の点検、見直しを行って着実な防災対策を推進することで、東京の安全・安心を万全なものにしていきたいと考えております。

斉藤委員 上下水道において、不断の点検、見直しを行い、着実な防災対策を推進するという重要なご答弁です。その立場で、この間の台風被害からの課題を洗い出し、改善につなげて、東京の防災対策、災害対応力を高めていただきたいと思います。

小河内ダムからの余水吐き放流について伺います。

今回の台風十九号では、五千四百七十四万立方メートルもの水がダムに流れ込み、ダムの決壊を防ぐために、四千五百五十九万立方メートルを放流しました。これは、流れ込んだ雨水の八割の水量ということになります。

水道局では、今回の台風十九号の対応も含めて、豪雨災害時における小河内ダムの運用の考え方について伺います。

中嶋水道局長 小河内ダムは、水道専用ダムとして首都東京を支える重要な役割を担っており、一旦貯水量が減少しますと回復しにくい特徴があるため、貯水量をできる限り確保することで安定給水に万全を期しております。

今回の余水吐きからの放流につきましては、精度の高い気象予測データに基づいて流入量を予測した上で、国土交通省から承認を受けました操作規定に基づいて運用しており、結果として、多摩川への流出量が抑えられたことを検証しております。

なお、多摩川の水位への影響につきましては、小河内ダムからの放流量以外にも、多摩川へ流れ込む他の河川からの流入量などを総合的に考慮することが必要であると考えております。

斉藤委員 今回の台風十九号で、多摩川では河川整備の基準となる計画流量を超える水が流れました。多摩川にはさまざまな河川から水が流れ込んでいるというのはそのとおりですが、これまでの想定を超える大雨や台風が頻発する中で、ダムからの放流を行う水道局として、放流量やそのタイミングが多摩川の水位の変化にどう影響をしているのか、検証していくことは重要な課題だと思います。

そこで、知事に伺います。

国土交通省が策定している多摩川水系河川整備計画、これなんですけれども、平成十三年に策定されているものですが、この中に、洪水等による災害の発生の防止または軽減に関する事項に、小河内ダムを治水目的で有効に利用すると示されています。重要な記述だと思いますが、知事の認識を伺います。

小池知事 水道専用であります小河内ダムの機能、運用、ただいま局長が答弁したとおりでございますが、小河内ダムを治水目的で有効利用するという国の計画の記述につきましては、ダムの貯水量を確保しながら事前に水位を下げるという小河内ダムの実質的な治水効果について、平成十三年に書かれた意義のあるものと認識をいたしております。

そして、今回のように、豪雨が予想される場合におけます利水ダムの有効活用でございますが、国が検討を始めるとの報道もございまして、今後、国の動向を注視していく必要があると、このように考えております。

斉藤委員 小河内ダムを治水目的で有効に利用するというのは、今後に向けて重要な視点だと思います。

さらに、知事が答弁されたとおり、国は、大雨が予想される場合に、利水ダムを有効活用する対策を検討しているということを私たちも国交省に確認しました。利水ダムであっても大規模水害などが想定されるときには、多摩川の水位の上昇を低減するために、検証を重ねて柔軟な対応をすることが可能になってくるのではないでしょうか。

今回の台風十九号では、水道局は、台風が直撃する前日の十月十一日の十四時から雨のピークの時間帯も含む十三日の午前九時まで、小河内ダムからの放流を行っています。ダムの放流は決壊を防ぐためにも必要なことと認識していますが、多摩川の水位の上昇を少しでも低減するために、例えば、もう少し早く放流を始めて、雨のピークの時間から放流時間をずらすなど検討することができるのではないかと考えますが、見解を伺います。

中嶋水道局長 今回の台風十九号では、台風が接近する前日の十月十一日の朝に発表されましたダム上流域の予測降雨量のデータをもとに、ダムへの総流入量を予測できましたことから、十一日の午後、速やかに放流を開始したものでございます。

豪雨が予想される場合におけるダムの運用につきましては、知事からもご答弁申し上げましたとおり、国の検討の動向を注視してまいります。

斉藤委員 想定を超える大雨や台風が今後も頻繁に起こり得るからこそ、国も、利水ダムについて治水への活用の検討に踏み出しているのだと思います。

多摩川の下流域では、今回、川の水位が上がったことで支流で逆流や内水氾濫が起き、今でも被災した方々はご苦労をされています。

多摩川の増水の要因はさまざまですけれども、小河内ダムの放流だけが要因になるということではありませんが、少なくとも、水位の上昇をなるべく低減するために、できることを検証していくことが必要だと思います。これまでの対応にとどまらず、大雨などの災害時には、治水の効果も重視して、放流のタイミングについてもより柔軟に検討していくことを求めます。

次に、浸水対策について伺います。

今回のような大雨の際に、内水氾濫を防ぐための浸水対策は重要な課題です。

過去最大級といわれる豪雨や台風による災害が相次ぐ中で、東部低地帯やゲリラ豪雨が多い区部など、七十五ミリ対応の対策の拡充が必要だと思いますが、いかがでしょうか。

和賀井下水道局長 下水道局では、浸水被害の影響が大きい大規模地下街や甚大な浸水被害が発生しております市街地を十三地区選定し、整備水準を時間七十五ミリ降雨にレベルアップし、大規模な幹線や貯留施設等を整備しているところでございます。

平成三十年度におきましては、最新の流出解析シミュレーション技術を活用して、区部全域で時間七十五ミリ降雨があった場合の下水道施設の能力検証などを進め、引き続き、対策地区の追加を検討してまいります。

斉藤委員 特に私の地元の足立区を初めとする江東五区などの東部低地帯では、浸水対策の拡充は喫緊の課題です。対策地区の追加を検討していくというご答弁でしたので、着実に進めていただきたいと思います。

下水道局では、暗渠となった河川など八つの幹線で水位計を設置し、関係六区に情報提供を行っています。中野区では、提供された水位情報を電光掲示板でお知らせしています。しかし、ほかの暗渠河川や多くの下水管は水位計がついておらず、住民は、豪雨時などに実際に道路が冠水し始めるまで、その状況をつかむことができません。

二〇一八年度の取り組み状況はどうだったのか、また、水位情報の提供を拡大すべきと考えますが、見解を伺います。

和賀井下水道局長 下水道局では、地元区からの要望等に基づきまして、浅く埋設され地表に近い下水道幹線のうち八つの幹線において、幹線内の水位情報をリアルタイムで地元区に提供し、区は、地域の水防活動に活用しております。

平成三十年度には、呑川幹線などで地元区と協議等を進めております。

引き続き、経営計画に基づき水位情報の提供拡大を検討してまいります。

斉藤委員 暗渠河川、下水管や貯留施設に取りつけた水位計の情報を近隣の住民に提供することは、避難や家財などの移動等の判断に資するものだと考えます。ご答弁のとおり、水位情報の提供拡大の検討をぜひ進めていただきたいと思います。

次に、給水車について伺います。

台風十九号の影響で、都道の崩落とともに水道管が流された奥多摩町では、断水状態が続きました。水道局では、給水車の配車をふやしながら対応しましたが、最終的には千葉県や埼玉県から給水車の応援をいただいています。

今後も台数をふやして、災害時における給水の確保を充実させていく必要があると考えますが、いかがですか。

中嶋水道局長 災害により断水が発生した際には、人命にかかわる施設等に対しまして、給水車を活用して機動的に水を提供することが必要であり、今回の奥多摩町の対応におきましても、社会福祉施設等への給水車によるきめ細かな応急給水を実施いたしました。

当局が保有いたします給水車は現在十四台でございますが、現場への移動距離の短縮化を図り、より迅速に応急給水を行う観点から、計画的に台数をふやすこととしておりまして、今年度中に九台、来年度に七台を新たに購入し、合計三十台に拡充することで応急給水体制の強化を図ってまいります。

斉藤委員 今回の奥多摩町でも、被災された方々からは、何よりもまず水の供給が一番に求められているという声が寄せられていました。給水車をふやしていくということで、都民の命と生活に直結する水の確保が充実されるものと思います。着実に進めていただきたいと思います。

水道局では、現在、半径二キロメートル以内に一カ所の応急給水所を設置して、災害時の給水拠点の確保を進めています。しかし、広範の災害が起こって車も使えないような中では、水を運んで二キロメートルの距離を歩くのはとても厳しいものです。

今後は、断水の危険が高い地域などの重点化も検討しながら、総務局と連携して、応急給水所などを初め、災害時に給水が確保できる場所をふやしていくことも検討するべきではないかと思いますが、見解を伺います。

中嶋水道局長 水道局ではこれまで、災害時の給水確保に向け、総務局と連携を図り、公園等に設置しました応急給水槽や当局の給水所等を給水拠点として整備しております。

また、被災しました住民の方々の当面の生活の場となる避難所におきまして、災害時にも給水が確保されるよう、避難所給水管の耐震化や応急給水栓の設置を推進しております。

さらに、今回の奥多摩町での災害対応におきましては、給水車で運んだ水を給水袋に入れ、駅前で配布したほか、全世帯にポリタンクを提供するとともに、高齢者宅には水を入れてお届けするなど、きめ細かく応急給水を行いました。

今後とも、多様な手段を活用し、発災時に住民に必要な水が確保されるよう取り組んでまいります。

斉藤委員 大人の健常者でも、水を持って歩くと体が揺さぶられて非常に重労働となります。今回の奥多摩町では、高齢者の方々には水道局から水を配って回ったということですが、被災地からは、水道局の職員の皆さんがとてもよく対応をしてくれて助かったという声が届いていました。災害時に水のアクセスに困難を伴う方々への対応の視点は大事にしていただきたいと思います。

同時に、今回の断水への対応は、地域が限られていましたが、台風だけでなく首都直下型地震など広範にわたって断水の被害が起こるときに職員で配って回るということには限界があります。私は、おととしの委員会でも、実際に水を背負って歩いてみたという方々からのお話から、二キロメートルを歩くのは困難だという声を紹介しました。応急給水所などを初め、災害時に給水の確保ができる場所をふやしていただくことを重ねて求めておきます。

次に、都営地下鉄の浸水対策について伺います。

水害時に都民の命を守り、都市活動を支えるためにも、都営地下鉄の浸水対策は重要なものですが、まず、知事の基本的な認識を伺います。

小池知事 これまでも都営地下鉄では、止水板や防水扉を設置するとともに、避難誘導訓練を行うなど、ハード、そしてソフトの両面から、地下鉄の浸水対策に取り組んでまいりました。こうした取り組みによって、今回の台風では、都営地下鉄におきましては大きな被害は発生しなかったものと存じます。

今後、豪雨災害がより激甚化し、また頻発化する可能性が高まっている中におきましては、都では、今般の台風対応などで明らかになりました課題につきまして、大規模風水害検証会議を設置して、今月末までを目途に検証を行うことといたしております。

こうした検証も踏まえまして、都営交通におきましても、引き続き浸水対策を着実に推進いたしまして、安全・安心の確保に万全を期してまいります。
斉藤委員 これまでの検証も踏まえて、都営交通においても、引き続き浸水対策を着実に推進するということです。

交通局が管理する都営地下鉄の全百一駅のうち、浸水想定区域になっている駅は何駅あるのか、また、この中で、他事業者や接続ビルの出入り口で、止水板や防水扉の対策がされていない出入り口がある駅はどれくらいあるのか、教えてください。

土渕交通局長 現在、公表されている浸水想定区域内に出入り口がある駅は、都営地下鉄が管理いたします全百一駅のうち九十三駅でございます。
なお、この中には、想定される浸水の深さが数ミリ程度の駅も含まれてございます。

また、九十三駅のうち、他の鉄道事業者や隣接するビルと地下道等で接続しており、ビルの管理者等による出入り口の止水対策が完了していない駅は十一駅でございます。

斉藤委員 交通局が管理する全百一駅のうち、九十三駅が浸水想定区域に出入り口があるということ、そこには対策がもう済んでいるということも伺っていますが、その中で、地下で接続しているビルの管理者等による出入り口の止水対策が完了していない駅は十一駅あるということがわかりました。

今、都内では、地下鉄事業者や商業施設、駅ビルなどの多数の建物がつながって大きな地下空間を形成しています。地下への浸水を防ぎ、利用客を安全に的確に避難させるためにも、こうした接続ビルとの連携が重要です。止水対策が完了していない出入り口がある駅は十一駅残っているということなので、連携を強化して対策がとられるように取り組みを進めることを求めます。

水防法では、駅ごとに避難確保、浸水防止計画を策定することを義務化しており、都営地下鉄の各駅でも策定していると伺っています。同法では、この計画を策定したときは、遅滞なくこれを自治体の長に報告するとともに公表しなければならないとされていますが、交通局では、なぜこの計画を公表していないのか。ホームページなどで公表するべきだと思いますが、いかがでしょうか。

土渕交通局長 都営地下鉄では、水防法の規定に基づく避難確保、浸水防止計画を全ての駅で作成し、関係する自治体の長に報告いたしますとともに、各駅での閲覧の形で公表をしております。

ホームページにつきましても、現在準備を進めておりまして、今後対応してまいります。

斉藤委員 ホームページでの公表も対応していくという前向きのご答弁でした。

例えば、東京メトロや地下街を管理している民間事業者などでは、インターネット上で、止水板などの対策の内容とともに、駅構内の地図に出入り口をわかりやすく公表しています。

大阪の梅田駅の地下街を管理している民間事業者では、それぞれの出入り口に浸水の深さの想定を示したピクトグラムをつけて公表しています。こうした具体的な浸水想定や避難経路、対策の内容についての公表は、利用者の意識も高め、安全の確保につなげていくことに資するものだと考えます。駅ごとに公開ができるように、しっかりと対応をしていただきたいと思います。

都営浅草線の本所吾妻橋駅のトンネル内の防水扉についてですが、都営地下鉄の中でも、ここのトンネルの防水扉だけ、電動ではなく手動で行われているということで、我が党はこれまでも、電動にすることを求めてきました。まだ電動にはなっていないと伺っていますが、荒川の氾濫など大規模な水害が想定される中で、電動への改善は待ったなしの課題です。電動化への検討を進めるよう重ねて要望をいたします。

 

築地から豊洲へ移転した中央卸売市場について

 

次に、中央卸売市場について伺います。

昨年度末の三月、第一回定例都議会で、築地市場跡地の所管がえ、これを五千六百億円で補正予算で行いました。土地の引き継ぎは、決算の分科会で、東京二〇二〇大会終了後に建物の解体など行った後だということでした。しかも、土壌汚染調査と埋蔵文化財調査は、いつになるのか、どのくらいの期間の調査になるのかもわからない状況です。

急いで、二〇一八年度の最終補正予算で所管がえを行う必要はなかったのではないでしょうか。お金だけ先にもらって土地は後でというのはおかしいのではないですか。知事に伺います。

小池知事 築地市場跡地のご質問でございます。

築地市場跡地は、東京全体の価値の最大化を目指すまちづくりを見据えまして、一般会計のもとで再開発を進めることといたしました。そのため、いち早く有償所管がえを行って都の意思を明らかにし、民間事業者の参画意欲を引き出して、まちづくりの具体案を円滑に検討することが可能となったものでございます。

なお、土地につきましては、建物の解体撤去などを行った後に引き継ぐこととなっております。

斉藤委員 今のご答弁で、民間事業者の参画意欲を引き出し、まちづくりの具体化案を円滑に検討することが可能になったとのことですが、二〇一九年度に入り、具体化は進んでいないのではありませんか。土地の引き継ぎ時期がいつになるか明確にならないのであれば、やはり急ぐ必要はなかったと厳しく指摘しておきます。

知事は、築地は守る、築地に市場機能を残すと約束しながら、二〇一八年十月十一日に豊洲市場への移転を強行しました。

日本共産党都議団は、豊洲市場の土壌汚染対策である建物下の盛り土がなかったことを発見し、幾ら追加対策を行っても、汚染物質を完全に封じ込めることはできず、地下水位を目標まで下げることはできないなどの問題点を厳しく指摘し、移転に反対をしてきました。

盛り土のかわりに、三十八億円をかけて、建物の下の床面にコンクリート打設工事と換気設備工事、地下水管理システムの機能強化の追加対策を行いました。

二〇一九年三月末時点の地下水位と現在の地下水位について伺います。

黒沼中央卸売市場長 地下水位につきましては、本年三月末時点では、最も高い地点でAPプラス二・三三メートル、最も低い地点では〇・〇三メートル、十一月十三日時点では、最も高い地点でAPプラス三・五六メートル、最も低い地点で〇・六六メートルとなってございます。

地下水位につきましては、降雨の状況等により変動するものであり、大型台風の通過等に伴いまして、先月、平年の倍以上となる降水量を記録した影響により、現在の地下水位は一時的に高くなってございます。

地下水管理システムにつきましては、揚水機能が強化されたことが、専門家会議においても客観的に確認されてございます。

これまで、大量降雨後も、着実にこの機能強化によりまして水位は低下してございます。

今後も揚水を継続することで、同様に、徐々に水位は低下していくものと認識してございます。

斉藤委員 全ての調査箇所で地下水位は目標水位に達成できていないわけです。台風や大雨があれば水位は上がり、十一月十三日時点の地下水位で、APプラス一・八メートルを超えているのは、三十二カ所のうち二十四カ所、七五%にも相当します。しかも、APプラス二メートルを超えているのが二十カ所、驚くことにAPプラス三メートルを超えているのが三カ所もあります。この状況を見ると、揚水機能が強化されたといわれても、追加対策工事で目標の地下水位に達していないということをどう説明できるのか、私は、追加対策工事が成功しているとは到底いえないと思います。

豊洲市場が開場後、市場関係者から、ほこりっぽくて仕事が終わるころには喉が痛くなるという相談があり、日本共産党都議団は黒い粉じんの独自調査を行いました。重金属の専門家に分析してもらったところ、毒性の高いアンチモンやカドミウム、亜鉛などが検出されました。仲卸業者の方から、豊洲市場が開場して一カ月で喉が痛くなった、年明けからせきが出てきた、最初は風邪かと思ったが、一週間たってもおさまらないので病院に行くと、お医者さんからは、ぜんそくの疑いがあると説明を受け、レントゲンやCTなどの検査も行った、吸入と薬をもらったという声や、働いている人を物扱いにしていることが許せない、東京都は、働く人の健康を守る立場で継続した健康診断をやってほしいと切実に話されました。

市場の開設者として、働く人の環境改善は優先すべき課題ですが、いかがですか、
黒沼中央卸売市場長 豊洲市場では、清掃範囲の拡大や頻度の向上、高圧洗浄機の活用など清掃作業を充実するとともに、散水栓の改良工事など清掃に必要な施設整備を行っており、現在、場内では粉じんが飛散する状況にはございません。

また、本年八月までに九回実施した空気環境測定の結果では、浮遊粉じんの測定値は、開場以来一貫して法令の基準を大幅に下回っており、市場内の衛生環境が良好に保たれていることが確認されております。

なお、大気汚染物質の健康影響に関する専門家からは、都の取り組み内容と測定結果を踏まえて、都の対策は妥当であり、人体に関する健康影響はないと考えてよいとの見解もいただいております。

今後も、市場関係者が安心して働ける良好な環境を都と業界が連携して確保してまいります。

斉藤委員 空気環境測定を行っているということですが、市場で働く人たちからは、自分たちが働いている時間に測定をしなければ適切な数値とはならない、掃き掃除をすると、ほこりが舞うので心配だという声が上がっています。我が党が行った粉じんに含まれているこの重金属調査では、毒性の高いアンチモンやカドミウム、亜鉛などが検出されているわけですから、東京都として粉じんの重金属調査を行うよう強く要望するものです。

都は、ターレのタイヤの改善に取り組むことを約束しましたが、この間の取り組みと今後の取り組みについて伺います。

黒沼中央卸売市場長 ターレのタイヤについてでございますが、ターレの所有者であります業界団体や修理点検等を行う関連会社と連携いたしまして、メーカーの協力を得て、摩耗しづらい品質のタイヤの導入について研究をしてございます。

これまで、数種の試作タイヤを用いまして、場内で走行テストを行うことで、タイヤの摩耗度、積み荷やターレの操作性への影響などの調査研究を行ってきており、引き続き、市場業務の実態に即して取り組んでまいります。

斉藤委員 タイヤの改善は、そう簡単なことではないと思います。時間も当然かかるものだと認識していますが、粉じんは、市場で働く人たちの健康にかかわる重大な問題です。市場の開設者として最善を尽くしていただくことを強く要望するものです。

豊洲市場では、開場前に地盤沈下が起こり、開場した後は、あってはならないターレやエレベーターによる死亡事故が起こってしまいました。その上、駐車場の不足。地下水の調査では、引き続きベンゼンや猛毒のシアンが検出され、地下水位は目標水位に至っていない箇所が多くあります。

また、日本共産党都議団独自の調査で、豊洲市場のこの粉じん、毒性の高い重金属のアンチモンやカドミウムが検出されています。市場で働いている方からは、自分たちを物扱いしないでほしい、安心して働ける環境をつくってほしいという強い要望が寄せられています。

豊洲市場は、次から次へと新たな問題が起こり、何一つ問題は解決していません。知事に、開設者として、働く人たちが安心して働ける、安全が保障される環境をつくることを強く要望して、質問を終わります。